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盗賊稼業も楽じゃない!  作者: 北極えび
第三章 -イケメン探索指令ー
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真夜中の散歩

登場人物


リシュ・レーン 駆け出し盗賊

リティア・ウィンフィールド 先輩

シンシア・ルフィン プリ盾姐さん

アリッサ・ハーメイ 放し飼いサモナー

ララ・ヘルミナ アデルちゃん

ジーン・トアロ 輩ウォリアー

マリア・ヴェルナーデ 螺旋階段

ジェフリー モヒカンロード

ルーファス 大剣メイジ

ティアナ 盛り髪修道士

リリィ  ツン系魔法少女

ガルシア ヒゲ面

ウォーレン・ジーク シーフのマスター

パム・レーン 刀マニアの妹君

ーラングフォード家 別邸3階 深夜24時頃ー


船の一等洋室でもそうだったが、アデルはシンシアが読んでいる本に

興味津々で、自分が知り得なかった数百年の歳月の間に起きた出来事を

知りたい様で歴史モノやお菓子の作り方などシンシアが持ってきた本を

読んでは質問したり、かつて暴君と呼ばれた悪魔とは思えないほど

2人っきりの時も本とお菓子さえあれば大人しくしていた。


「ふあぁー、アデルちゃん、私先に眠るね」


「おう、どうやらこの町の名物はエクレアというモノらしい

 町へ行くなら彼奴が昼寝しておる時に頼むぞ」


目が疲れてきたのもあって、窓を閉めた後に読書用の眼鏡を外して、

ベッドの掛け布団を胸元まで上げるとシンシアは眠りについた・・・のだが、

その様子をチラ見していたアデルちゃんは、シンシアが閉めた窓を開けようと

理力を使って少しづつ音を出さない様に窓を開けていく。

およそ悪魔とは思えない、寝ている相手を気遣えるアデルちゃんである。


”せっかく理力が宿っておるのだ、散歩でも楽しむとするか”


古代の暴君と呼ばれた悪魔・デーモンアデル

数百年前、まだエストリアと名が付く前のバークレイル辺りでは知らぬ者が

おらぬ程の暴れ者で大悪魔であるが階級に属さず、邪魔なら魔王であれ倒すと

考えていた悪魔界の傾奇者であった。砂丘で憑依したのが退行後のララで

なければ今の状態にはならなかったワケでおそらくあの大男「ウォーレン」に

”その程度の力”と言われたのもあながち嘘ではない事も分かっていた。

・・・あのまま挑んでも、あの男には適わなかっただろう。


”数百年前には存在しなかったスキルとはな、そう考えると長い年月だ”


小僧と大男「リシュとウォーレン」がスキルについて話していたが

その内容が小難しくて何の事なのか聞いた時のウォーレンの答えだ。

数百年も経てば、世の中も色々変わっていて当然。

アデルは現状のララとの共存に満足していた、手伝うとは言ったが

ララにハイエンシェント習得の事を聞いても教えてくれないので

正直、困ってはいたが属性系ではない気がする、となると封印なのでは


”まあ、勘繰ってもしょうがない事だな、どれ行くとするぅぅぅぅ”


ベッドから動こうとしたら左足首に長紐があったので、ジト目で

寝ているシンシアを見るアデルちゃん。ララが行ったに違いなかった。


”あの小娘、小癪な真似をっ、相当根に持っておるのか”


動き過ぎるとシンシアに気付かれる様に足首に巻かれている

新体操用リボンの様なモノをゆっくりと外すと、宙に浮いて窓の方へ向かい、

そのまま屋敷の外へと移動して、更に上昇し屋敷の屋上より高い位置から

辺りを眺め始めると、町の灯りが見える方へ向かって飛んでゆく。



山の中腹にあったラングフォード家の別邸から森林地帯を抜けて

馬車が通った跡のある道とは違った場所を適当に飛んでいると

高原に出たので、飛行スピードを落として地上近くに来ると、遥か先に

鬼火の様なランタンの灯りとも言えるモノが揺らいでいるが見えた。


「何だあれは、追われて走っておるのか、おっ、隠れおった」


ララは視力が悪いがアデルちゃんになると夜目が利く様になり

視力はほぼ数キロ先まで見える極悪魔仕様となる為、

高原の草むらに隠れる様にしている人物に興味が湧いたアデルちゃんは

宙に浮いたまま、その人物の後方へ向かっていく。



草原の草影に隠れながら身を潜めていた少年は追ってくる者達の

足音や話し声が聞こえてくるのに耳を立てていたが、

突然、宙の上から見た事もない少女が顔を出して来たので驚いて

悲鳴を上げて後方へと後ずさった。


「な、な、何だお前っ、いつからそこに居たっっ」


「何だと言われても、お前こそココで何をしておるのだ?」


人間の言葉が話せる事に少年は安心したが、少女の目の色を見た少年は

この辺りに伝わる伝承の事を思い出して、掛けていたネックレスから

ロザリオを取り出してアデルちゃんに見せつける様に突き出す。


「さ、さては吸血鬼だな、お前のその瞳の色はその証だろっ」


”何を言っとるのだ、この小僧っ子は・・・”


ロザリオを前にしても微動だにしないというより呆れた表情の

アデルちゃんは地に降り立ってロザリオを手に取ると、何製なのか調べ始め


「お前・・・十字架は銀でないと意味がないのだぞ

 それにワシは血を吸う者ではない、あんなのと一緒にするな」


「ワ、ワシ?何かジジくさい言葉を使うヤツだなー

 って、これ銀じゃなくて鉄だったのかっ」


「いや、それ以下の銅製だぞ、まがいモノを掴まされたって事だな」


ロザリオを手掴みにして色々な角度から調べている少女は

どうやら吸血鬼ではない様だけど、少年は効果があると思っていただけに

銅製と聞いてまがいモノを買わされた事に呆れた表情になった。


「おいっ、こっちにいたぞ!さっさと捕まえろっ」


怒声の様な声がして中年男性が2人の方へ近づいて来るのが分かったが、

ヤバいっと身を屈めようとしたら後ろから透明な何かに掴まれて2人は

持ち上げられ、まるで小脇に抱えられている感じになった。


「捕まえましたぜ、アニキ。っていうか1人増えてるんですが」


ステルスの効果時間が解け始め、姿を現した無法者の青年は

2人を片方づつ小脇に担いで先ほどの中年アニキの方へ向かって言ったが

アデルちゃんはアニキに手を振って、まるで遊んでいるかの様に笑顔だ。


「お前、よくこんな状態なのに笑ってられるな、お気楽なヤツ」


「馬鹿野郎、こういうのを”一石二鳥”って言うんだよ

 こいつらまとめて例の場所へ連れて行くぞ」


「そ、そーなんですか、さすがアニキっ、物知りっすなあー」


観念したかの少年は隣で抱えれている少女の気楽さに呆然としたまま、

無法者の2人組みに”例の場所”と呼ばれる隠れ家へと連れて行かれた。



別邸での屋敷とは違い、洋館の様な雰囲気の場所で2人は降ろされて

館の中にある座敷牢に案内され、中に入って大人しくしていろと

言われたが、その座敷牢の中には多数の少年少女が蹲っていて、

年齢はバラバラだが一番最年長はどうやらアデルと出会った少年の様だ。


「何だ、ここは?どうして子供ばっかりおるのだ?」


「はぁー、お前とさえ会わなければ逃げれていたのに」


「逃げる?さっきの者たちからか、あやつら何者なのだ?」


歳はアデルより少し上っぽいがやんちゃな感じのある男の子は

そんな事を聞いてもどうしようもない、といった感じで壁に寄りかかって

ため息をついて、無法者達から逃げれなかった事を悔やんでいる。


「ワカラン事ばかりだな。そういえばお前、名は何と言う?」

「レニーだよ、そういうお前は?吸血鬼ではない様だけど」

「ワシか、ワシの名は・・・アデルだ」

「アデル???男みてーな名前だけど、女だろ?」


名前を名乗る時にアデルの中でララと言おうとして一瞬戸惑った。

何かあってもララのせいに出来るのだが、昨日も迷惑をかけているし

ここは自分の名前でいいだろうと、思わずアデルと口走ってしまった。


「まあ、性別で言えばいまの所は女だな」


「いまのところ・・・?」


「それより何故、ここにこんなに子供がおる?

 レニーも捕まっておったであろう?逃げた理由は何なのだ?」


あまり話したくない事なのかレニーは躊躇っていたが、

蹲っている子供たちを見ながらアデルに事のなり行きを語り始める。

どうやらこの場所は人身売買の拠点で、目の前にいる子供たちは

孤児院の子供や借金のカタに売られたりしてきたのだと言う。

特に孤児院は無法者と組んで子供を流しているとレニーは言っていた。


「なるほど、だから逃げておったのか

 孤児院におったからそういう事を知っておるのか?」


「まあな、うちは早くに両親が蒸発しちまったから・・・」


「ふんっ、ツマランな、そんな理由だったとは

 何をしておるのか興味本位で近づいたが面白くもない。もう帰るぞ」


感傷的になっているレニーとは対照的にくだらん事だなといった感じの

アデルちゃんはレニーが隠れていた理由を知って、もう帰ると宙に浮いた。


「おいっ、ちょっと待てっ!話しを聞いたんだ、逃がさないぞっ」


「ばっ馬鹿っ、離すのだ、おわわぁっ”ゴンッッッ”」


初めて会った時に宙に浮いていた事を思い出したレニーはアデルとなら

ここから逃げれると思い、浮いているアデルを掴んでいたが勢いあまって

壁に激突させてしまったらしく、アデルちゃんは気絶してしまったのだった。


お読み頂き有難うございます。

拙い文章ですがマイペースに更新しているので宜しくです。

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