休息
登場人物
リシュ・レミルトン 駆け出し盗賊
リティア・ウィンフィールド 先輩
シンシア・ルフィン パワー系プリースト
アリッサ・ハーメイ 放し飼いサモナー かぴばら
ララ・ヘルミナ お子様メイジ 雨がっぱ ヒヨコ
ジーン・トアロ 盾なしウォリアー
就寝前なのもあって軽い夕食を皆で摂り、アリッサが玄関前に召喚獣の
ご飯を置くと中層に続く道の方から管楽器の様な音が響き渡ってきた。
何事かと?俺たちがログハウスの外へ出てみたら風に乗って聞こえてくる。
「兵士さん達、中層にいるのかなー?」
「パグパイプの音ね。進行の合図みたい、奥に行くのかしら」
アリッサが近衛兵達が中層にいるんじゃないかと話し出すが、音を聞いた
ララはこれから奥へ進行するみたいな事を言っていた。初めて耳にする音に
その意味する所を知って、相当数の兵士が中層にいるのかと考えていると
「なんやろなー。上層に1人も残さんで皆で出とるし、無用心やで」
「それなりの理由があるのですかね。おそらく此処へ手配されている者が
向かっているのかも知れないですし」
「何か奇妙な感覚だな。何事もなければいいのだが」
外は夜になっているのに進行する事に一抹の不安を感じながらも、
俺たちはログハウスの中に戻り、奥にある3つのベッドで明日の準備を
しているララと先輩に、夕飯の時、ベッドを使ってくれと申し出たので
俺とジーンは暖炉の傍で過ごす事に。炎に当たって暖を取っていると
隣にいたジーンが神妙な面持ちになり、果物を齧りながら話し始める。
「そういえば聞いたことあるか、下層へ降りる場所には守る者がいるって事」
「え、いや。全く知らないよ。炭鉱だったってばあちゃんから
聞いた事があるけど、下層に行くにはそいつの許可がいるって事?」
燃料となる燃炭石を継ぎ足しながら、まるで夏に怪談話しをするかの
様に呟くけど、そんな話し全く聞いた事がない。頷きながら聞いていると
「知ってるわよ。確か氷の魔獣だったような」
「あー、おったなー。うちが行った時はPTのレベルが高かったのも
あって、瞬殺でモゴモゴ言ってた記憶しかないのー」
聞こえていたのか。ベッドの上で難読な呪文書を読んでるヒヨコメイジが
話しに加わって来ると、魔獣に反応した先輩もストレッチをしながら瞬殺
したと言っている。もしかして一定のレベル以下だと脅威になるヤツなのか
”可哀想な番人さん。先輩の記憶にほぼないなんてっ”
「氷影の魔獣フェンリルでしょう。たしか人間並みの知能があって
下層へ行く者の力を試してるとか」
さすがシンシア姉さん博識だ。ベッドの上でしてる事は爪研ぎだけど、
名前を聞いて思い出したララと先輩もそんな名前だったわーという表情。
人間並みの知能あるのに影が薄いのは体力がないとかだったりして
「経験者が3人もいるし。ここは胸を借りるつもりで頑張ろうな、リシュ」
いきなりキラーパスをする、盾なしウォリアー。というか名前を知らない
という事は下層に行くのが初めてなんだな。こやつ!俺たちよりレベルが
高いのは先輩とシンシアは確実だけど、ララはどうなんだろう。
「ああ、知能があるっていうのが気になるけど、たぶんいけるさ」
ベッドの上で寛いでいる3人を見てると余裕なのかなと思いつつ、
片腕を腕枕にして眠りについた。それから5時間くらい経ったのだろうか
目を覚ますとシンシアが皆の朝食を準備していて、先輩やララ、ジーンも
起床している。部屋に差込む光が気持ちよく、伸びをして皆に挨拶をして
掛けていた毛布を畳みながら、このPTに参加した俺は盗賊としての経験を
積むべく、より一層気を引き締めて中層を目指そうと決めたのだった。