イケメン探して来い
登場人物
リシュ・レーン 駆け出し盗賊
リティア・ウィンフィールド 先輩 姉御
シンシア・ルフィン プリ盾姐さん
アリッサ・ハーメイ 放し飼いサモナー
ララ・ヘルミナ お子様メイジ
ジーン・トアロ 盾ありウォリアー
マリア・ヴェルナーデ ドリル
ジェフリー マシュマロボディ
ルーファス 大剣メイジ
ティアナ 盛り髪修道士
リリィ ツン系魔法少女
ガルシア ヒゲ面
ウォーレン・ジーク シーフのマスター
パム・レーン 刀マニアの妹君
ー翌日ー
オヤジには今日、ギルドのマスターに呼ばれているからと
休みをもらったのもあって、目を覚ましたのは10時くらいだった。
”部屋にある仕掛け時計がぶっ壊れてなければ”
時計は鍛冶職の経験者が時計職人となって生計を立てていて、
近年は錬金術や魔法職の研究者もデザインや造りこみに関わっている。
街の人通りが多い公園や噴水、教会、礼拝堂などにもあるし個人でも
小型化されたロケットペンダント状のモノを所持してる者が多い。
待ち合わせ時間までまだ余裕があるので軽く身体を動かしていると、
昨日ジェフリー達と話していた事やクマとの戦いが頭を過ぎってきた。
ティアナが常連というレストランで会食をしていたのだけど、
”ジェフリーの前職がプリーストだった”事が一番の驚きで、街中で
キャッチセールス並みにPTにならないか声をかけていたらティアナ達と
知り合ったという。プリ時代にPT募集の仕方が分らなかった様だ。
◇
ティアナが使用した”アタックオーラ”というスキルは物理攻撃力を上げる
スキルだが、武器依存の割合上昇でありスキルレベル10を習得するのには
Lv40までかかり、攻撃力は約20%の上昇、効果時間は3分。
CTは長いが使い勝手は良さげだ。そんなスキルを先輩が習得していないっぽい
のが妙に気にかかるけどソロで活動するなら便利そうなスキルを継承してゆけば
有利になるのに、なぜプリからのスキルがないのだろう。転職して得ていても
いいはず、もしかして転職しまくる事に何か”重大な欠点”があったり・・・。
丁度良い機会だったので魔法職についてリリィに疑問だった事を聞いてみたが、
魔法職の詠唱というのもは呪文という言葉ではなくキャストタイムという
行使するまで魔力を高めた後に発動するまでの時間を指すと云い。瞬間的に
魔法スキルを連続発動させる超ハイレベル魔法職の者達はキャストタイムがなく
”高速詠唱”と呼ばれるスキルを習得しているのが常識という事だ。
”しまったっ、何故シンシアが恐怖状態でも動けたのか聞くの忘れた”
クマさんとの戦闘の直前にアクセサリーを変えていたのが
それっぽいんだよなー、だとしたら耐性ごとに装備品を変える事になるのか
”うわぁー、それだと装備代だけでも凄い事になりそう”
とりあえず・・・最初に転職するならプリーストかなぁ。
自己回復と物理攻撃力上昇やバフを持っておけば、かなり便利なんだが
固有スキルと呼ばれる、そのジョブでしか使えないスキルもあるという。
シーフならステルスが代表格か、使用者次第で犯罪の温床になり得るし
◇
午前中をまったりと過ごしながら、そういえば服をどうしようかと
ギルドへ行くのなら戦闘系の装備だけど、話し合いっぽいのだけど
”あのマスターが何の事で呼んでるのか分らない以上、備えあれば憂いなし”
砂丘での事が関係ありそうと思った俺は、あの時の装備品と
シールドリングを付けて待ち合わせ場所へと向かって家を後にした。
やがてマッチングサービスが見えてくるとジーンやシンシアの姿が見え、
落ち合って立ち話をしていると、少し遅れて先輩達とも合流し、
「たぶん今日はおるって聞いとるから、はよ行こか」
そういえばマスターって金庫番の人たちに何も言わずにトレハンに
向かうらしく、ギルドにいないと何をしてるのか分らないって聞いた。
なので言霊使いさんが唯一の連絡手段でキレ気味の時はそれさえ無視する
ので、場所が分ったらアルテミシアさんが飛んで捕まえるのが常らしい。
”便利だよなー、あの転移魔法。エンシェントって言ってたっけ”
ギルドの中に入ったら、チラっとしか見てないけど調整役の小柄な人は
留守の様で金庫番のひとが居て俺達を応接室へと通してくれた。
「よお、来たか、まー、適当に座ってくれ」
どうやら機嫌は良さそうだ。相変わらず紫オーラが漂っていてもおかしくない
風貌だな、この人は。リリィはやっぱり苦手なのかアリッサの隣にピッタリと
寄り添って座っているが、何故かマスターの足元辺りに魔獣へるぴがっ
位置的に死角なのでアリッサからは見えない様だが、召喚主が来たのに反応なし
”主人に似て自由気ままな性格なのか、もうサッパリっすわ”
「マスター、なんですのん、砂丘に行った人らと・・・もう1人」
先輩が切り出してくれたけど、もう1人は”ジェフリーだ”
あの山羊頭の時に行ってないメンバーだけど、最初に行った時に砂丘に居た。
しかもアレニェを討伐する様に依頼した張本人。何でこの場にいるのだろう
「そいつは別件だが今回は人手が多い方がいいんでな
それよりおまえら、街中で噂になってるラーメン屋のヤツ見たか?」
”あーーーっ、忘れてたけど、あのマリアそっくりの人?か”
「見たかいうたら、見ましたけど、あれマリアさん本人ですのん?」
「俺も先輩と見ましたけど、本人というのとはちょっと違う様な」
凄い行列が出来てて格好が”えちえち”だったのは覚えてる。
あれがマリアさんか、というとあんな人だっけ?と思ってしまうが
「あれなー、アリッサのオヤジさんに作らせた、何だっけか
シンセティック?とかいう合成人間なんだよ」
「合成人間っ?あれが?造られた人間って事ですかっ」
「まー、年齢は多少若くしてやったがな
マリアの歳のままだと店で働かすのには肌の張りが足りないねーし」
”また本人が聞いたらブチキレそうなことをっ、あの格好ですら怒るはず”
しかしあれが造られた人間って、ゴーレムや達人とは比べ物にならないほど
見た目も仕草も人間と変わらなく思えたけど、知能も本人と変わらないのか
「で、でもマスター、あれが造られたモノだとして
ちゃんと制御出来てるんですか?」
「その辺は問題ない。ほぼ人間と同等だ
まったく、凄いオヤジさんだよ。造るのを楽しんでいたしな」
”それは外見のモデルがマリアだからじゃ”とはツッコめなかった。
「へー、えらいモン造ったんやなー
あれ?でも最初のはウェンディーの店に置く言うてませんでしたっけ」
「そう・・・それが問題なんだよ」
「へ?も、問題って一体何が?
あれだけのモノなら余裕で働けると思いますが」
何だか一転して不穏な空気を醸し出すマスターに、
あれだけ人間的に動けそうなシンセティックに駄目な部分が
ある様には思えず、問題というのが何なのか全く理解できなかった。
「いやよ、出来てすぐウェンディーの所へ持っていったんだよ
そしたらアイツ、すげー形相で拒否しやがって」
「え?そ、そうなんですか、でもまた何で?」
「女性客の多い所にそんな格好のウェイトレスを雇ったら
客足が減って、売り上げ落ちるから止めてくれ。だってよ」
”いや、それはウェンディーさんの言う通りだ
でも何でラーメン屋に居たんだ、マリアもどきのひと”
「しょうがないからツテのあるラーメン屋に派遣したんだが
俺はどうしてもウェンディーのヤツをギャフンと言わしたいワケだ」
うーん、何となく言わんとしてる事は分る様な・・・。
せっかく造ったシンセティックを店側の理由で拒否されたのだから
プライド的にマスターはそれが許せない事なのだろう。
相手が納得する様なシンセティックを造る事に意地になってるのかも。
「それで、あのー、うちらを集めて何をしろと?」
「とりあえず、あの店に来るのは女が多いのは分ってる
だからツラの良い男を探してシンセティックを造れば
アイツも納得して受け入れてくれるだろ」
おそらく真面目に話してるんだろうけど、内容は凄く個人的で
用はイケメンシンセティックを造って見返してやろう、という事っぽい。
「ツラの良い男・・・って、うちらにイケメンを探して来いと?」
「あー、そうだ。あの野郎の店で働かせるにはそれしかねぇ
イケメンで客を釣ればさらに売り上げあがるだろーが」
「えー、私はやだ。だって個人的な”恨み”みたいなもんじゃん、それ」
さすがアリッサ、この場に居た者がおそらくそうじゃないかと
思っていた事をズバッと言ってくれるぜっ
「あのなー、お前らは俺に借りがあるんだぞ、それを分ってるのか?」
「借り?そ、そんなんありましたっけ?」
お前らって言うことはこの場にいる全員という事になるけど
ジェフリーはともかく、それ以外の人達には言ってる意味が全く分らない
先輩が聞いてくれたおかげでマスターはその事について話し始めた。
◇
どうやらマスターが言うには砂丘に行ったのはララに
頼まれたからであって俺達ではなく、ララ個人の為で俺がいなければ
短時間で山羊頭の場所へ辿り着くのも不可能だったろうと言う事だ。
”つまりララ以外の人達には頼まれておらず、むしろシーフのマスターが
付いていったのだから金払ってもらってもおかしくないって事か”
「ひっどーいっ、そんなの!後だしジャンケンじゃん!」
「ア、アリッサ、落ち着いてーな」
「うるさいっ、大人とはそういうモノだ。お前らにとっちゃ
理不尽に思えるかもだが、ビジネスとしちゃ間違ってねー」
”うん、ほぼ難癖つけた商売に近いけど”とはツッコめなかった僕。
言い分に納得いかない駄々っ子の様なアリッサはぶーぶー言ってるがこれ以上、
あの人を刺激するとキレるかもと思った先輩がアリッサの口を手で塞いでいる。
「で、でもマスター、いきなりイケメン探して来いって
言われても、俺達、どうしたら・・・」
「とりあえず、情報を集めてリサーチだな。だが、いくつか条件がある」
「条件ですか?何か探す事に事情があるって事でしょうか」
顔のいいヤツ探せって言われても漠然とし過ぎて、見当もつかない
俺と違ってシンシア姐さんは理不尽と感じてないらしくマスターのいう
いくつかの条件が気になってる様子で、具体的な事を聞き返している。
「ああ、マリアの時もそうだが、なるべくこの街に縁の無いヤツがいい
その方が当人にも迷惑かからんだろ。噂になったら面倒だ」
”まあ、それは瓜二つの自分が出来るのだから
同じ街にいると妙な噂になって居づらくなるよな”
「あと、この事は他言無用だ。俺が独断で進めてる事だからな
あの二人は金が動く事は知ってるが詳細は言うな、俺からの指令と思え」
あの二人ってギルドの金庫番と案件調整役の人達か、
なんでだろう、至極個人的な事だからだろうか・・・。
「掛かる費用やらは心配ない、とりあえず1人3千ゴールドを
移動やらの経費として渡しておく、あとこれもな」
「さ、3千ゴールドッ!」
「うあぁ、これっギルドの証ですやん!」
※ギルドの証 印鑑状のモノでこの印があれば、用途を問わずその代金を
シーフギルドへの支払明細書として送る事ができる。様々な商店で使用可能。
「リティア、対象になりそうな男がいたらモデルにならないかと
お前が交渉しろ、いいか生半可なツラの奴を選ぶんじゃねーぞ」
”もしかしても俺達、この街から出て探す事になるのか、なるよな”
経費などを出してくれる事に驚いたが、
街を離れた事のない俺は奇妙な好奇心で心が躍っていた。
人探し?になるのか微妙だけど、このメンバーだと面白そうだ。
お読み頂き有難うございます。
拙い文章ですがマイペースに更新しているので宜しくです。