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盗賊稼業も楽じゃない!  作者: 北極えび
第一章 ー蒼の洞窟ー
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誰もいないログハウス

登場人物


リシュ・レミルトン 駆け出し盗賊

リティア・ウィンフィールド 先輩

シンシア・ルフィン パワー系プリースト

アリッサ・ハーメイ 放し飼いサモナー かぴばら

ララ・ヘルミナ お子様メイジ 雨がっぱ ひよこ

ジーン・トアロ 盾なしウォリアー

 湯上りの女子組が話しているのを聞きながら、俺とジーンの入る

タイミングを伺っていると、いつの間にかアリッサとララだけ着ぐるみに

顔だけ出ていて、その場で就寝可能かと思える程の格好になっている。

 というか、ドコから出したんだ?と不思議に思っていたら、

先輩とシンシアもバスローブ姿だし、この人らえらく寛いでるわーっ


「なんだろうあれ。ねずみっぽいけど顔の部分が大きい

 ララはなんか羽毛というか背中に羽があって鳥みたいだし」


 そんな事を呟いているとアリッサと目が合って、着ぐるみかなと思っていた

俺の方へ近づいてきて、目の前でクルっと回って謎のアピールをしてくる。


「カピバラだよー。かわいいでしょっ」


「そ、そうなんだ。温かそうだね、ララが着てるのは鳥系?」


「うーん、ペンギン?あ、違った。ヒヨコだよ」


 ナゼにそこで鬼天竺鼠さんとヒヨコなのかは置いていて、そんなのどこで

売ってるんだっ。道具屋じゃないよな、こういった珍妙な品は

よろず屋なのかも知れないけど、この冒険に必要なモノなのか謎過ぎるわ。


「で、どうましょう。近衛兵の方に聞いてみましょうか?」


「そやねー。さすがに子供を野宿させるわけにはいかんからの」


 俺とアリッサから少し離れた距離で話しているシンシアと先輩はララの事を

考えて、近衛兵達が寝泊りしているログハウス造りの詰め所を1つ貸して

貰えないかと話し合っている。まあ確かにヒヨコ姿だし、安全な場所は欲しい。


「私なら大丈夫なのに」


「ダメです。身体的には幼いのですから、免疫が弱くて

 風邪をひいてしまったら困るのはララちゃんですよ」


「た、確かに今はそうだけど・・・はぁ」


 保護者の様に振舞うシンシアの正論に少し不貞腐れた様にいうララだったが、

ぐぅの根もでなくなりため息をついた。移動する前に温泉に入るのはココしか

ないと思った俺とジーンは、先輩たちに断って岩戸へと続く道へ向かった。



 男と風呂に入るなんて小さい時にオヤジとくらいしかなかったが、早々に

あがって先輩たちと詰め所へ向かわないと、こっちも湯冷めしてしまう。

 街で売っている風呂用洗剤は重曹と炭酸水を混ぜ、それに香料をつけた

モノが主流で髪用と身体用に分かれていて、聞いた話しによると錬金術で

作られて最新の商品が出ている。その辺りの流行品は女の子の方が詳しいハズ。


「しかし一体、どこにあんなのを隠していたんだか」


「う、うーん。あんまり深く考えちゃいけないと思う。アリッサの私物だし」


 急いで温泉に入って上がり、長袖とズボンに着替えている時。ジーンと

アリッサが話していたら、父親が造った魔道具があると言っていたらしく。

 おそらくソレがあの気ぐるみじゃないかと語っていた。なんでも気温差が

あると知っていた父親さんが持たせてくれたモノがあるそうで、あのカピバラ

なら暖かそうだし。寝袋というか、あのままの格好で寝ても問題なさそう。


”他にもあったりしてなー。しかし、アリッサのオヤジさんて何者なんだ”


 自作で魔法道具を造る程の人物、売れ筋商品なら相当有名になってる。

そんな事を考えながら先輩たちの待つ岩戸入り口まで行くと、そのまま詰め

所へ向かおうと言われ、俺たちは上層を管理している近衛兵の元に向かった。



「今晩はー。どなたかいらっしゃいますかーっ」


 第三女神像から奥に歩いているとログハウスが間を置いて並んでいて、

そこが近衛兵達の詰め所になっているのだが、シンシアの呼びかけに部屋の

中はランプの明かりのみで人の気配がしない。鍾乳洞から聞こえる水滴が

なおさら不気味に感じる中、先輩が勝手にドアを開けて中に入って行った。


「あれれ、誰もおらへん」


「どうしたのでしょう、近衛兵が1人もいないなんて」


 皆で中に入って様子を確認したが、暖炉すら使われている形跡がない。

気温が下がってきているのに、そんな奇妙な感じに陥っていると


「うーん、交代の時期だったのかしら」


 近衛兵の事を季節労働者みたいに言う羽つき着ぐるのお子様。さすがに

交代だとしても、こんだけあるログハウスから誰も出てこないのはおかしい。


「まぁ、誰もいないのなら借りても問題ないやろ。燃炭石貸してーな」


 俺は道具袋から燃炭石を手渡し、先輩が暖炉にソレをバラける様に

放り込むと左手から魔力を送り炎を発火させた。


「えっ?リっちゃん魔法使えたっけ?」


 先輩が魔力で炎を起こしたのを見てシンシアは驚いている。かなり

予想外の事だった様だ。あれ?確かに先輩って魔法使えたっけ。

 チュートリアルから一緒だけど見た事がなかった、シーフの訓練だし

あえて使わないでいたのかも。魔法を使ってはシーフではなくなってしまう。


「えへへー。吃驚したやろ シンシアが転職したあとうちもレベルジャンプで

 メイジから幾つか魔法覚えて継承したあとシーフに戻ってきてん」


※レベルジャンプ 受注ジャンプともいわれる。経験値をもらえる

 デイリーミッションを多く受注し、転職してレベル1になったら

 報告して一気にレベルを上げる。スキルを継承したい場合にかなり有効。


「ふーん、どうりで見かけなかったわけだー。私がギルドに

 行ってたら会えてたかなー?」


「いえ、アリッサがギルドへ入る前でしょう。私も見ていないから」


 椅子に腰掛けながらアリッサとテーブルの上で夕飯の支度をしている

ララが先輩を見ながら呟いてるけど、傍からだとカピバラとヒヨコが

並んでるので珍妙な光景にしか見えないっ


「まぁ、メイジになったんは短時間やったから、受付の人と

 ギルマスしか会わんかったし。継承目的やしの」


「その様子だと他にも転職して継承してるスキルがありそうね」


「ララちゃんもな」


 腰から取り出したダガーで果物の皮を剥きながらメイジギルドでの事を

話しだす先輩。なんだろう、互いに微笑している2人のやりとりに

底知れぬ怖さを覚えるのだけど、メイジギルドでララが見てないっていう

のが気になった。アリッサが入る前から居るんだよな、何してたんだろう。


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