8月 月末部品到着物語~そして僕は伝説の配達人を目指す~
8月。夏真っ盛り。30℃を超えるような気温が連日して続いていた。
例年通りの夏であれば、海水浴に出かけ日焼けしまくって後日シャワーで死にかけたり、バーベキューをしながら暑い暑いと言いつつ肉に喰らいつき、ビアガーデンでキンッキンに冷えたビールを流し込んだりするのかもしれない。けれども今年はどうも違った。
僕は、相変わらずソリティアを続けていた。他にやることが無かったからだ。
共同研究者は実験装置のシミュレーションを独自にどんどん進めている。僕は彼の発表資料を穴が開くほど読むものの
「うーん!わからん!寝る!!」
を7回以上は繰り返していた。
そうこうしているうちに、僕の発表の番が来るのだから困ったものである。もう実験装置に必要そうな部品を研究室から探したのでネタは使えない。真剣に「研究室のパソコンの電源入れた~」というだけの内容を発表しようか悩んだくらいだ。
そんな中、8月最初の大学訪問前、僕は共同研究者にメッセージを送っていた。
「ゲーム貸して!!」
と。
そう、研究もろくにせず、共同研究者からゲームを貸してもらおうと思っていたのだ。もちろん共同研究者は親切心に満ち溢れているので、貸してくれた。
貸してもらったゲームは、荷物を運びながらアメリカを横断するというゲームだ。僕は孤立した世界を繋ぎとめるために走り続けた。国を繋ぎとめる誰かに僕もなっていた。尚、この誰かのキャスティングはノーマン・リーダスとする。
その影響もあり、6月頃の「そろそろ真面目にやるか宣言」はすっかり忘れ、僕は再び残念な研究会資料を作るのだった。
「そろそろ中間発表の準備としてパワポ資料の作成を始めた」
それが僕の研究会資料の中身だ。中間発表1ヵ月前の報告である。
それでも8月はお盆休みの関係で10日の研究会が中止になっていたので少しばかり気が楽だった。
お盆休みを含めた「研究会資料を考えなくていい時期」の間、僕は借りたゲームをプレイしたり、ソシャゲの5周年記念実装キャラが引けずに爆死したり、と慌ただしい日々を送っていた。
8月も終わりが近付いた頃になり、教授から1通のメールが届いた。
要約すると
「テメェらの使う部品が届く日にちが決まった。受け取りに来い」
だ。
それは、中間発表の約2週間前のことだった。
月末、僕は1人研究室に居た。共同研究者は日程が合わず来れなかったので、僕一人で実験装置の大まかな組み立てを行った。この時ばかりは「へへへ、共同研究者さんよぉ、俺っちが居てよかっただろぅ??」とニヘラニヘラと笑ったものだ。
僕は
「これ、次の発表資料に使おう…」
と組み立てを行い、8月は過ぎ去っていくのだった。