4月 学部4年生が新規研究テーマで無双する話…?
4月。僕らの研究生活が始まった。それは例年とはまるで異なる研究生活だった。
研究会とは、学生が卒業研究の進捗状況を発表を行い意見を交わし合う場だと思ってほしい。少なくとも、僕が所属する研究室ではそうだった。といっても発表に対して意見を言ってくれるのは教授が9.9割であり「多忙な教授から確実にアドバイスが貰える会」と呼ぶのがふさわしいだろう。
まだ3年生だった昨年の11月後半から僕らも研究会に出席し、先輩方の発表を見てきたからわかるが…教授はどんな発表にも質問をする。疑問を投げかける。
過去に何も質問しなかったのは…それこそ卒論発表間近で何も進展がなかった時の研究会くらいだ。(あの時教授は4年生に「インフルエンザにはならないようにね」とだけ言って終わった。)
当時、新型の感染症が世界中に蔓延していたために研究会はオンラインだ。Zoomを通じて研究会を行うわけだが、教授も初めての経験なので最初は戸惑いがあった。
4月最初の研究会は僕ら研究内容が定まらなかった組は資料を作らず済んだ。代わりにこの日、僕らは教授に直接研究テーマを宣言した。後は他の研究テーマの学生が慌てて作った研究会資料をぼんやりと眺めるだけに終わった。
しかし、第2回研究会となれば話は変わる。教授もオンラインのコツを掴んだのか平然と「資料のある人からやっていこうか」と学生を指名していく。
僕らはといえば前回免れた分、今回は研究テーマについて考えていることを発表しなければならなかった。
「じゃぁ次、君たち」
教授が画面越しに僕らを指す。すると、共同研究者が動いた。
画面共有をし、発表資料を見せ、説明を始める。その研究会資料を見た時からだろう。僕が共同研究者に信仰の念を抱いたのは。尊敬ではない。信仰である。ここに一つ、新たな宗教が爆誕したのだ。
一応、僕自身も研究会資料を用意してはいたが、共同研究者が作った発表資料は僕の何倍もしっかりとした資料だった。仮に僕の研究会資料と共同研究者の研究会資料が芸能人格付けチェック並べられたならば、 GACKTは共同研究者の研究会資料を選ぶだろう。
それ程までにしっかりした研究会資料を作る共同研究者を見て僕は確信する。
「昨年の僕の努力は無駄ではなかった…いや、ここまで至った大学生生活は無駄ではなかった!!」
と。
といっても、研究会資料はずっと1人が作り続けるわけではない。交互に発表資料を作ることに決めていた。故に翌週は自分が発表資料を作る番になった。
それが最初の試練だった。
研究会資料を作るとなり、開いたWordの画面と睨めっこをしながら僕は思う。
「書くことがねぇ~WowWow↑」
というのも当時僕が取り組んでいたことは
・どうぶつの森でカブ取引に熱中し、イースターイベントに呆れていた。
・究極のチャーハンを研究していた。
という具合だったからだ。あとは3月ごろから始めたダイエットが順調だったり、モンスターハンターワールドを久々にプレイしようと思うもやる気が出なかったり、他学科の友人とMinecraftを始めたりと、どれも研究とは結び付けづらいことばかりだ。
しかしそれでも、時間とは無情にも流れていく。研究会資料を作るために選んだ最後の結論は「先週の研究会資料の水増し」だった。
先週こんなことを考えた共同研究者がいたので、それに合わせて今週は再度考えてみた~!!と言ってみるのだ。
情けなかった。しかしそれでも、僕はタヌキから借りたローンの返済の為にカブ取引に時間を割くしかなかったのだ。僕は必死にスズキを釣っていた。
そうこうしている内に、まだ何もわからぬまま4月は過ぎ去っていったのだった。