表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/23

1話 噂

「海老村君」


「何でしょうか?」


「海老村君が私をオカズにしているって噂は本当なの?」


 放課後の教室に残っているのは、私と神崎さんだけだった。

 神崎さんは軽く腕組みをしながら、少し吊り上がった目で席に座る私を見下ろしている。

 腕組みで強調された大きな胸が、私の目を喜ばせる。


「答えてよ」


「答えられません」


「何で?」


「答えてしまうと、セクハラになってしまう恐れがあります」


「いいから答えて。今すぐ」


「はい。私は神崎さんをほぼ毎日オカズにしています」


「……最悪」


 神崎さんは、呆れたように大きく息を吐いた。


「海老村君は私の事が好きなの?」


「私はあなたに恋愛感情を抱いたことはありません」


「意味わかんない。なら何で私をオカズにしたの?」


「親しくもない女性に言うのは憚られるのですが」


「気にしなくていいから。言って」


「あなたの容姿が私の性欲の捌け口として大変優れていた。私が神崎さんをオナニーのオカズに選択した理由はそれだけです」


「……最低」


「先ほど『気にしなくていい』と言ったではないですか?」


「それとこれとは話が別でしょ。ほんと最低。男ってみんなそうなの?」


「早まった一般化は感心しませんが、少なくとも私はそういう男です」


「なんで偉そうにしてるの? 謝ってよ」


「はい。私は修学旅行の折、同室の坂下さんに夜のオカズを尋ねられた際、『神崎さんをオカズにしている』という事実を打ち明けてしまいました。結果として、坂下さんを発信源としてクラス中に『私が神崎さんをオカズにした』事実が知れ渡ってしまい、神崎さんに多大な心的ストレスを与える事となってしまいました。謹んでお詫び致します」


「それも最低だけど、私をオカズにした事も謝って」


「お断りします」


「何で?」


「思想及び良心の自由は日本国憲法で保証されています。私がオナニーをする際に誰の姿を心に描こうともそれは自由です」


「下らない屁理屈は止めて。人を勝手にオカズにするとか最低って言ってるの。そのくらいの事も分からないの?」


「法的に何か問題でも?」


「何で開き直るの? ……クラス中に変な噂が流れる原因作ったのは海老村君だよね?」


「はい。その点は申し訳ございませんでした」


「そう思ってるなら私をオカズにした事も謝ってよ」


「致しかねます」


「……もしかしてまた私をオカズにする気?」


「それは言えません」


「……最低」


 神崎さんはそう言い捨てると、夕日で紅く染まる教室を出て行く。その横顔は何故か笑っていた。


 彼女は私を嘲っているのだろうか。

 それとも怒りのあまり笑うしかなくなったのだろうか。


 どういう訳か、私にはその笑みが自嘲的な笑みに感じられた。


 それから私は暫く読書してから家路についた。

 そして神崎さんをオカズにオナニーをして一日を終えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 男子ならば誰もが経験したことあるストーリーに魅力を感じます。 [気になる点] 日本国憲法のところが個人的には大好きな表現です。 最高な返し方だなと感じました。 [一言] おもしろいです。そ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ