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出会いは突然に

 香織の顔から笑顔が消えた。それで、わなわなと震えだした。怒ってる!?


「お兄ちゃん......」

「な、なんだ、香織?」

「彼女がいるって隠してたの?」

「いや、隠してない!その、今日出来たんだ!」

「そんな嘘ついても駄目だよ。だって結婚前提なんでしょ?今日出来たはずがないじゃん!」


 ああそうだ!本当におかしいよ!初日でもうほとんど嫁だなんて、普通は信じられないだろう。俺もテレビで何度かゼロ日婚した人達を見たことがあるが、嘘くせえなあ、付き合ってたの隠してたんだろって思ったし。でも、本当なんだよ!


「それで、いつ結婚するの?」

「そんなの......」


 分からんよ!と言いかけたその瞬間、紗奈が言い放った。


「出来るだけ早く。ダーリン、18歳になったら結婚しようね♡」


 えーっ早っ!学生結婚すんの俺!?


「お兄ちゃん......」


 香織はますます顔を真っ赤にして、持っていた鞄の持ち手を強く握り、ゆっくりと振り上げる。


 えっ殴るのか!?

 いやだ、やめてくれ!

 俺が悪かったから!


「ひ......避妊だけはちゃんとしてよね!」


 ああああああああごめんなさ......え?


「高校生なのに子供が出来ちゃったら大変でしょっ......子供をつ、作るのは、その、せめて大学生になってからね!私、まだおばさんになりたくないからっ!」


 耳まで真っ赤になった顔を鞄で隠して、香織は言った。


 どうやら、香織は恥ずかしさがピークに来たようだ。そりゃ、避妊なんて花も恥じらう乙女には言いにくい言葉だし......


 俺と紗奈が既に爛れた関係だと思ったらしい。実際はまだ付き合って初日、いや半日だが、ダーリンって呼んでたり恋人つなぎしてたりするのだから。


『ああーっ、これはやっちゃってるっ!間違いないっ!』


 と、香織の心が訴えたんだと。......まあ分からんでもない。言い方は悪いがさっきまでの俺たち、完全に見た目バカップルだったもん。校内でイチャイチャしながら歩きまわるのは、バカップルにしか出来ない。紗奈が茶髪なのも誤解される一因になったかもしれない。


 なんとなく気恥ずかしいが、香織に今朝あったことの顛末を順を追って話す。紗奈がウンウン頷いていたのを見て、ようやく本当に交際初日なのだと香織に分かってもらえたようだ。香織は自分が早まった事について、俺たちにしきりに謝っていた。


 でも煮え切らない回答をした俺も、いきなり結婚ってワードを使った紗奈も悪かったので、もちろんすぐ許した。これで仲直りだ。


 しかし、義理の妹に避妊しろなんて言われると、さすがに俺も恥ずかしくなってきた。


「......もう、帰ろう」

「......うん、そうだね、お兄ちゃん。あのー、変なこと言ってごめんね?」

「いや、心配してくれたんだろ?だからその、全然、いいよ」


 あー!!なんだか会話がぎこちない!!くそっ、香織と気まずくなるのは一番避けたかったのに!誰が悪いんだ!紗奈か!


 ......いや、俺か!結婚の約束をした俺が諸悪の根源じゃないか!俺のヤロウ!記憶にないが、自分の行いを怨む。しかし紗奈にもやはり責任はあるので、釘を刺しておく。


「紗奈、他人の前で俺のことをダーリンって呼ぶな!今朝クラスの注目を集めてたの気付かなかったのか?」


 そう、今朝俺たちはゴリゴリにクラスの注目を集めていた。そりゃそうだ、ダーリンなんて言葉が聞こえたら誰だって気になる。呼び方がれーちゃんのままだったら、まだマシだっただろうに......


「気づいてたよ。ダーリンは私のものって他の女の子たちに見せつけなくちゃって思ったの♡」


 衝撃発言。このままじゃバカップルまっしぐらだ。やっぱり恥ずかしいので、今後家の外ではれーちゃんと呼ぶよう紗奈に約束させた。渋々と言った様子だったが、完全にはダーリンを封じられなかったので良いらしい。そういうもんか。


 こうして、香織と紗奈の初対面は終わった。あーあ、やっちゃったなあ......誤解は解けたけど、2人は今後も仲良くやっていけるだろうか?心配でならない。


 あー、もう疲れた。帰ったら早く風呂に入って、リラックスしよう。

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