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決意

 驚いた。綺麗な黒髪ロングに、ダークブラウンの瞳。高い鼻、細い首、小さな唇。身長は年齢相応だが、出るところは出ている。香織は、漫画の世界から飛び出してきたかのような美少女だった。


「あ、えっと、こちらこそ!よろしくお願いします!」


 緊張して、美少女を前にすると敬語になっちゃう現象が発現した。これ正式名称あんのかな。


 そんなこんなで、荷物が一通り運び込まれた後、早めの夕食に。今日は引越し祝いで、出前もとった。豪華な料理が並んでいる。父さんが音頭を取った。


「皆新しい環境で不安も有るだろうけど、俺と、あかりと、香織ちゃんと、蓮と。4人で助け合っていこう!新たな家族の門出に、乾杯!」


 乾杯。俺はコーラを呷る。かぁーっうまいっ!と、声には出さなかった。俺は変わるのだ。香織が憧れるようなカッコいい兄になるために、オッサンじみた言動は慎むことにした。そんな俺の横で、香織はオレンジジュースをちびちび飲んでいる。どうやら炭酸は苦手なようだ。


 和やかな雰囲気で夕食を終えた後、香織にちょん、と肩をつつかれた。


「ん、香織。どした?」

「あの、お兄ちゃんの部屋に行ってみてもいい?」

「分かった。こっちだよ」

「ありがとう!お兄ちゃん!」


 香織はにっこり笑って言った。可愛すぎる。香織にお願いされたら、何でも聞いてあげたくなるな。


 リビングを出て階段を上り、俺の部屋のドアを開ける。


「ここがお兄ちゃんの......」


 香織は目をキラキラさせて俺の部屋を見回している。家具はモノトーンで統一され、本棚には漫画がぎっしり詰まっている。ベッドはセミダブル。小さい頃は父さんと寝ていたが、今は俺のベッドだ。壁には旅行先で買ったタペストリーが何枚か飾ってあり、部屋の中心にある机には、やりかけの春課題がほっぽり出されている。


「大した部屋じゃないけど......まあ、いつでも来ていいからな」

「うん!また来るね!」


 香織は元気よく返事をして、隣の自分の部屋に入っていった。俺は風呂へ。


「香織は可愛いなあ」


 俺は一人っ子だったから、兄弟に強い憧れがあった。俺の姉ちゃんがさー、とか私の弟がねー、とか聞く度、モヤモヤしたものだ。そんな俺に妹が出来たのだから、もう嬉しくて堪らない。香織は年も近いしもう高校生だけど、俺のことをお兄ちゃんと呼んでくれる。良い子だ。


 よし、存分に甘やかしてやろう!そう決意した。妹を甘やかすのが兄の務めだ。俺は身体を洗いながら、香織を甘やかす作戦を立てた。


 今回の作戦はこうだ。


 早起きして、香織の部屋に行く。そして、香織を起こす。そうすれば、むにゃむにゃ言いながら一回起きるはずだ。


 そこで「なんだ、まだ眠いのか?」と聞く。おそらく、香織の返事は「う、ん......」みたいな感じだ。


 後は、「そうか、じゃあ時間が来たら起こしてあげるから、寝てて良いぞ」と言って、おしまい。実にシンプル。


 学校が始まるのが8時半で通学時間は20分ぐらいだから、普段俺は7時に起きている。香織もそうするだろう。よって、作戦開始時刻は6時半。


 簡単に言うと、起こして、寝かして、また起こす作戦。


 命名、マッチポンプ・モーニング。


 忘れずにアラームを6時半にセットして、俺はワクワクしながら朝を待った。


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