出会い
......ん?好きな季節は何かって?唐突だな。うーん、春かな。なんでって、そりゃあ春休みには課題が無いからな。これ結構大事だろ?......
そんなこと言ったやつは誰だ。俺か。
俺、酒井蓮は高校1年生の3学期が終わった今、過去の自分の発言を思い出していた。
「春課題あるじゃん......テキスト終わんね......もういや......」
そう、中学では無かった春課題が高校では存在したのだ。クラスメイトは当然のように受け入れていたが、俺は結構ショックを受けていた。しばらくのんびり出来ると思ったのにな。
ブー垂れながら課題をこなしていると、ピンポンが鳴った。お、来たな。はーい、と外に届いているのかよく分からない声量で返事をして、ガチャリと玄関のドアを開ける。
そこには身長190センチ、筋肉モリモリマッチョメンの......引越し業者が立っていた。
「ども!お預け頂いた荷物、持ってきます!」
無論、俺にこんなマッチョメンの知り合いは居ない。居たらいいのに。一緒にいたら、絶対ヤンキーに絡まれたりしないだろう。そうして、俺は安寧の日々を手に入れるのだ!いや、別に実際に怖い人に絡まれたこと、無いけどね?まあ、安心感がね?あるじゃん。
閑話休題。
父さんが再婚することになってしばらく経った今日、新しい母親と妹が俺の家に引っ越してくる。母親のあかりさんは結婚が決まった時俺の家に挨拶しに来たので、面識はある。おっとりした、かわいらしい人だったな。
だが、妹の香織は高校の受験勉強で忙しく、前の家も遠かったからなんだかんだで直接話す機会がなかった。
それ故、俺は未知の存在とどう接するか悩んでいた。フランクに接していいもんかな?嫌われるかな?そもそも無視とかされないかな?キモいとか言われないかな?ゴミムシを見るような目で睨んだり......
そんなネガティブ思考のスパイラルに陥った俺の前に、俺より少し背の低い女の子がひょっこり姿を見せた。
「こんにちは、えっと......香織といいます。これからよろしくお願いしますね、お兄ちゃん!」
そう言って、俺の妹・香織はにっこり笑った。