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 ガシュラの言葉に王子たちは驚かない。


 砂賊の襲撃、特に小都市への攻撃は、もはや珍しくもない。


 砂賊は一般市民を巻き込まぬよう、軍の施設のみを狙う。


 自分たちの敵は王家、いや正確にはガシュラ一派なのだという意思表示か?


 そもそもエズモ族はアメンドラ3世が病に伏す前は、王家と良好な関係を築いていたのである。


 ガシュラ一派vsエズモ族。


 常に争いの中心にはガシュラ有り。


 ラヴィは心の中で「ふふん」と鼻を鳴らす。


 問題はシンプルだ。


 第1王子ガシュラの野望が、全ての戦いの元凶。


「忌々しいクズ虫どもが!」


 ガシュラが声を荒げる。


 ここまでの流れは、いつものパターン。


 お馴染みである。


 結局のところ、敵の細かい陽動に大軍を動かす愚をガシュラは犯さない。


 拠点を増やし戦力を保持しつつ、じわじわと版図を広げ、最後に砂賊を追い詰め圧殺する。


 その日が来るまでは、この会議冒頭のガシュラの怒り表明は繰り返されるだろう。


 ひとしきり、ガシュラがエズモ族への呪いの言葉を吐きまくった後、実質の会議が始まるのだ。


 それも大して重要ではない申し渡しばかりに違いない。


 あーあ、早く終わんねえかなー。


 直立不動で神妙な顔をするラヴィの脳内で、彼女は寝転がり両手で頬杖をつき、両足をバタバタと動かしていた。


「よし」


 ガシュラが言った。


 次に「始めるか」と続くと、ラヴィは知っている。


 ほらね…。


 ほらね…?


 あれ?


 ラヴィは現実へと引き戻された。


 何で「始めるか」って言わないの?


 円卓に眼をやると、7人の王子のうち、6人の視線が残りの1人に注がれていた。


 皆に注視されている王子とは。


 メルドラ!?


 ラヴィは思わず両眼をこすった。


 メルドラが右手を高々と挙げている!?


 あれー?


 ど、どうしちゃったのかなー?


 脇の下が痒くて挙げちゃった!?


 体操!?


 体操でしょ!?


 あくびして右手が自然と伸びちゃった!?


 そのままだと意見があると皆に思われるよ!!


 下ろして!


 今すぐに手を下ろしてー!!


 ラヴィはダッシュでメルドラの視線の先へと回り込むと、必死のジェスチャーで右手を下ろすようサインを出した。


 メルドラが「うんうん」と頷いている。


「うんうん」じゃなくて!!


 下ろして!


 み・ぎ・て・を・お・ろ・し・て!


 猫スマイルしてんじゃないわよ!!


「何だ…メルドラ」


 ガシュラの、いつもよりさらに低い声が響いた。


 半分は戸惑い、残りは怒り。


 弟の奇行はラヴィの報告で知ってはいたが、まさか会議で発言してくるなどとは思いもしなかった。


「兄上!!」


 メルドラは、やたらと元気が良い。


「砂賊討伐を僕にやらせてください!!」


 これには6人の王子たちの口がポカンと開いた。


 今、何と言った?


 猫スマイルの天然王子が砂賊討伐?


 いったいどういう風の吹き回しか?

 


 



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