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「その3ヶ月の間に、僕はエルフィンから笛の特訓を受けた。それでレーベで意思の疎通(そつう)が出来るようになりました」


「元々、才能があったのよ」


 エルフィンが、鈴の音を鳴らすように笑う。


「あんなに早く上達した人を私は知らないわ」


「まあ、とにかく」


 メルドラが続ける。


「僕と砂賊は兄上に知られず、いつでも連絡が取れたのです。この」


 メルドラがラヴィを見つめる。


「優秀な女スパイに気づかれることなくね」


 そう言われたラヴィは、青ざめた。


 この状況は、とても良いとは言えない。


 否、ガシュラがピンチなのは良い。


 それは痛快だ。


 しかし、問題は自分が落ち目のガシュラの陣営だということだ!


「砂賊の戦力が少なかったので、傭兵たちは2回に分けて取り込みました。兄上が指揮官に出した、傭兵たちを始末する密命を明かしたら、すぐにこちらに鞍替(くらが)えしてくれましたよ。まあ、2倍の報酬は約束しましたが。あ! このお金は兄上の資産から支払わせていただきますね」


「………」


 メルドラの満面の笑顔とは対照的に、ガシュラの顔は激しい怒りのあまり、どす黒く変色していた。


「そして私はジローとモッキュの協力を得て、メリステア様とチャミを助け出した。これでメルドラの弱点は無くなったの」とエルフィン。


 モッキュが笑顔で頷く。


「そこから、今回の攻撃です。砂漠の地下洞窟から王都に侵入し、私とチャミが王宮を脱け出した地下通路を使って、エルフィンたちがここまでやって来る。兄上たちの身柄さえ押さえてしまえば、元々は父上に忠誠を誓った兵たちは、果たして命を懸けてまで戦おうとしますか? しないと思います」


 メルドラが微笑む。


「ましてや新しい指導者は兄上たちと同じく、その権利を持つ王子なのですから」


「ぬぅぅぅ……」


 ガシュラが(うめ)いた。


 こめかみに浮いた血管が、ビクビクと震える。


「お前が…お前如きが、この星を支配するつもりか!?」


「ええ!?」


 メルドラが眼を丸くした。


「あはははは!!」


 天を仰いで大笑いする。


「僕じゃありませんよ! 兄上たちはターコート王家と民に対して不義理をなされた。なので当然、罰は受けていただきます。そして次にターコートを導くのは、順番、能力、人柄、全てを兼ね備えたカサンドラ兄上です」


 メルドラの言葉にカサンドラが驚愕した。


「メルドラ!」


「兄上」


 エルフィンとラヴィから手を離したメルドラが、カサンドラに歩み寄り、その手を取った。


「時は来ました。兄上は真面目ゆえ、このような形での就任はお嫌かもしれません。しかし、今は王家を一刻も早く正常に戻さねばならぬ緊急事態。やり方の好き嫌いは横に置き、自らの責任をお果たしください。兄上には、そのお力があるのですから」


 カサンドラは驚きの表情のまま、弟を見つめた。


 優しくはあるが、あまりに奇行の目立つ弟を常に気にかけてきたが、まさかここまでの才気を隠し続けていたとは!


「砂漠の猫」などとは、とんでもない!


 やはりメルドラも父上の子、立派な「砂漠の虎」であったのだ!


「分かったよ、メルドラ」


 カサンドラが頷いた。


 その顔は引き締まり、突如、自らを次期王へと押し上げたこの流れを受け入れ、さっそくも為政者(いせいしゃ)としてのオーラを漂わせ始めた。






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