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「合流した仲間の案内で2階の目的の部屋まで行く。出来るだけ見つからないようにね」
エルフィンの指が目的の部屋の上に動く。
「1階にはサイボーグが6人。2階にもバイパーのサイボーグたちが居る。厨房の仲間は2階の敵の人数までは把握できなかった。とにかく最速で目的の部屋にたどり着く」
「その後は?」
「全力で逃げる。迅速かつ、安全にね」
ジローがエルフィンと3人の男たちを見る。
「シィムの水」でパワーアップ出来る4人とハイブリッドソルジャーの自分が居れば、バイパーの見張りとも互角に渡り合えるだろう。
むしろ問題は部屋にたどり着いた後か?
庭や1階のサイボーグたちが侵入に気づいて集まってくる前に、建物から逃げ出さねばならない。
ここが、かなりの難度になる。
「『ジロモキュ』の実力、見せてもらうよ」
エルフィンがニヤッと笑った。
目標の建物のドアが開いた。
建物の外からは銃声と怒号が聞こえてくる。
エルフィンの仲間が警護の兵士と戦っている音だ。
砂漠の民族衣装を着た20代の女が、エルフィンとジロモキュ、そして3人のエズモ族を招き入れた。
「2階へ」
女が早口で言い、皆を先導する。
2階の階段を上がるまで、誰とも遭わなかった。
ジローは大口径ハンドガンを右手に持ち、周りに慎重な視線を走らせる。
ここまでは上手くいっている。
エルフィンの計画通りだ。
2階の廊下へ続く階段の途中で、女が足を止めた。
「敵か!?」
廊下から男の声がする。
「そうだ! 持ち場は離れるなよ!」
最初とは別の男の声。
最低でも2人は居る。
ジローがエルフィンの肩に触れ、アイコンタクトした。
隠密行動は、ここまでが限界だ。
ここからは、いかに早く目標に到達するか。
エルフィンとジローが、指でカウントを合わせ、一斉に廊下へ半身を出す。
サイボーグ体のバイパー構成員2人が、こちらを向く。
その瞬間。
ジローの大口径ハンドガンとエルフィンのターコート製の実弾銃が火を吹いた。
右に居たサイボーグの頭は粉々に四散し、その場で倒れた。
もう1人は胸元に銃弾を受けたが怯まず、右手に持ったレーザーガンをこちらへ向けた。
その刹那、ジローが2発目を撃ち、サイボーグの顔面を粉砕する。
装甲は大したことないタイプのサイボーグたちだ。
これならジローの銃で問題なく倒せる。
銃声を聞いた他のサイボーグたちが廊下へと出てくるが、ジローと「シィムの水」で能力強化したエルフィンとその仲間が、次々と始末した。
目的の部屋へと進む。
3人のエズモ族の男と、予め潜入していた女は、1階の敵が上がって来る場合に備え、2ヶ所の階段でそれぞれ2人ずつ陣取った。
残ったエルフィンとジロモキュは、目標の部屋のドア前に移動する。
装飾を重視した古い造りのドアをジローの右足が蹴り開ける。
中に飛び込むと同時に、大口径ハンドガンが3連射された。
侵入者を蜂の巣にするべく待ち構えていたバイパー3人が、全員、頭を吹き飛ばされ、もんどりうった。
ジローのあまりの早撃ちに、エルフィンが口笛を鳴らす。
「すごいね。噂通り」
「まあね」
ジローが頷く。
若干、得意げだ。
「ジローは早撃ちで、ガツビィおじいさんにしか負けたことないんだよ!」
モッキュが嬉しそうにエルフィンに教える。
「それを言っちゃダメ!」とジロー。
モッキュが慌てて両手で口を塞ぐ。
エルフィンが笑う。




