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「メルドラを信用させろ。上手く取り入るのが、お前の役目」


 ガシュラの両眼がギラリと光った。


「何なら、身体を使え」


 当時のメルドラは14歳。


 ラヴィは20歳だった。


 うら若き乙女に少年をたらし込めとは。


 ラヴィは頭の中で、ガシュラの頬を思い切り引っぱたいたが、現実では眉ひとつ動かさず直立していた。


「はっ」


 それ以外は許されぬ返事。


 こうしてラヴィはメルドラの側近としての3年間を過ごした。


 メルドラとその母、妹はガシュラの意に反することなく何とか生き残った。


 病床とはいえアメンドラ3世が存命であるのも、ガシュラに暴力的な一線を越えさせぬ歯止めとなっているのだとラヴィは踏んでいる。


 さすがにガシュラがあからさまに兄弟を殺せば、弱りきった「砂漠の虎」が一時でも、息を吹き返すやもしれぬ。


 それに母親が違う4人の王子たちが合流すれば…武力で戦いに勝利しようとも、血まみれで勝ち取った玉座には常に大義名分なく簒奪(さんだつ)せしめたというレッテルが貼られる結果になるだろう。


 ガシュラは豪胆(ごうたん)で非情だが、慎重さも持ち合わせた男。


 実質、この惑星を支配している現状を無理に危険に晒す愚は犯さなかった。


 目的の部屋の前まで、ラヴィはやって来た。


 王宮の外はターコートの2つの太陽が地表に照りつけ、過酷な暑さが幅を利かせているが、王宮内は地下のパワープラントによる空調で快適な温度に保たれている。


 扉の前でラヴィは自らの全身をひと通りチェックした。


 身長163㎝。


 スタイルはスレンダー。


 しかし、尻の張りには自信あり。


 髪は鎖骨辺りまでの紫色。


 地の色はターコート人特有の燃えるような赤だが、1年前に現れた他星の化粧品会社の営業美容部員が売り込むワンタッチ毛染めを使っている。


 最近のお気に入りが紫色だ。


 瞳は元々の赤色。


 大きめの両眼は、なかなかかわいらしいと自画自賛。


 しかし、細く四角いレンズの眼鏡で隠されている。


 これは賢そうに見せるための伊達眼鏡だ。


 出来る秘書のイメージ?


 あとは好みの男子の前で、ここ1番に眼鏡を外し「わあ! 君ってとっても可愛かったんだね!!」と驚かせる恋愛テクニック…おっと、妄想に突入している場合ではない。


 薄い布を身体に巻きつけたようなターコートの民族衣装。


 セクシー過ぎず、地味過ぎない。


 まあ、そもそも本人のセクシー度は低いのだが…。


 よし、問題はない。


 ラヴィは、ひとり頷くと扉をノックした。


 返事がない。


 いつものパターンだ。


 もう勝手に入っても良いんじゃねえのと思うが、仮にもメルドラは王子。

 

 そういうわけにもいかない。


「王子ー!!」


 大声で呼ぶ。


「ラヴィ~?」


 間の抜けた少年の声。


「入りますよー」


「そうなのー?」


 そうなのーじゃねえだろ!


 憮然(ぶぜん)とした顔でラヴィは扉を開けた。







 







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