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「あなたたちも無関係じゃないのよ」


「「?」」


「ガシュラが強化薬の研究パートナーとして選んだ相手は宇宙犯罪組織…」


「「バイパー!?」」


 ジローとモッキュが同時に言った。


 バイパーとは主要な星域を股にかける大規模犯罪組織である。


 その構成員は数知れず、多数の星で暗躍しているのだ。


 ジローとモッキュは今まで何度もバイパーと敵対し、生死を問わない賞金首のリストに入れられている。


「そう、強化薬を大量に製造すればバイパーは強力な兵力を手に入れ、ガシュラは莫大な資金を得る。ここで私たちに協力して食い止めないと、あなたたちも後々、厄介な事態に(おちい)るのよ」


「うむむ」


 ジローが腕を組み、考え込んだ。


「ジロー!!」


 モッキュが両手を挙げる。


「エルフィンさんたちを助けよう!!」


「モ、モッキュ…」


 ジローの眼が点になった。


「エルフィンが真実を話してる保証は無いんだぞ!」


「うーん」


 今度はモッキュが腕を組む。


 モッキュはもう一度、エルフィンの眼を見た。


 再び両手を挙げる。


「ボクはエルフィンさんは嘘をついてないと思う!!」


 そして、モッキュスマイル。


 ニコッ。


 ジローの両眼が、たちまちハートになる。


 が、すぐに首を横に振った。


「しょうがないな、モッキュは」


 ジローが呆れ顔になる。


 エルフィンに顔を向けた。


「今回はモッキュの勘を信じて協力するか。ただし、報酬はちゃんと貰う。それと今の話がもしも嘘だったら、その時点で降りるからな」


「それでいいわ。契約成立ね」


 エルフィンが笑顔をこぼす。


「それで?」


 ジローが訊いた。


「俺たちも傭兵に加わって、ガシュラの軍と戦えばいいのか?」


「最終的にはそうなる」


 エルフィンが頷いた。


「でも、あなたたち2人には、先に手伝って欲しいことがあるの」




 ラヴィはガシュラの前で直立不動だった。


 何回も呼びつけんじゃねえよ!!


 いくら公然のスパイだからって、節度があるだろ!


 部屋に入るのを誰かに見られたら、どうすんだ、このコンコンチキ!


 だいたい、もうじき日が変わろうかって時間に上司と部下が部屋で2人きりは良くないだろ!


 パワハラ&セクハラだ!!


 ラヴィは怒鳴り散らした。


 もちろん、心の中で。


「1日で半分をか!?」


 ガシュラがラヴィをにらみつける。


 ああ、そうだよ。


 あの天然王子は初手からひどいしくじりをして、1500もの兵士を失った。


 お前の狙い通りだろ?


「はっ」


 ラヴィが返事した。


 重々しい意匠(いしょう)が施された机と椅子に座るガシュラは、口の前で両手を組んだ。


「砂賊が勝ちすぎだ」


 口調がイラついている。


「私の兵を500も失うとは…」


 お前の兵じゃねーわ!!


 王家の兵だよ!


 まったく、何様だい!


「それでメルドラの様子は?」


「それが…あまり気にしていないようで、いつもと変わらず。まだ半分残っているから、それで逆転してみせるとやる気になってます」


 ラヴィが答えた。


 確かにメルドラは凹んでいない。


 それでこそ「砂漠の猫」だ。


 自分の首が危ういというのに、まるで気づいていない。


 砂賊の強さから考えると早晩(そうばん)、残りの1500の兵士も失うのではないか?


 メルドラの傭兵と砂賊を戦わせ漁夫の利を得るというガシュラの作戦は失敗したが、この後、たとえ残り500の正規軍を失ったとて、メルドラの資産をほとんど使わせるのには成功している。


 なおかつ、今回のしくじりでメルドラの王子としての発言力はさらに弱まった。


 カサンドラもバカな末弟をもう見限ったかもしれない。


 敵の一角を切り崩したなら、それだけでも価値はある。


 武力で王宮を支配するのは簡単だが、後々、簒奪者(さんだつしゃ)の汚名を受けるのは間違いない。


 今回のように慎重に策を練り、少しずつ敵を弱めていくのだ。


「メルドラはこの後、どう動く?」


 ガシュラが訊いた。



 



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