表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/41

18

「あなたたち」


 女の声に2人が顔を向けると、そこにエルフィンが立っていた。


 右手に小型のスキャナーを持っている。


 武装解除された時の、2人のデータをスキャンしたようだ。


「ジローとモッキュね」


 エルフィンが笑顔で訊いた。


 2人が顔を見合せる。


「そうだ」


 ジローが答えた。


 隠しても仕方ない。


「あなたたち2人に話があるの。私といっしょに来て」


 そう言ったエルフィンが、2人に背を向け歩きだす。


 ジローとモッキュは再び顔を見合せた。


 2人同時に肩をすくめ、エルフィンの後に続く。


 洞窟を奥に進むと仮設の居住施設が現れた。


 傭兵たち全員が寝泊まり出来る数が設置されている。


 やはり、今回の襲撃が入念に準備されていたのは間違いないようだ。


 エルフィンは小さな建物のひとつに入っていく。


 通信機器とテーブルと椅子が何脚かあるだけの簡素な部屋だ。


 エルフィンは椅子のひとつに座り、2人にも座るよう促した。


 ジローとモッキュが従う。


「あなたたち2人のことは調べさせてもらったわ」


 エルフィンが口を開く。


「あなたたちには、どうしても味方になって欲しいの」


 ジローが顔を曇らせる。


 エルフィンが続けた。


「今回、傭兵たちを集めたのはメルドラだけど」


 エルフィンがジローとモッキュを交互に見つめる。


「さっき説明した通り、正規軍はガシュラが握ってる。アメンドラ陛下がご健在の時は皆、上手くいってたの。でも陛下が重い病にお倒れになってから、ガシュラの圧政が始まった。どの街も重税を課せられ、市民はとても苦しんでるわ。逆らう者は問答無用で全て監獄行き。ひどいものよ」


「「………」」


「私たちは元の平和を取り戻したい。それにガシュラは、これも狙ってるの」


 エルフィンが(ふところ)から小瓶を取り出し、2人に見せた。


 小瓶の中にはエメラルド色の液体が入っている。


「わ! キレイ!」


 思わずモッキュが声を上げた。


「シィムの水よ」


「シィムの水?」


 モッキュが首を傾げる。


 か、かわいい!!


 ジローの両眼がハートになる。


 いや、エルフィンの赤い瞳も同じくハートに。


 まあ、無理もない。


 ジローはエルフィンを許した。


 モッキュは宇宙一かわいいのだから。


 ジローの咳払いに、エルフィンが正気に戻った。


「ええ、シィムの水」


 言い直す。


「この水を飲むと1時間ほど身体能力が強化されるの」


「ええ!?」


 モッキュが右手を口に当てて驚く。


 かわいい。


「ジローの『ブーストON』に少し似てるね」


 モッキュがジローに言った。


 今度はエルフィンが咳払いして、ジローを正気に戻す。


「ああ」とジロー。


 砂賊たちの中に、ずば抜けて戦闘力が高い者が居たのは、この水のせいだったのかとジローは納得した。


 道理で、こちらがすぐに制圧されたわけだ。


「でも、この水には中毒性がある」


 エルフィンが続けた。


「私たちはターコートを離れられないの」


「へー」とモッキュ。


 少し悲しそうに小瓶を見つめる。


「そもそもこの水は私たちに取って、とても神聖な物。巫女たちの正式な儀式によってしか汲み出すことは許されない」


 小瓶の液体に向けられたエルフィンの眼差しには、確かに敬意がこもっていた。


「それなのにガシュラは」


 エルフィンの顔が怒りに歪んだ。


「私たちを皆殺しにして、この水を奪い、新しい人体強化薬を造ろうとしているの」


「ええ!?」


 モッキュが怯える。


「悪党が考えそうなことだ」


 ジローの右の口角がグッと上がる。


 シニカルなスマイル。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ