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 エルフィンがそう言って、台の側に立つ砂賊の男に左手を振った。


 男が頷き、両手に持つタブレットから巨大なホログラムを空中に映し出す。


 部隊が首都ファンドリアを出発する際に、傭兵たちに顔見せした正規軍の指揮官の映像だった。


 打ちひしがれ、薄汚れた様子から先ほど洞窟の奥へと連行された後だと分かる。


 砂賊が傭兵たちをただただ放置していたのは、この指揮官の尋問を優先したからか?


 後ろ手に拘束され、椅子に座った指揮官の前にエルフィンが現れた。


「お前はメルドラの部下か?」


 エルフィンが訊いた。


 指揮官は答えない。


「ムラサキサソリに刺されたら、解毒剤を射たないと7日間苦しみ抜いて死ぬのは知ってるだろう?」


 エルフィンの言葉で指揮官の顔に怯えが走った。


「お前はメルドラの部下か?」


 エルフィンが再び訊く。


 指揮官は首を横に振った。


「お前は誰の部下だ?」


「ガ…ガシュラ殿下だ…」


 一瞬の躊躇(ちゅうちょ)の後、指揮官が言った。


「ガシュラはお前にどんな指示をした?」


「………」


「地獄の苦しみも恐れはしないか。ガシュラは良い部下を持ったな」


 エルフィンが後ろを向く。


「サソリを持ってこい!」


「ま、待ってくれ!」


 指揮官が叫ぶ。


 エルフィンが振り返った。


「話せ」


「さ、砂賊と傭兵を戦わせる…」


「それだけ?」


「両方が弱ったところで、正規軍が攻撃して皆殺しにする。それを砂賊の仕業に見せかける」


 ホログラムを見つめる傭兵たちがざわついた。


 ジローも眉をしかめる。


 どうやら重大な契約違反が発生したようだ。


 正規軍が裏切っていた。


 そこでホログラムが消えた。


「君たちは、もう少しで王家の権力争いの犠牲になるところだった」


 エルフィンが拡声器で傭兵たちに呼びかける。


「それを我々が救ったわけだ」


 ざわついていた傭兵たちの注目がエルフィンへと戻っていく。


「ここで提案だが」


 エルフィンが傭兵たちを見回す。


「我々は君たちを雇いたい」


「俺たちに裏切れというのか!?」


 ジローたちの後ろから傭兵の声。


「裏切るも何も」


 エルフィンが笑う。


「ガシュラはすでに君たちを裏切っている。そんな相手に義理立てする必要があるとでも?」


 傭兵たちは静まり返った。


「金は払ってくれるのか!?」


 最初の男とは違う傭兵のガラガラ声。


 エルフィンは左手の指を2本立て、高々と挙げた。


「報酬は王家の2倍出そう!」


 これには傭兵たちが色めき立つ。


 直前まで「まったく、ツイてないぜ」と仏頂面(ぶっちょうづら)だった顔が、ある者は素直に喜び、ある者は儲けを計算し思案顔に、ある者は「いやいや怪しいぞ」と疑いの表情を浮かべる。


 反応は様々だった。


「我々に雇われるなら、取り上げた武器は返し宿舎に案内する! どうしても王家に味方したいなら、残念だがこの戦いが終わるまでは捕虜扱いとさせてもらう!」


 そう告げると、エルフィンは台から下に降りた。


 タブレットを持つ砂賊が「雇われたい方はこちらへ!!」と大声で両手を振る。


 その背後に傭兵たちから没収した武器を積んだ車両が移動してきた。


 早々と砂賊に(くみ)すると決めた者たちが、その前に並び始める。


「ジロー」


 モッキュがジローを見上げた。


「ややこしいことになったな」


 ジローが腕組みする。


 突然の流れに戸惑い、どうするべきか決めかねていた。











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