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「ジロー」


 モッキュが不安そうに呼ぶ。


 ジローは右手に持った大口径ハンドガンを腰のホルスターに納め、モッキュの頭を撫でた。


「大丈夫」とジロー。


「モッキュは絶対に俺が守る」


「うん」


 モッキュが笑顔で頷く。


 ジローの右脚にギュッと抱きついた。




 砂賊は傭兵たちを武装解除すると、戦闘で破壊されなかったトラックに乗るよう指示した。


 少数の見張りの砂賊も乗り込み、トラックを発進させる。


 それは明らかに(あらかじ)め決められていたスムーズで無駄のない動きだった。


 トラックに乗る前にジローが観察したところでは、戦闘時間が短かったため、ほとんどの傭兵はろくに戦わず捕まっている。


 正規兵はさすがに傭兵よりも抵抗した者が多かったのか、数が3割ほど減っているようだ。


 印象的だったのは武器を取り上げられる際、砂賊たちが持ち主も同時にスキャンし、データ登録したことだ。


 誰の武器かを後で分かるようにするためか?


 何のために?


 ジローは首を傾げた。


 この襲撃は不可解な点がある。


 傭兵たちの中にはジローが今までの仕事で出逢った者も何人か居た。


 身体をサイボーグ化したり、銃以外の武器を隠し持つ者もちらほら見える。


 しかし彼らは無理に抵抗せず、大人しく様子を窺っているようだ。


 どう行動するのが一番得かを冷静に見極めているのだろう。


 ジローもいざとなれば、ブレスレットに仕込まれた増強剤を使用し、ハイブリッドソルジャーの切り札「ブーストON」を発動するつもりだ。


 モッキュと2人で逃走できれば、それで良い。


 命あっての物種(ものだね)だ。


 トラックは20分ほど走り続けた。


 ふた手に分かれていた、もうひとつの部隊も砂賊の奇襲の連絡は受けたはず。


 しかし、敵が現れた際に挟み撃ちする策のため、離れた場所に陣取っていたのが(あだ)になった。


 おそらく、別部隊はすぐに襲撃現場へと移動しただろうが、着いた頃には砂賊はもう居ない。


 こちらは完全に出し抜かれている。


 トラックが止まった。


 扉が開く。


 いっしょに乗っていた砂賊の見張りが、傭兵たちに銃を向ける。


「降りろ」


 砂賊の言葉に傭兵たちは順番に外へと降りていく。


 ジローとモッキュも、その列に続いた。


 薄暗い洞窟の中に出た。


 砂賊の攻撃車両と奪われたこちらの車両全てを停車できる規模の、広々とした空間だ。


 砂賊の隠れ家のひとつか?


 トラックから降りた傭兵たちは洞窟の中央に集められた。


 正規軍は奥へと連行されていく。


 集められた傭兵たちの周りを武装した砂賊が取り囲む。


 砂賊の数は、おおよそ200ほどか。


 7倍近い敵に勝利したことになる。


 洞窟の岩肌に座らされ、1時間が過ぎる。


 そろそろ傭兵たちも焦れ、イライラし始めたところで、前方に設置された大きな台の上に1人の砂賊が立った。


「私は王家が『砂賊』と呼ぶエズモの族長エルフィン」


 戦闘服の上から砂色の布を羽織った、族長と名乗る砂賊は16、7歳ほどに見える少女だった。


 額に上げたゴーグル。


 燃えるような赤色の瞳同様、真っ赤な髪が胸の辺りまで伸びている。


 切れ長の両眼。


 しっかりとした鼻。


 厚めの唇。


 意思の強さを感じさせるエキゾチックで整った顔立ちだ。


 175㎝を越える長身。


 細身だが鍛え上げられた戦士の肉体が、戦闘服越しにも見てとれる。


 少女は右手に持った小型拡声器を口に当て、再び話し始めた。


「君たちにはまず、これを見て欲しい」






 




 

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