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 50人の兵士を乗せた軍用トラックの車内、ジローとモッキュは並んでシートに座っていた。


 閉ざされた空間を天井に設置されたライトの弱々しい光が照らす。


 各々、自前の装備を身に着けた傭兵たちは、ある者は静かに眼を閉じ、ある者はペチャクチャと喋り、思い思いの時間を過ごしていた。


 総勢2000人の彼らは、まずは半分ずつに分けられた。


 そして500人の正規兵と合流。


 1500人の部隊が、2つ編成された。


 2つの部隊はふた手に分かれ、王宮があるファンドリアから離れた、砂賊たちの拠点のひとつと(もく)される洞窟へと、2個の太陽に炙られつつ砂丘を爆走していた。


 まずはジローとモッキュが編入された部隊が拠点を攻撃。


 もし敵が現れたなら、ぐるりと回り込んだもう一隊が挟み撃ちする作戦である。


 ジローは手首に着けたブレスレットで時間を確認した。


 順当に進んでいれば、後10分ほどで作戦開始地点に到着するはず。


 ブレスレットから外した視線が、隣のモッキュと合う。


 モッキュがニコッと笑った。


 すごく、かわいい。


 ジローも笑顔で返そうとした、その瞬間。


 爆発音と共に激しい衝撃が車内の傭兵たちを襲った。


 全員の身体が浮き上がり、壁や床に叩きつけられる。


 ジローは束の間、混乱したが、すぐさま倒れた身体を起こした。


 怪我はない。


「大丈夫か、モッキュ!?」


 隣のモッキュに声をかける。


「うん! 大丈夫! ジローは!?」


 思いの外、力強い返事。


 ジローもモッキュに頷いて見せた。


 周りを見回す。


 軍用トラックは横転している。


 ジローとモッキュと同じく、ショックから立ち直った傭兵たちがひしめく中、ターコート正規軍から支給された通信機が、けたたましく鳴り響いた。


「敵襲! 敵襲!」


 すでに傭兵たちは戦闘モードだ。


 横転したトラックの扉のロックが勢い良く開放され、すさまじい雄叫びと共に皆が車外に飛び出していく。


 ジローとモッキュも雪崩れうつ人波に混ざり、砂漠に降り立った。


 周囲はすでに激しい戦闘状態だ。


 30台の軍用トラックは何台か横転し、他の車両は停止している。


 味方の戦闘車両や支援用軽車両が四方からの攻撃へ散発的に反撃はするものの、砂漠色の独特な戦闘服に身を包んだ敵によって次々と撃破されてしまう。


「砂賊だ!」


 ジローの通信機から男の叫び声が聞こえた。


 ジローが舌打ちする。


 これが砂賊による奇襲なら、こちらは完全に裏をかかれている。


 ジローは四方から攻撃してくる砂賊を観察した。


 ハイブリッドソルジャーの自分ほどではないが、並みの傭兵は遥かにしのぐ強さだ。


 このままだと、そう時間はかからずにこちらは全滅するだろう。


「王家正規軍の指揮官はこちらが捕らえた!」


 通信機から、再び声がした。


 今度は若い女の声。


 どうやら砂賊が正規兵の通信機を奪ったようだ。


 これは戦況の決定打となる。


 指揮官を失えば、士気はガタ落ちだ。


 正規兵の誰かが指揮を引き継げば問題はないが、それが上手くいかなければ…。


「そちらの指揮官を捕らえた! 降伏せよ! 君たちの生命は保証する! 特に傭兵諸君、今すぐ降伏したまえ! 君たちに王家のために死ぬ義理はないはずだ! もう一度言う! (ただ)ちに降伏せよ!」


 この勧告は効いた。


 傭兵たちは次々と銃を下ろし、降伏の意を示す。


 戦いは始まったと思ったら、あっという間に終わってしまった。




 



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