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 宮殿の廊下をラヴィは進む。


 向かうはメルドラの部屋。


 この1ヶ月、本当に大変だった。


 そう、メルドラが砂賊討伐を宣言したあの日からの1ヶ月だ。


 まず速攻でガシュラの部屋に呼び出され、大目玉をくらった。


「何故、メルドラの動きを報告しない!?」


 そんなの分かるわけねえだろ!!


 兄弟のお前でも分かんねえのに!!


 喉まで上った言葉をラヴィがギリギリで飲み込む。


 ラヴィはすぐさま平伏し、許しを乞うた。


 怖すぎてガシュラの顔は見れない。


 私、終わった?


 てか、一族終わった?


「だが、まあ結果は悪くない」


 ガシュラの声の調子が変わった。


 これは上機嫌な声では?


 ラヴィが恐る恐る顔を上げる。


 ガシュラは「ふふん」と笑っていた。


「これでメルドラを潰せる。カサンドラも牽制できるだろう」


 ガシュラの真っ赤な瞳がラヴィをねめつける。


「作戦はメルドラに考えさせろ。あいつには敗けたときの責任を取らせる。万が一、勝てば砂賊は居なくなる。どちらに転んでも損はない」


 汚ねーなー。


 美味しいとこ取りかよ。


 ラヴィは心の中で(つば)を吐いた。


「ただ、メルドラが集めた傭兵でこちらに牙を剥くやもしれん。おかしな動きをさせぬよう、我が軍の兵を1000、傭兵たちに合流させる。まあ、あいつが母親と妹を見捨てるとは思えぬがな」


 ラヴィは計算した。


 王家の兵は総数10000。


 そのうち1000を無くしたとしても、大勢に影響はない。


 メルドラの集めた傭兵は2000。


 たとえガシュラに楯突いたとしても、メルドラ側に勝ち目はない。


 これは詰んだな。


 ラヴィは思った。


 終わったのは私の一族じゃなく、メルドラ王子だ。


 ガシュラは再び、ラヴィにメルドラをしっかりと見張るよう、きつく釘を刺し、ようやく解放した。


 さあ、気を引き締めないと。


 かわいそうなボンクラ王子が全ての力を奪われるまで、きっちりと見届けなければ。


 先に挨拶を済ませておこう。


 さようなら、メルドラ王子。


 ラヴィはメルドラの部屋の前に着いた。


 重厚な飾りが付いたドアをノックする。


「王子ー」


「入ってます!」


 知ってるよ!!


「入りますよ!」


「ラヴィ~?」


 もう3年もお側付きだよ!!


 いいかげんに覚えろよ!!


 ラヴィは部屋に入った。


 またも、窓の出っ張りにメルドラが座っている。


 眼を細め、外から聴こえる笛の音に耳を傾けているようだ。


 この曲、初めて聴く曲だな。


 最近、新しい曲ばかり聞こえてくる。


 (ちまた)で流行っているのだろうか?


「メルドラ王子!」


 少年がこちらをハッと見る。


 いやいや、さっき話したじゃん!!


 何で毎回、驚くの!?


「誰!?」


 そこから!?


「ラヴィです、メルドラ王子」


「ああ!」


 もう知らん。


「傭兵たちの登録手続きと編成は順調です。明日には完了します」


 ラヴィの報告をメルドラは神妙な顔で聞いている。


 ように見える。




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