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「でも、今の人はミアちゃんのお姉さんでしょ?」


 この大広間で、ほんの5分ほど前に出逢った新米傭兵のミア。


 ジローより少し歳下の少女である。


 どノーマルのコンバットスーツにピンクのヘルメット。


 ヘルメットにはホログラムのアニメキャラステッカーを貼り付けていた。


 これまた、どノーマルなハンドガンを右太もものホルスターに納めた様子からも、ビギナー感が満載だ。


「うーん」


 今度はジローが唸った。


「見た目も全然、違うよね?」とモッキュ。


「た、確かに…でも、眼がそっくりなんだよなー」


「似てるだけじゃない?」


「そっか…」


 そう言いつつもジローは、まだ納得がいかないようだ。


「あの愛想の悪いニラ女じゃなかったか…」


「ニラじゃなくてレラさんだよ!」


 モッキュが笑う。




「ハックシュンッ!!」


 抜群のプロポーションを持つ、長身の20代前半の女がくしゃみした。


 腰までの艶やかな金髪。


 白い肌と整った顔。


 瞳は深緑だった。


 どノーマルのコンバットスーツに黒のヘルメットを被っている。


 ジローとモッキュとは離れた大広間の反対側。


 傭兵登録の受付の列に並んでいる。


「何? お姉ちゃん、風邪引いた?」


 女の側に立つ少女、先ほどジローとモッキュの話題に上っていたミアが、心配そうに声をかける。


「ミア」


 女がミアを見つめた。


「あたしはサイボーグなのよ。風邪なんか引くわけない」


「だって、くしゃみしたから」


「…そ、そうね…」


 女が不満げに左の口角を上げる。


 女の名はデ・レラ。


 元々はこの惑星ターコートで妹のミアと共に暮らしていた。


 貧村の生活で死にかけたところを宇宙犯罪組織バイパーの幹部マンマ・ハッハに拾われ、組織の一員となった。


 しかし、宇宙一の殺し屋ガツビィ・ブロウウィンとその孫娘チャツネとの戦いに敗れ、あろうことか義理の母マンマに見捨てられる。


 それどころかマンマはレラへの怒りの()け口を罪なきミアに向け、無惨に殺害した。


 マンマへの激しい復讐心を抱いたレラは、奇人の天才科学者メフィストによって…。


「ああー!!」


 ミアが大声を出した。


「何よ!」とレラ。


「メフィストさんがお姉ちゃんの噂をしてるのかな? メフィストさん、お姉ちゃんがめちゃくちゃ好きだから」


 メフィストの名を聞いたレラは、苦虫を噛み潰したような顔になる。


 しかしそれでいて、顔はほんのり赤い。


「メフィストの話はしないで!!」


 レラがそっぽを向く。


「もういい加減、素直になったら?」


 ミアが呆れる。


「お姉ちゃんも逢いたくて仕方ないでしょ?」


 レラは無言だ。


「はあ」


 ミアがため息をつき、肩をすくめた。


「3ヶ月に1回はメンテナンスした方が良いって、メフィストさんも言ってたよね。そろそろ身体がメフィストさんを求めてるんじゃないの?」


「ミア!!」


 レラが振り返り、怒った。


「変な言い方しない!!」


「はーい」


 ミアがペロッと舌を出す。


 この姉妹の容姿が全く似ていないのは何故か?


 それはメフィストによって瀕死の重症からサイボーグに生まれ変わったレラが、自らの身体を変幻自在に変えられるからである。


 マンマ・ハッハとその一味を皆殺しにしたレラは、バイパーの高額賞金首に指定されていた。


 シンプルな命令。


「デ・レラを捕まえるか殺せ」である。


 そのためレラは、本来の自分とは違う姿で今回の傭兵募集にやって来たのだった。


「そんなことより、ミア」


 レラが言った。


 話題を変えたいようだ。





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