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5ー歴史はいつでも正しいわけでは無い。たまには敵の目線からも見てみよう。



Level:5 Contract of devil and creature



ユグです。一応簡易精霊を送り出して、転移(テレポート)させることに成功しました。

うまくいくか、心配だったんですけどね。うまく行って良かった…じゃない。ルブラとルクスの様子を確認しなければ。

本当なら簡易精霊の代わりに私が行きたかったんですけど、この卵がもうすぐ孵るみたいなのでここを離れられないんです。本当にイライラします。


…でも、おかしいですね?こんなに静かな遺跡とは…。

しかも、この世界樹(ユグドラシル)の中に遺跡があったこと自体にビックリですよ。しかも、【欠片(シャード)】が封印されていたとは。ですが、一体どの魔神の【欠片(シャード)】でしょうか…?世界樹(ユグドラシル)がエラー反応を出すような魔神が封印されていたとは、信じ難いのですが。


『長い廊下だねー』

『こんなに長かった覚えはないのですが…』

『私もー。もう少しペース速める?』

『そうしましょう』


確かに。さっき、覗き見をしたんですがこんなに廊下が長い記録はありませんでした。もう今頃、最深部に着いててもおかしく無い筈…

まさか、私たちのマスターに干渉している…?でもどうやって…?そんな、魔獣たちを従える魔神なんていなかった筈…?


違う。そんなに目立たなかったけれど、その能力の凶悪さで噂になっていた魔神がいた。

そして、その魔神の二つ名は、【魔獣の王(ビーストロード)】…もし私の勘が当たっているとしたら、ルクスとルブラは眷属だから大丈夫だろうけど、マスターが危ない。

今すぐ、ルブラとルクスに伝えなければ!


ーールクス、ルブラ!!!!ーー


反応がない…聞こえていない?そんな、もう干渉されている?!

っ、タマゴはしょうがない、私が向かわなければ!


そう思って立ち上がった瞬間。


バンッッ!!!


衝撃波が私を襲った…と同時になぜか眠気が私を襲い、私の意識は闇へと落ちてしまった。



・・・



『…?』

『どうしたの?ルクス』

『ううん。誰かが呼んでいた気がしただけ。でも気のせいだったみたい。あ、着いたよ』


ユグが気を失ったと同時に、ルクスたちが最深部へと着く。

それは偶然ではなく、魔神があえて行ったものだとは説明しなくてもわかるだろう。

何故か?それは、世界樹に情報が渡らないようにするため。渡ってしまったら世界中に広まってしまうどころか、この世界に顕現することさえも難しくなってくる。魔神たちがこの世界に現れるのなら、なるべくその存在を知るものが少ない方が良いからだ。

世界樹からの情報は神々に直接繋がってしまう。すでに魔神の一番強い眷属が復活しているという情報は広がっているだろう。

何人かの人間にも見られてしまったから余計だ。


ーーよく来たな、歓迎しようーー


ルクスたちに忌々しい声が響く。耳を覆ってもどうせ頭の中に直接聞こえるなら無視した方が時間の無駄にならない、と思ったらしい。

ふよふよ浮きながら嗤う魔神を無視し、彼女らはマスター(終焉竜)の無事を確認しようとするが。


ーーまあ待て。少しだけ、話をしようではないかーー


そう誘われても、すでに警戒している彼女らが話をするわけない。

だがそんなことを言われなくても分かっている魔神ーーーアスタロトーーーは、嗤いながら指を鳴らす。


パチンッ!


『…?』

『…何をしたいの…?』


何も起きないことに疑問を持ち、首を傾げるルブラ。

アスタロト以外誰もいなかった空間に、禍々しい魔力の塊が現れる。それは、空間に満ちていた魔力を吸い込み、肥大化していく。

そして、その塊が空間に収まらないぐらいの大きさになった瞬間、それは()()した。


『?!!!!』

『っ、お前、何をした…!!!!』


その魔力の塊があったところには、毒々しい色を放つ刻印を持つ、彼らのマスターが立っていた。

だが、ルブラとルクスを見て反応をしないところを見ると、何かが起きたのだろう。それはまだ思考が幼いルクスにも理解できた。

簡易精霊でさえ、怒りを隠せずにアスタロトを睨んでいた。

だが、彼らの反応をしたのを見て、笑いが堪えきれなくなったアスタロトは馬鹿にするように笑い出した。


ーーどうだ?!すごいだろう?私の固有能力(ユニークスキル)だ!!!全ての魔物は私の支配下に置かれる!この能力を使ったおかげで神々のほとんどを滅ぼせたのさ!!!ーー


固有能力(ユニークスキル)?でもこんなの、聞いたことない…本当に魔神?偽物?悪い役の神様?』

『魔神って神々に滅ぼされたんじゃ?神々が圧勝したって聞いたと思う』


ーー…え?ーー


『え?違うの?』

『ええ??』


ーーちょっと待て。お前たちは、大崩壊(アポカリプス)の時に、存在していたのか?知らないはずがないーー


『『大崩壊(アポカリプス)?』』


気まずい沈黙が彼らを包む…がアスタロトが少しまだ混乱した様子を見せながらもすぐに復活する。

ルクスはあれ?言っちゃダメだった?と不安そうな表情を浮かべていて、ルブラはできるだけ本当かもしれない知識を頭に詰め込もうとしている。

だがそんなことに混乱しているアスタロトが気付くはずがなく、虚偽の歴史を直すために説明を始める。

…が、少し長いので、ルブラに理解でき、信頼できると思われた部分だけ述べる。





数千年前。天空で世界を管理していた神々に魔神が世界を支配すべく、戦いを挑んだ。これが後に大崩壊(アポカリプス)と呼ばれる、世界を巻き込んだ、世界の管理者、神々と世界を支配しようとした魔神の戦い。

魔神たちは神々が世界を支配していることが気に入らなく、どうしたら神々を壊滅させ世界を支配できるかを考え、思い浮かんだのがこれだった。

そのために、魔神は堕ちた人間や世界に何万と存在していた魔物たちを支配し、神々や神々の下僕(勇者)を壊滅へと追いやった。

この時に活躍した魔神が、【魔獣の王(ビーストロード)】と呼ばれる、アスタロトだ。

だが、魔神たちが世界を簡単に支配できるわけがなく。

神々の中でも世界の管理を主にしていた神々が、ついに神々の敗北で終わるかと思われていた戦場に現れた。

その降臨の力は強く、力が回復した勇者たちが再び攻撃を始め、しかも命の神フィリアと龍帝神ラガルスに創られた5柱の竜帝たちによって、戦況は大きく覆された。

だが、それでも神々はなかなか勝てなかった。

その大きな理由が、魔神たちが珍しく力を合わせて放った技に、竜帝の1柱が当たり、地上へと堕ちてしまったことだ。()()()()()()()竜帝の名前は、煌冥帝エル・フリギリア。

名前の通り、光と闇の力を持つ竜帝だった。だが、フリギリアは堕ちた時に魔神の1柱、【魅惑の女神(フォールンゴッデス)】に魅了されてしまい、魔神の眷属となってしまった。【魅惑の女神(フォールンゴッデス)】と【魔獣の王(ビーストロード)】が力を合わせフリギリアを神の眷属から、魔物に変えてしまった。

だが、その膨大な力は余ってしまい、フリギリアから竜の魔物と、魔物ではない何か(人間)が生まれた。

その魔物ではない何かはどこかに廃棄され、完全な魔物となってしまったフリギリアは【魔獣の王(ビーストロード)】と共に討たれるまで破壊を止めなかった。

そして、【魔獣の王(ビーストロード)】とフリギリアがいなくなった魔神たちはたちまち破れ、神々に封印されてしまった。

魔神たちが最後の足掻きとして放った魔法。それが世界を抉り、地形変動が起き、人類のほとんどが滅びたため、大崩壊(アポカリプス)と呼ばれるようになった。



『じゃあ、そのフリギリアからできた魔物が、マスター?』


ーー正確には、違う。あの時は廃棄してしまったが、その魔物ではない何か(人間)があって、終焉竜はその魔物になる。しかも忌々しい神の加護によって、器の所持者が変わってしまっているーー


『器?』


アスタロトが面倒くさそうに息を吐く。そんな様子を見て、ルクスが首をかしげる。


『でも、その人間と魔物は違うものだったんでしょ?じゃあ、なんで…?』


ーー何故敵であるお前たちに説明しないといけないのか分からないが、いいだろう。フリギリアから創り出した魔物は不完全だった。私でもギリギリ制御ができるぐらいだったからな。簡単な命令しかこなせないし、本当に面倒だった。単に攻撃力が欲しかったから作っただけなんだがな。その時は気がつかなかったが…フリギリアの余りが無いと、あれは魔物として機能しなかった。偶然かもしれん。だが、あの余りは魔物と一心同体。だからどちらかが手に入れば、もう片方も自動的に手に入るーー


『…ということは、マスターを解放しないともう片方も暴走して、大崩壊(アポカリプス)と同じことが…?』

『!!!マスターは、あげない!』


アスタロトの説明を聞き、即座に攻撃体制を取るルブラとルクス。その様子を見てアスタロトは魔術を展開しようとするが、あることに気がつくと興味がなさそうに辺りを見回す。ルブラが警戒しながら見ていることに気がつくと、アスタロトは大きい声で嗤う。


ーー運が良かったな。ここからは私の干渉が届かないらしい。奴を自ら見つけなければならないわけだ。これは今持っていても邪魔だから、返してやろうーー


ぽいっ、とボールのように再び魔力の塊に変わった終焉竜を投げるアスタロト、とそれを慌ててキャッチするルブラ。

アスタロトは少し微笑むと、指をパチン、と鳴らし転移してしまった。


『消えた…?』

『…戻ろう?ルブラ。ユグが心配してると思う』

『そう、ね。精霊さん、お願いできる?』


こくり、と簡易精霊が頷くと、白い光が彼らを包み、その次の瞬間には消えていた。


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