4ー精霊だって強くなりたい。魔神?仲間に任せます。
Level:4 Demon lord's minions
ま…魔神?
何だそれ…ってこの間ユグがちらっと言ってたような?
この光の塊が、魔神?
ーーくは、お前はいつでも面白いな、終焉の竜よーー
は?何言ってるんだこいつ?
俺はえっと、この魔神、アスタロト?を知っているのか…?
でも俺にはそんな記憶はないし…て言うか、封印から解放されるちょっと前からしかないんだけど。
ーーほう。記憶がない…まあ、我の眷属であると言うことには、変わりはないが。ーー
眷属?ああ、さっき主とか言ってたよな。
でも、眷属って何だ?ルクスとかルブラみたいなもんだろうけど…
イマイチ、スキルとか使ってるけど分かんないんだよな。
ーー…それさえも知らない?ふむ、何かが起きたと考えるのが妥当か。それくらい、普通の魔物でも知ってると言うのに…ーー
そんなこと言われても…てか、何で俺はお前と会話ができてるんだ?念話は、仲間…とか眷属としかできないはずだけど。
ーーほう。ではお前も眷属を持っているのだな?では簡単だ。眷属は自らの奴隷の様なもの。自らに全てを捧げ、力を尽くす魔物たちのようなものだ。勿論、全ての眷属が主に忠誠心を持つ訳ではない。お前のようにな。ーー
まて…お前は、俺の主だと言うのか?!
でも俺はお前のことを知らないし…
それより、この光の塊が俺の主だとか言われても納得できない。すごい弱そうに見えるし。
ーーああ、そうか、このままだったな…では我の本当の姿を見せてあげよう。ふんっ!ーー
っっ?!
バンッッッ!!!!
光が眩しい!何も見えないじゃないか!
「…どうだ。これで納得できるか?」
?!
光が消えたのを確認して目を開けると、目の前には美少女が立っていた。サラサラの金色の髪に血がかけられたように真っ赤なツノらしきもの。そして堕天使を思わせる、半壊している翼。濃い紫をメインとした、防具。禍々しい魔力を放つ、鎌らしきもの。
そして…俺たちとは比べ物にならない程の、膨大な魔力。
これが…さっきの光だと言うのか?!!めちゃくちゃ見た目からも強そうなんだけど?チートだ!!!
「チート…?まあいい。さあ、改めて名乗ろうか。私は、『魔獣の王』とも呼ばれる魔神、アスタロト…お前を取り返しに来た。」
取り返しに…?まるで俺がこいつの物みたいな言い方だな。
気に入らないな…俺は物じゃないし、今のままが気に入ってるんだ、抵抗させてもらう!
『グルルルゥッ!!!!』
・・・
『ねえねえ、どうしよう?!マスターと離れちゃったよ?!』
『うー、私としたことが…!』
ルクスが落ち着かない様子で森の中を飛び回る。
普段ならルクスを止めるだろうルブラも、そんな様子のルクスにも気付かないようでずっとルクスの影に篭って考え込んでいる。
彼らが転移された場所は、きっと世界樹の中なのだろうが、全く見たことのない場所。あの太陽が優しく照らしていた草原から一転、一切光が届かない、闇に閉ざされた樹海。
もちろん、世界樹の中だからといって魔物がいないわけではない。今だって2匹を狙っている魔物はいるはず。
だが、彼らから放たれる殺気に似たようなものに威圧され、逃げ出すものが殆どだ。
『また、あそこに戻れるかな?!マスターが心配だよ…』
『それはわかってる。でも位置感覚が狂っちゃって…』
『どうしよう…???』
ーー心配はいりません。私があなたがたを転移させますーー
『『!!』』
ルブラが何もアイディアが浮かばないことに焦りを感じていたその時、ユグから突然念話が届けられる。
その言葉はルブラとルクスを落ち着かせ、冷静な判断ができるようにするほどの威力だった。
本当のことを言えば、ユグも焦っていたのだ。なぜなら、自らの領域の中で魔神と魔神の眷属が接触すると、彼女の存在がその余波で揺らいでしまうからだ。
それに、新たな力を授けてくれた主を失うことも危惧していた、もあるだろう。彼女だって魔物のような物。存在が少し違うから、魔物の本能の一つである、「強くなりたい」と言う思いが消えるわけじゃない。
ーー私の分身を今送ります。それと一緒に転移して、主の元に向かってくださいーー
『ああ。わかった…ありがとう』
『マスターのことが心配なんだ!ユグも!だから助けてくれるんだね?』
ーー!!!ち、違います!!えと…さ、さっさと行ってきてください!ーー
『はーい!じゃあね!頑張るねー!』
『……絶対そうね…』
ぽんっ!
ユグが誤魔化すように念話を終えるとすぐに、簡易精霊がルブラの横に現れる。
ルブラはそれを確認してルクスの影に入ると、簡易精霊が魔法陣を作成し、彼女たちのマスターの元へと転移した。
だが彼女たちは気付いていなかった。彼女たちのマスターに迫っていた危険に。
・・・