3ーこんにちは、勇者たち。そしてさようなら、ありがとう。
Level:3 First battle
ボス部屋からは俺は出れないから、ルクスを偵察に送った。
本当はルブラの方が向いているんだけど、ルブラは俺の影から出てこない。
影は平面だから、引っ張り出せないしね。
『グルルルゥ?』
『…』
声をかけてみたけど、反応がないな。
気配がするから、影の中に隠れてるんだろうけど…。
『キュオオオッ!』
ん?ルクスが慌てて帰ってきたな。おかえり。
『キュオオオン!!!』
それどころじゃない?ふむ…ああ。勇者たちが来てるのか。
随分と時間がかかったんだな。瘴気が強すぎるのか?
さっき見つけたんだが、俺は迷宮主だから、ボス部屋からでれない代わりに、ダンジョンで何が起きているかをこの半透明モニターで見れるんだ。
ふむ…俺が今いるのが40F。勇者たちは38F。もうすぐか。やる気を上げるために咆哮でもしよう。
『グルルルォォォォオオォッ!!!!』
『キュオオオン!』
『シュ?シュウウウウッ!』
おい。今、へ?何?じゃ僕もって反応しただろ。
『シュ?』
誤魔化すな。バレてるんだから、全く…。
まあ良い。よし、気配を感じる…準備は万端。
あ、ドアが開かれた。光が差し込んでくるな…あっちはどれだけ明るいんだろうか?
やっぱり、外の世界は光に溢れているのかな?
「くっ…何だ、この溢れるような瘴気は?!」
「アルバート様、こんなレベルの瘴気はどこにも書いてありませんでしたわ!戻った方がよろしいのでは?」
ふむ。あの勇者(?)はアルバートというのか。
ルクスが飛んで来て肩に留まる。おい、ルクスお前、緊張感とかないのか?
『キュウッ?』
ですよね。
「くっ…せめて、あの鳥だけでも!勇気の光を纏う剣、今ここに勝利の光筋を!【勝利をもたらす光剣】!」
「いけませんわ、アルバート様!あの鳥は、雷天鳥。雷はもちろん、光でさえ支配すると言われているのですよ?!」
お、よく知ってるな。さすがだ。
「マリア、文句言わないの!怪我したらあんたが回復してやれば良いじゃん!」
「エルフィ、あなたが補助したって威力が足りません!」
「ルーク、結界張れないの?!」
「無理だ、ここには結界が張れないように魔術がすでに発動している」
「えーーーーー?!」
絶賛仲間割れ中かな?
ルクスがピリピリしてるみたい。戦いたくてうずうずしてるんだろうな。
良いよ、ルクス。殺ってしまえば良い。
『キュオオオオオオオオオッ!!!!!!』
ルクスが鳴く。すると、天井があるこの部屋に、雷雲が現れた。【天候調整】の効果か、一発キルを狙ってるのかな?
おっ、結構本気だね?すごい雲がゴロゴロ言ってるよ。
「くっ?!ぐはっ」
さっき詠唱を終わらせてルクスに放った渾身の一撃も、無駄だったみたい。吹っ飛ばされて壁に激突した。
ルクスがキッとアルバート?だっけ?を睨む。
おいてめえ、何だ今のは?痛くも痒くもないぞ?この野郎、って言いたいんだな。わかるわかる。
「あああ、アルバート様、【攻撃力増加】で、ですぅ!!!」
「これ、大丈夫か?一応。あらゆる魔力を無効化する盾。何も通さぬ神の防御。【絶対防御】」
「ダメだと思います。私も。女神の安らぎの光を全ての者へ。今罪なき者を守る盾となれ。【女神の加護】」
バカか?エルフィ?は。ここで【攻撃力増加】って。なんでだ?
ふむ。マリア、とルークが自分を守るように一回きりの詠唱ありの完全防御を張ったね。あーあ。アルバートとエルフィは死ぬな。せっかくの魔力がもったいない。
『キュウウウウッ…【煌閃光】!!!』
ルクスが肩から空に飛び立つ。すると、雷雲から電気がルクスの周りに集まっていく。
電気の塊が数十個ぐらいルクスの周りに集まると…ほお。ルクスが翼をいきなり広げた。これは、攻撃を出す準備だ。
『キュオオオオオン!!!』
ルクスが鳴いた瞬間、電気の塊が弾けて、雷の蛇のようなものが勇者たちを襲う。この威力、果たして彼らの【絶対防御】でも防げるのか?ちなみに俺たちはルブラの【闇の霧】で衝撃を相殺したから大丈夫。
まだ、煙が立ち上っててまだ良く見えない…あ。何かが砕ける音がした。
ルクスはよくやってくれた。あと以外と、ルブラも足を影で拘束とかしてて、逃げれないようにしてくれてる。
ここまでやってくれたら、あとは俺だな。
初めて使う技だから、どうなるかはわからないけどね。安全の保証もないし。でもいい練習にはなる。
『グルッ…【全てを無に帰す槍】!』
そう吠えた瞬間、頭の上に瘴気を纏った黒色の槍が複数現れる。
その一つを取り、縮こまっている勇者たちに向け、投げる。投げられた槍を追うように他の槍も勇者たちの方へと飛んでいく。ほー、威力は凄そうだな。魔術名もまあまあ厨二っぽいし。
「ぐ…ぐあああああ!!!」
「「きゃああああああああ!!!」」
「うわああああああ!!!」
勇者…アルバートたちが流星みたいに飛んで行った。あ、願い事でもしておこうかな。
うまく扉に衝突してくれたみたいだ…ってことは。
外に出れるかもしれない?
『キュ?』
『シュウッ』
ん?どうしたんだろう?さっきからルクスとルブラの様子がおかしいな。
まあ、いいや。扉はどうなってるんだろうか?