03 古典の授業1
「ねぇ、優君。今日の古典は何をするの?」
私は、訳あって転入という形で高校に入ったので、今どんな授業をしているのか知らない。だから、先生が来るまでに軽く予習をしたいのだ。
「今日からは落窪物語をやりますよ。確か、期末テストの範囲だったはずです。」
良かった。落窪物語なら、全て暗記しているからテストは問題ないだろう。
「その期末テストって、いつから始まるの?」
「来週の水曜日から三日間です。」
「随分と早い期末テストね。」
「それは、ミッションの日程の関係で早くなったんですよ。」
「ミッション?」
何だそれは。初耳だ。学校のパンフレットにも書いてなかったし、父さんも何も言ってなかったぞ。後で、裕斗さんを締め上げようか。理不尽?知るかそんなもの。
「簡単に説明すると、特進科だけの能力テストですね。このミッションは毎回難易度が変わり、期間も変わります。ミッションはチームで挑んでも個人で挑んでも構いません。ですが、成功した順で点数を付けられるので、チームを組んだ方が高得点を狙いやすいです。」
なるほど。特進科は対して普通科と変わらないと思っていたが、これがあるから特進科として分けられていたのか。
「そのチームって、毎回メンバーを変えることは可能?」
「いいえ、不可能です。メンバーの追加は出来ますが変更は出来ません。おそらく、卒業時の成績の為でしょう。この学校は、首席で卒業すると学校がバックアップしてくれますし、チームがトップで卒業しても、首席同様の待遇をチーム全員が受けれますから。」
「確かに、毎回メンバーが変わっては、卒業時の成績は付けにくいものね。」
どうやら、この学校は甘い罠を仕掛けるのが好きらしい。チームを組むということは、個々の能力よりもチームワークが重要になってくる。もし、何らかのトラブルでそれが崩れれば、立て直すのにはかなり時間がかかる。それに、メンバーによっては毎回難易度が変わるミッションをコンプリート出来ない可能性もある。つまり、チームはただ仲がいいだけのメンバーや強いだけのメンバーで組んではダメなのだ。
「晴さんはどうするんですか?」
「そうね、暫くは様子見として一人でやるわ。」
最悪、良いチームが無ければ、卒業まで一人でやろう。弱いチームには興味が無いし、私の能力の無駄遣いをしたくない。
「そうですか。そろそろ、授業が始まりますね。この授業の先生は厳しいので色々と気をつけてくださいね。」
色々?どういう事だ?
まあいいか。授業に集中すればいいだけだしな。
「みんなー。席に付いてるわね?今日は、新しい子が居るから、名乗るわね。私は、六条紫。さあ、今日からは落窪物語よ。今から五分あげるから必要な本を取ってきなさい。」
へー、調べる事が多いと聞いていたが、まさか、古語以外も調べるとは。中々に楽しめそうじゃないか。
私は、郷土料理の本、平安時代の暮らしが事細かに書かれた本、陰陽道の本、平安時代の京都の地図、古語辞典を取って席に戻った。周りからは、そんなに必要か?という目で見られたが気にしていない。寧ろ、少ないくらいだ。
「晴さんって、見かけによらずにかなり力持ちなんですね。」
「ご先祖さまのお陰かもね。」
「タイムアップ!!さあ、席に戻りなさい。授業を始めるわよ。」
周りを見ると、古語辞典だけしか取っていない人の方が多かった。取ってきた本が少ないほど、頭が良いアピールになるとでも思っているのか?その証拠に、チラホラとバカにした目で見てくる人間が居る。バカはどちらなのか、それはこの授業で分かるだろう。