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02 移動教室

どんちゃん騒ぎしていた一限目も終わり、次は二限の古典だ。どうやら、古典は毎回図書室で行うらしい。何でも、調べる回数が多く図書室で行わないと不便だからだと。


「初めての授業が移動教室か。」


「不安か?」


「地図は頭に入ってるから問題ないけど、一緒に図書室に行ってくれる人が居るかが不安かな。」


「何だそれ。仕方ねぇから、俺が一緒に行ってやるよ。」


何だとは何よ。私は、今まで友達と移動教室をした事がないのよ。


「有難いけど、遠慮するわ。」


「何でだよ!?」


何でって言われても、俺様暴君とはあまり仲良くなりたくないもの。


「そりゃあ、翔太みたいな俺様は嫌やからやろ。」


面白そうなモノを見つけたと言わんばかりの顔をしているのは、浅井(ゆい)君。彼も六芒星の紋章なので、武術専攻だ。唯君は中学校まで関西にいたため、関西弁が染み付いている。肩まである色素が薄い茶色の髪をハーフアップにして、目には、赤色のカラーコンタクトを入れている。一見、チャラ男に見えるが、見目がいいせいか緩い雰囲気のせいか分からないが、どことなく品がある。


「黙れよ。狐野郎。てめぇみたいなチャラ男もお断りだろ。」


「赤鬼はんには言われたくないな。」


唯君は、裏で狐。翔太君は裏で赤鬼と言われているらしい。なぜ、そう言われているかと言うと、唯君は狐の様に人を欺き腹の中を探らせないようにしているからで、翔太君は、赤く染めた髪と圧倒的な強さからそう呼ばれている。翔太君は、ツリ目がちの目のため、睨むと更に赤鬼に見える。


「優くん、私と一緒に図書室に行かない?同じ専攻だし、もっと仲良くなりたいからさ。」


終わりそうにない喧嘩には関わりたくないので、私は、前の席にいた細川(ゆう)君に声をかけた。


「僕なんかで良いんですか?明智さんと一緒に行きたい人は沢山居ますよ。」


優君は、藍色の髪とタレ目が特徴のメガネ系男子だ。とっても優しそうな雰囲気をした気弱なイケメン君。私からしたら、守りたくなるタイプの人間に分類される。


「私は、優君が良いな。それに、専攻の事についても聞きたいしさ。」


「明智さんが言うなら、喜んで。答えれる範囲でなら答えますので、何でも聞いてください。」


「ありがとう。」


優君は、立ち上がるとさり気なく私の荷物を持ってくれた。私は、彼の好意を無下にしたくなかったので、そのまま荷物を持ってもらう事にした。


「ねぇねぇ、私達も一緒に言っていい?」


背後から声を掛けられ振り向くと、そこには豊臣(あい)ちゃんと石田(さくら)ちゃんがいた。声を掛けてきた愛ちゃんは、頭の上でツインテールをした茶髪の可愛い女の子。その隣にいる桜ちゃんは、黒髪の姫カットをポニーテールにした可愛い女の子。二人は、中学校の時に仲良くなり、家族より強い絆で結ばれているように見える。二人とも武術専攻だから、その絆は更に強くなりそう。


「もちろん。」


三人と話しながら、廊下を歩いていると背後から物凄いスピードで迫ってくる気配を察知した。


「廊下は走ってはいけませんよ。翔太君、唯君。」


私達の後ろで止まった時に、振り向かずに声をかけた。


「テメェらが置いていくからだろ。」


「一言だけでも声を掛けて欲しかったわ。」


「喧嘩していた二人が悪い。」


桜ちゃんは、冷めた目で二人を一刀両断した。うん、美少女の冷めた目は、かなりキツい。これを直接向けられたら、かなりダメージを受けるだろう。


「皆さん、少し急がないと授業に遅刻してしまいます。」


怯えたように言ったのは、優君だった。そして、その一言を聞いて、他の人達も顔色を悪くした。


「ウソッ……もう、こんな時間じゃん。急がないと。」


「あと三分。走れば余裕で間に合うよ。」


「それもそうだね。」


時計を見るなり、走り出した愛ちゃんと桜ちゃん。


「俺らも走るぞ。」


「元からそのつもりや。」


その二人を見るなり、走り出した翔太君と唯君。四人は、武術専攻なだけあってかなり早い。


「明智さんは走らないんですか?僕は、走るのが苦手なので歩いていきます。」


遠くなった背中を見ながら歩いていると、隣にいた優君が聞いてきた。


「優君が走らないなら、私も、走らないよ。だって、一人だけ置いていけないもの。」


「僕のことは気にしないでください。少し位遅れても問題ありませんから。」


「ねぇ、優君。ここって式神を使っても問題ないよね?」


「はい、大丈夫ですが、校内は校舎に掛けられた術の影響で、式神を使うにも思うように使えないようになっています。」


「ありがとう。」


「あの、式神を使うつもりですか?」


その質問に無言で頷き、制服の内ポケットから人型の紙を取り出した。


「おいで。式神『白狐_透夜』。」


名を唱えると現れた彼は、人型から本来の姿へと形を変えた。


「さぁ、乗って。」


狐の姿になった透夜に乗り、優君に乗るように促す。


「凄い……。」


優君がしっかりと乗ったのを確認し、透夜は走り出した。


「着きました。」


「ご苦労さま。戻っていいわよ。」


流石式神。乗っていた時間は十秒も無かった。これで、遅刻の心配も無くなった。


「やっぱり、明智さんは凄いです。」


「ありがとう。」


さぁ、初めての高校の古典を楽しもうか。


図書室で優君と話してると、追い抜いてきた翔太君に狡いと言われたのは別の話。






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