思い出した日
暖かな日差しが、窓からベッドに差し込んでいる。
目を覚ました私は、涙を流していた。
口ではうまく言い表せない感情が心に渦巻いていて、訳もわからず涙が止まらない。
けれども、ふと周りを見て、自分が今いる場所は馴染みのある私の部屋だという事に気が付いた。
と、同時に、自分が目を覚ましたという事がおかしいという事実にも気付いた。
あれ?私、死んだんじゃなかったの?どうして目を覚ましたの?
実は致命傷を受けたけど、生き残ったとか?
いや、そんなはずはあるわけないか。
断頭台で処刑されたのに生き残れるとは思えないし、それに私の刑罰は死刑なんだから、生き残っていていいとも思えない。
そんなことを思いながら、ふと、自分の手を見ると、、、ん?何か明らかに小さくない?
そういえば、周りの家具をよく見ると、昔捨てたものが混じっている。
ある考えが頭をよぎり、私は急いで鏡台の前へ行き、自分の姿を確かめた。
「え、、、?なんで、、、?」
鏡に映るのは幼い私の姿だ。紫の目に、深海のような暗い紺色の髪。寝ぐせが残る髪は少しはねているが、、、間違いない。
どうやら私は過去に遡ってしまっているらしい!
すぐに自分の机に向かい日記帳を開いてみる。
これには昔からその日起こった出来事や、表に出せなかった自分の思いを書いていたから、見れば何かわかるはず。
そう思い読んでみると、先月10歳の誕生日パーティーをしたことが綴ってあった。
ということは私は今10歳、つまり8年前の世界にいる、ということ?
他にも今の私について何か書いてあることはないかと詳しく日記を読んでみると、
"そういえば、新しくお父様が連れてきた義弟の礼儀作法をバカにしてしまった。
もとは平民だったんだから、義弟の礼儀作法が出来ていないのは当たり前なのに、そこ責めるのは間違いだとわかっていたのに、どうしてそんなことをしてしまったんだろう。"
と、幼い私が書いていたページで手が止まった。
、、、そうだよね。そうだった。私、やっぱり幼い頃から疑問に思ってたんだった。自分の事。
いつも深く考えようとすると、まるで頭の中に霧がかかったようにはっきり考えられなくなって、いや、考える必要はない。
これで、このままで大丈夫だって、なぜか思ってしまっていたんだった。
今ならはっきりわかる。これまでの自分がおかしかったって事。その理由については、わからないけど。
少し考えてみて思った。
もし、この自分がおかしかったと気付け事と、私が過去に遡った事に意味があるのならば、それはもしかするとチャンスなのかもしれない。と。
神様が愚かな私に下さった、人生をやり直すチャンス。
うん、やっぱり考えれば、考えるほど、何だかそう思えてきた。
、、、やり直そう。何もかも。今度こそ誰も傷つけずに生きていこう。
そして、途切れた記憶のその先を生きるために、あの断頭台を回避しよう。
そう私は固く決心し、これからについて考え始めた。




