~プロローグ~
私は今、断頭台の上にいる。
周りから聞こえるのは、私への嘲り。
固定された首は動かせないが、視線だけは動かせる。
上にはどこまでも青く澄んだ空。
ひどく傷ついた空っぽの心にその青さが染みた。
「何か言い残すことは?」
私の命綱を切る人が聞いた。
「空が、、、いえ。」
私が言うべきことはこれではない。
私が言うべき、いや、言わなければならないことは最初から決まっている。
美しい城からこちらを見る、美しい男女に視線を向けた。
「私は、、、私は何も悪くないわ!悪いのはすべてあの卑しい女よ!こんなこと許されるはずがない!呪ってやる!」
言葉を言い終わった瞬間、私を見る人々の目に憎しみの炎が宿るのがわかった。
美しい城からこちらを見る男女の、男の方には人々と同じ憎しみが、女の方には哀れみの色が見てとれた。
かつて愛した人、いや、今でも愛している人からの憎しみの視線はひどく辛く、愛する人を奪った女の、哀れみの視線はとても憎い。
、、、はずでなければならい。それなのに、私は困惑していた。急に私の心に湧いて出てきたなぜ?という疑問に。
なぜ私はあの人を愛し続けたの?もう手遅れだと気づいていたのに。なぜ私は愚かだとわかっていながら愚かな行動をしたの?こんなことは間違っていると知っていたのに。なぜ私はーーーーーー自分が破滅へ向かう道のりを歩んできたの?もっと違う選択をしていれば、私は、まだ生きていて良かったかもしれないのに。
生き続けた先に、幸せがあったかもしれないのに。
今の発言だってそう。なぜ?なぜ私は思ってもないことを言ったの?いや、そういうはずでなければならないから、私は今そう言ったんだっけ。あれ?そういうはずでなければならないって、どうして?
答えの出ない疑問を考える時間は、どうやら私に残されてはいないらしい。
私の命綱が切られる音がした。その瞬間思った。
ああ、最後だけでも、自分の思ったことを、空が綺麗だくらい、言えばよかったーーーー。