不毛の大地に住むある底辺の戦い
やあ、はじめまして。私は黒井という者だ、知っている人は殆ど居ないと思う、恐らく貴方と会うのは初めてだろう?そうじゃないならこんな不毛の地でお互い無事に再会出来て嬉しいよ。
貴方は私と同じ不毛の大地に住む者かな?そうだったら語り合おう、不毛の大地を観光に来た読者なら少しだけ私の長話に付き合ってくれないかな?
私はここにきてから四ヶ月程、この不毛の大地に居る、その中で少しだけこの世界を知った。
ここに投稿する者は、広大ななろうの大部分を占める底辺と言われる不毛の大地で生きている、幸運にも私は様々な人々に支えられ何とか生きる事を許され、しぶとく更新を続けている。
だが、なろうには妖怪が居るらしい、その名も『妖怪ブクマ外し』もしかしたしたら、君も知っているかもしれない、なんとも恐ろしい存在だ。
読む側にとって面白く無い作品をそのままにしておくことはメリットがない、その通りだし評価は素直に受けるべきだと理解して、私も日々をなんとか生きているよ、君もそうだと思う。
頭ではそう思っていても、私達は不毛の地で僅かなブクマを頼りに生きている、ある日突然、何も解らず命綱であるブクマを外され闇に消えて逝った人の噂を聞けば、明日は我が身かもしれないと怯えるのはある意味で正常な事だと思うよ。
私はその脅威を理解して有効な対策はないかと思い、妖怪の習性が書かれている文献を漁り、無残な被害者の遺体の側にあった残された活動報告を読んだりした。
そして、ついに妖怪の習性を知る事が出来たよ。
彼らは積ん読という行動を取る生き物のようだ、そしてブックマークを栞として使っているらしい、飽きたり読む気が失せると簡単にブクマを外し、私達底辺を苦悩に叩き落とす、まさに身勝手極まりなく恐ろしい存在だ。
その恐ろしさは語らなくても分かるだろう?君も知っているはずだ。
なろうに投稿する者達は、ここで生きて行くためには超えなければならない恐ろしい壁がある、ブックマーク100件という絶望の象徴、高く険しい死の頂だ。
数多の底辺がその頂を越えることが叶わず散っていった、越えた先にしか生物が生存できる環境など無いのに、挑戦の途中で妖怪はブクマを外して私達を弄び道を見失わせる。
その気まぐれの結果、深い自己否定で足を踏み外した者が屍を晒しているのをブクマ外しは知らないんだ、いや、例え知っていても自分は全く痛くないから気にしない。
そして多くの妖怪はランキング上位と言う美食で腹を満たし、その味を評価しているんだ。
この事実を知った時、君はこう思うだろう『妖怪死すべし慈悲は無い』とね。
今日もこの不毛の大地の片隅で悲劇が起こっているよ、外されたブクマに気付く悲痛な叫び、なぜ自分が妖怪に襲われたか思い悩む苦しみの声が聞こえるだろう?
私も一時、なろうテンプレ異世界冒険者ギルドへ行って、妖怪の討伐依頼をするべきじゃ無いかと思った時もあった。
だからこそ言いたいんだ、ブクマを外され心が折れた紳士淑女たちに……。
そんな気したってしかたないべさ、アンタだって読者ならブクマ100件以下のペンペン草も生えねような不毛地帯に足踏み入れないべ?だから仕方ないべさ。
最近はブクマ増えて直ぐ減ったらこう思うようにしています『ああ、貴方の中で私の作品は読み終わったんですね』って、万人受けなんて望んで出来るもんじゃありません、だから去る人も居ますって。
そう思えば、わざわざこんな不毛の地まで来てくれた、フロンティアスピリッツに満ち溢れた旅行者に優しくなれます、なろうは殆どの場所に人が居ないんですよ。
これだけではアンチテンプレなお前の所だけだと言われそうですし、数字で語ろうと少しだけ調べました、ブクマ100件の作品は文章的にどれ位のボリュームの作品が多いのか、そしてブクマ100件以下は何割位を占めているのかです。
検証方法は、詳細検索でハイファンタジーにチェックを入れて長期休止を除いただけです、趣旨としては一番層が厚いであろうハイファンタジーにおける、ブクマ100件前後はどれ位の文字数なのかを見るためです。
そうすると11、540作品がヒットしました、今回の検証方法では表示限界2000辺りでブクマ100件前後のようです、底辺の壁と言われているだけあって、思った通りの結果にびっくりしました。
ここを見る限りですがよっぽど初動がいい作品じゃないと、ブクマ100件は10万文字前後でやっと可能性が見えてくる、遅ければ50万以上でどうにか届く様です。
今回の結果更に分かった事は、なろうは半分どころか八割以上不毛の大地のようです、ここまで上位という都会にしか人が居ないとなると、新規の読者さんに会う事は至難であると言えるでしょう。
読者の方の多くは10万以下ブクマ100件以下は面白く無いんだろう読む気が起きない、だからブクマが多く評価高い作品を好んで読むのだと思います。
ですが、本当にそうでしょうか?
そこまで劇的な差があるのかを確認するために、似たような設定のテンプレ異世界チートでブクマ1000件の作品と100件の作品を読み比較しましたが、私はそこまで大きな差を感じる事はありませんでした。
少なくとも10倍面白いかと言われると首を傾げます、殆ど運やタイミングの要素ではないか思います。
ですが、逆に下を見ればブクマ10件と100件では大きな差があります、似たような話でも文法も酷く、話の内容も良く分からない読んでいて目が滑る話が多いのも事実です。
我々が苦しんでいるブクマ100件の壁は、作者側と読者側の見識の違いなのだと思います、チート小説が溢れかえっているなろうには、冷たい現実が厳然と立ちはだかっているのです。
その皮肉の効いた現状、上位の作品と引き立て役の底辺、まさになろう自体が大きなチート作品のようで、さしずめ私のようなアンチチートは噛ませか序盤に殺される嫌な冒険者のポジションでしょうか?
日々なろうでは誰かがそっとエターを晒す優しくない物語が、楽しいチートを探す読者とそれに選ばれなかった作者達の中で、まるで群像劇のように繰り広げられているのです。
10万文字をきちんと書ける人って意外と少ないのでしょう、そして沢山の人に見られると思ってここに来たのに殆どブクマも貰えず感想もなくレビューも無いまま、誰にも期待されずに無人の荒野を50万文字まで書き続けるなんてはっきり言ってしまえば荒行です。
感想で酷い事を言われた?そんなの目の前で精一杯声を張り上げても見てもらえない不孝よりよっぽどマシです、目の前に100万人居るはずなのに誰も自分を見てくれないんですから、学校のクラスで全員に無視されて苦しいことの何百倍、何千倍辛いと思います。
これがなろう底辺が孤独を感じる悲しい現実です、なろうは底辺作者の蟲毒でもあるのです。
もし、貴方が本気でこの不毛の大地を抜け、なろうの中心の都会部へ行きたいのであれば10万書いて最低限の量を確保する事が先決です、そこでやっと整理券が貰えます、運が良ければ早い内に脱出に出来るでしょう。
そこで駄目なら50万書けば少しだけ目立つようになり、不毛の地を脱出する事が出来る可能性が多くなります、そこでやっと抜けれたのなら荒行を諦めずに頑張った結果です。
自分を誇って下さい、貴方は多くのなろう作者の屍を超え、致死率八割の絶望の壁を越えた勇者です。
これがなろうの検索システムの現実です、報われないと貴方が伸び悩み苦しむのは理解出来ます。
でも殆どの人は都会にいるんです、不毛の大地では自分はここにいると文字を積み重ねるしか無い、そして、時々来る旅人に気付いてもらうしか無いんです。
我々は遭難者で、稀に来る飛行機に必死で狼煙を上げるような存在です、救援物資であるブクマや評価、感想レビューを投下してもらって命を繋いでいます。
だから妖怪に一喜一憂している暇があったら文字を積み上げ、質を上げる努力する方が精神的に楽だと思います。
方向性が分からない努力は確かに辛いです、それでも自分の感性を信じて書くしか無いと私は考えます、その苦しみから逃げるために安易に人の真似をするのは、私は文章が濁って余計辛くなると感じました。
勿論、人の文章の良い所を自分の表現に取り入れるもの大事でしょう、ですが、貴方の書きたいものがそれで表現できるのか、自分のスタイルに合っているかも大事だと思います。
あくまでなろうエンジョイ勢である私の意見は、なろうで作家デビューを狙うようなガチ勢の方からは邪道だと、感想や評価を受けつけない主義の方からは甘えだとお叱りを受けるかもしれません、ですが敢えて言わせて下さい。
ブクマやポイントみたいな水物よりも、感想やレビューをもらえる方がいい読者さんが居る証拠です。
多くの人が言うように、そちらを書く方が多くの労力を使い、より真剣に作品を見てくれている貴方の物語を支えてくれる同士だからです。
読者さんに言いたいのは、殆ど全てのなろう作者は不毛の大地で生きています、でも感想があれば多くの作者は不毛の大地で何とか生きていけます、一言でも拙くてもいいです、貴方の言葉を聞かせて下さい。
『自分の人生の中で、これほど誰かの言葉を焦がれる思いで待ち望む日が来ると思っていなかった』
そう思った時が私にも確かにありました、幸運にも感想やレビューを頂くことが出来、不毛の大地でも折れずに曲がらずに作品を書いてこれました。
相手を妖怪だと怯えるのではなく、自らを妖怪と言ってる方が私の読者さんになってくれるまで、ここまで私を生かしてくださった方が『黒井のお話は面白い』と感想を書きたくなるように、私は拙い文章の質を少しでも上げていこう試行錯誤をしています。
だから妖怪に怯える貴方も、自分を妖怪だと思う貴方も、書いてみませんか?誰かのための文章を、それは思った以上に貴方の人生を豊かにするかもしれません。