第8話 死闘の末に
ノゾムは、飛翔している邪竜に向かって剣を向けた。
「神の力を秘めし神剣よ、悪を裁き滅ぼす絶対の力を…いま解き放て‼︎」
すると、神剣はノゾムの声に反応し、輝きを一層高めてオーラのようなものをまとった。
それと同時に、邪竜はノゾムに向かって口から禍々しい黒い炎を放った。
あれが当たればおそらく僕は跡形もなく消えてしまうだろう。
だが、今の自分になら…
剣を握っている手の震えが止まらない。
けど、今の自分だから分かる。この震えが怯えなどでは無く武者震いなのだということを!
「ノゾム!今ですの‼︎」
全てを消し飛ばす黒き炎に、絶対の一撃を構える。
「うおおぉぉぉーーーーーー‼︎」
ノゾムは、邪竜に向かって神剣を思いっきり振り下ろした。
ボウンッ‼︎
神剣は、邪竜の放った黒い炎を押し返し、未だに光を放ち続けている。
ノゾムは空高く飛び上がり、無防備な状態の邪竜に対して再び斬りかかる。
「こ れ で…終わりだぁぁーーー‼︎‼︎」
ウゴォァァーーー‼︎
無彩色の絶望が、ゆっくりと白く染まっていく。
「落ちろぉぉーーーーーー‼︎‼︎」
神剣は邪竜を真っ二つに斬り裂き、裁きの光で跡形もなく消し飛ばした。
神剣がノゾムの手からゆっくりと消えていった。
「はぁ、はぁ…やったぞ!邪竜を倒した‼︎」
圧倒的なその力は、元あった山の形をも作り変えた。
「よくやりましたの」
すると、ノゾムのポケットが一気に重くなった。
周りを見渡し、大事な事を思い出す。
「はっ!このお金ですぐに、みんなを回復させなければ!」
ノゾムは自動販売機を召喚し、大急ぎで回復薬のようなものを買う。
それをみんなに飲ませ、しばらくすると二人が目を覚まし始めた。
「うっ!まだ頭がちょっといてーなー」
「私もまだ、体がちょっと重い感じがあるわ」
「カイ!ユリ‼︎良かった、目を覚ましたか‼︎」
ノゾムはほっとして、地面に崩れるように座り込んだ。
ノユラはソッと三人に近づいていく。
「みなさんごめんなさい。あそこまで強いとは思ってはいませんだしたの」
ノユラは深々と頭を下げた。
「まったくよ‼︎あんなのが出てくるなんて聞いてないわよ‼︎」
ユリはちょっぴり怒って言った。
「まぁまぁ、いいじゃん別に倒せたんだからさ〜。俺もノゾムが神剣使って倒すとこ見たかったな〜」
カイのへらへらと笑う顔がとても懐かしくかんじる。
「よくないわよ‼︎あんたが気絶したせいで大変だったんだから‼︎」
ユリはカイの腕を軽く叩いた。
「なんだよー痛いだろ〜」
「まぁ、確かにカイが気絶してユリは凄い怒ってたからな」
「ちょっ‼︎何言ってんのよ‼︎そんな訳ないでしょ!ノゾムのバカ‼︎」
ノユラは顔を真っ赤にしながらノゾムをポコポコ叩いた。
「はっはっは、痛いよユリ。悪かったって〜」
「へぇ〜、ユリは俺が倒れて怒ってくれたのか〜」
カイは、にやにやしながらユリをからかった。
「うるさいバカ‼︎それ以上言うと凍りづけにしてカキ氷にするわよ‼︎」
「はいはい、食べられたくないので静かにしてま〜す」
「とりあえず、みんな無事で良かった‼︎ほら、ノユラもこっちにおいでよ‼︎」
ノゾムはノユラに手招きをしながら言った。
「許してくれますの?」
「ふんっ!いいからこっち来なさいよ‼︎」
「ユリはツンデレだな〜」
「ふんっ!そこまで言うならしょうがないですわね‼︎ ふふふっ」
ノユラは少し笑みをこぼしながら、みんなの元に駆け寄って行った。
「ノユラもツンデレかよ〜。相変わらず、二人はキャラがかブッ‼︎」
ノゾムは、ユリとノユラのアッパーを食らい、体が宙をまった。
「ノゾムも懲りないな〜」
ーーハッハッハッハー‼︎
ーーうふふふっ‼︎
ゆっくりと平穏な時間が続く。
カルナ山の山頂ではしばらく四人の笑い声が絶えなかった。