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とってもちっぽけな願いを叶える為に異世界に行くのはいけない事ですか?〜豚汁を求めて三千万里〜  作者: 藍白かいと
第一章 過去を振り返るのはいけないことですか?
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第3話 本気の見せどころ

二人はとりあえず、隣り町を目指して歩き始めた。

道中で、スライムを十体ほど倒していった。

そのおかげか、それなりに連携が取れるようにはなってきた。

ベシャリベシャリと音を立てて潰れていく様は見ていて気持ちがいい。

もちろん、一体だけで行動しているスライムのみを狙って攻撃を仕掛ける。

この世界もまた、弱肉強食なのだ。


「なぁ〜、ノゾム〜まだ町にはつかないのかよ〜。」


「しょうがないだろカイ‼︎お前がすぐにへばって、休みたーいって言うんだから。」


かれこれ数時間は歩いている。


「だって、しょうがないじゃ〜ん。つい最近まで俺は、プロの自宅警備員だったんだからさ〜」


「はいはい。がんばれがんばれ」

僕はカイに、いやプロってつけてもその仕事かっこ良く無いだろ‼︎と言ってやりたかったが、自分も結構疲れていたので言うのをやめた。


「なぁノゾム。あの遠くの方にある大きな森、何か怪しく無いか?」

カイは森の方を指差しながら言った。


「そうだな、スライムもそろそろ飽きてきたところだし、とりあえず行ってみるか」

二人は、昼間なのにとても薄暗くなっている大きな森へと向かっていった。



森の入り口には今にも壊れそうな古い看板が立っていた。


「何だって?え〜と、この先、頭上注意?頭上注意って、一体何が降ってくるんだ?」


看板にはご丁寧にも子供が頭を抑えているイラストが一緒に描かれている。

もし文字が書かれていなかったとしたら、子供が何かに悩んで頭を抱えている図に見えていたことだろう。

文字とはとても大事なものなのだと実感した。

 

「こんな時も、俺にお任せ‼︎」

カイはとても嬉しそうな顔をしながらポーズを構える。


「次は何をしてくれるんだ。」

相変わらずダサいなそのポーズ。


「行くぜ‼︎召喚カモン‼︎」

すると、上から少し大きめのボウルが二つ降ってきた。


「ほいよ、これがノゾムのな。これで、頭は大丈夫だ!」

降って来たヘルメットのうち片方を僕に渡した。


「おぉ〜‼︎ヘルメットみたいだ」

僕は頭にボウルを被り、素直に関心していた。

カイは意外に頭が良いのかもしれない。

だが、ダサい。とてつもなくダサい。

今、目の前に鏡が無い事を感謝するくらいには。


しかも、僕のだけ異様にデカイ!

この前活躍のチャンスを奪われたあてつけなのか、僕のボウルだけ異様にデカイ。

グラグラしてかなわん。


「さぁ、早く行こうぜ‼︎冒険はまだ始まったばっかりだ‼︎」


こ、こいつ!平然としやがってー!


「お…おー!」

それでも、カイについて行くように僕は薄暗い森の中へと入って行った。



ーーしばらく歩くと、さっき頭に被ったボウルに何が当たったような音がした。


カラン…カララン


ん?雨か?けど、空は晴れているしな〜。

上を見ると生い茂る木々の隙間から、ちらほらと青空が見えた。


その音はだんだん多くなり、ついにボウルに当たっていた物の正体が分かった。


「これは、どんぐりか?」

ボウルに当たって地面に落ちた『それ』を拾ってみる。


「いやカイ、これはよく見るとスライムだ‼︎」

それは、薄く透き通った青色をした結晶のようなものだった。

けれども、よく見ると今まで相手にしてきたスライムの顔にどことなく似ている。


「マジか!スライムって事は倒したらお金を落とすのか?」


「よくはわからないけど。とりあえずやってみようぜ‼︎」

カイはさっそく足で踏んづけてみた。しかし、どんなに踏んでもいっこうに砕ける気配が無い。

そんな事をしている間も、どんどん上からひっきりなしに降ってくる。

地面がやたらとトゲトゲしくなってマキビシみたいになっている。


「しっかりやれよ〜」


「何だこれ⁉︎硬くて全然砕けないぞ‼︎固すぎるだろ、このどんぐり!じゃなくてスライム‼︎」


必死に砕こうとしているカイの背後には大きな影がジリジリと迫ってきていた。



「うわっ!カイ後ろだ!後ろ‼︎」

指差す方を、カイが振り向くと。

そこにはさっきまで小さなカケラだったスライム達が集まって、一体の大きな巨大スライムになっていた。


「こ、こいつら合体すんのかよ!一体でもあんだけ硬かったのに…。逃げるか?」


「いや、逆に一体になってくれた方が叩きやすくて良かったかもしれない。これだけ的が大きければ!召喚サモン‼︎」

降らした自動販売機は、スライムのちょうど真上に落ちた。

落ちてくる場所の精度は狙った通り完璧だ。

ひょっとすると、このスキルは物を買うより敵に直接落とした方が強いんじゃないか?


「よっしゃっ‼︎ドンピシャ!これで倒れただろ」


「いや、よく見ろノゾム。潰れたのはスライムでは無く、むしろお前の降らした自動販売機の方だ‼︎」

グシャグシャになった自動販売機をカイが指を指す。



「クソっ‼︎あんな硬いのどうすれば倒せるんだ!持ってるお金じゃ強い武器も買えないし、もうこれ以上打つ手がない」

僕は決め手を失い、戦意を喪失していた。

んー。それにしても自動販売機を降らすって言葉、なんか違和感あるな〜。


だが、カイはまだ諦めてはいなかった。

しばらく考え、何か思いついたらしい。


「そうだ‼︎ノゾム!もう一度召喚してくれ!次は、俺の目の前にだ‼︎」


「はぁ?まぁいいや」

カイの考えが理解できなかったが、今回はカイの案にのってやることにした。


「気をつけろよカイ!召喚サモン‼︎」

狙った通り、カイの目の前に自動販売機が降ってきた。

自動販売機もなかなか使い勝手がいい。


カイは目の前の自動販売機に、ポッケからお金を取り出して入れ始める。


「何をする気なんだ⁈」


カイはひたすらボタンを連打し、出てきた物を一気に敵に向かって投げ始めた。


「これならいける!召喚カモン‼︎」


「うおぉぉーーー‼︎」

カイは特大の麺棒を両手で持ち、スライムに向かって突っ込んで行った。


「くらえ!面食い(メーン・クラッシュ)‼︎」


ーービシッ‼︎


カイの投げた温かい飲み物によって、溶けていたスライムの体に亀裂が入り真っ二つに割れた。

欠けらはドロドロと溶けていき、あっという間に消えて無くなった。


「うおぉーーーー‼︎やったぜー‼︎ついに、俺のカッコいい一撃で敵を倒した!」

カイは嬉しそうにその場でピョンピョン飛び跳ねている。


「やったな!カイ」


「おう‼︎」


いつの間にかカイのポッケは、とても膨らんでいた。


「やった!今回のカチコチスライムで相当お金が手に入ったぞ‼︎」


「カチコチスライム⁈」


「あぁ‼︎今、名前をつけた!」


「そのまんまだな!」


二人は緊張から解けたのと、敵を倒した喜びでしばらく笑いが止まらなかった。




ーー今回のカチコチスライムが落としたお金は3500ポカニョンだった。

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