第27話 冒険日和
「はぁ、はぁ…やっと終わったー」
カイの装備が解けて、大の字になって地面に仰向けに寝っ転がった。
「やっと倒したのね。これで全部終わったのよね」
「いや、まだ終わってないだろ。本来の目的がまだ」
そう言ってカイはノゾムのもとに歩いて行き、ノゾムと背中合わせに座った。
「なぁ、ノゾム。もう戻ってこいよ」
「けど、僕は…僕のせいでノユラは」
ノゾムの背中を通して彼が今震えているのが伝わってくる。
「あれはしょうがない事だったとは言わないけどもういいじゃないか。ノユラも許してくれただろ?」
「それでも僕があんな事しなければ…」
「男がいつまでそんなメソメソしてんだ!ノゾムを救うのに危険が伴う事はみんな分かってた!それでもお前を救いたいと思ったからここに来たんだ‼︎俺らが自分で決めてココに来たいと思ったから‼︎少なくとも俺は来た事を後悔していない。あるとすればそれは俺自身の力の無さだけだ!」
「カイ…」
二人とも俯きながらしばらく黙り込んだ。
「俺はお前ともっと冒険したい!いろんなとこに行ったり、たくさんバカやって笑い合いたい‼︎それじゃダメか?」
「僕だってもっとみんなと…」
「じゃあそれでいいじゃないか‼︎何がいけないんだ!たとえこの先お前がどんな選択をしたって、俺がその道を切り開く‼︎俺がお前の剣になる‼︎」
どうしてカイはここまで自分のことを大事にしてくれるのか…
僕はカイに何もしてあげられてないのに…
どうしたらそんなに…
なんで君はそんなに眩しいんだ
震えはいつのまにか止まっていた。
「さぁ!一緒にこの世界を楽しもうぜ‼︎」
背中に感じていたカイの温もりが突然無くなり、代わりに彼の明るい笑顔と共に僕に向かって手が差し伸べられていた。
「あぁ!改めてよろしくなカイ」
僕は彼の手をとり立ち上がった。
既に夜が完全に明けていて、顔を上げると少し眩しい。
「もう朝だな。寝損ねちまったよ!まぁこんな朝も悪くない‼︎」
「はぁ、はぁやっとの事で追いつきましたよ!ってあれ?もしかしてもう全部終わっちゃいました?あの杖持ちの男はどこに?」
カケル達が今頃になって到着した。
クロはトムにおぶさって来ていた。
「はーいはい。もう一段落ついたのであんた達も帰るわよ‼︎」
ユリが着いたばっかで疲れているカケル達に追い打ちをかけるように帰りを催促した。
「えぇー‼︎今やっとの事で追いついたばかりなのにー」
カケルがユリに文句を垂れる。
「なんでカケルは空を飛んで来なかったんだ?」
「え⁉︎あっ!あぁぁぁぁーー‼︎すっかり忘れてました!」
とても悔しそうに地面を叩いている。
「じゃ、帰りますかー!ほら、ノゾムも行くぞ!帰って一眠りだ‼︎」
「おう‼︎」
ノゾムはカイに引っ張られながら町に向かって走り出した。
「置いてかないでくださいよ〜。あと結局どうなったんですか〜?」
「そんなことはそこにいるマルに帰ってから聞きなさい‼︎ほら、ダッシュよ!」
みんな笑い合いながら走って町まで帰った。
結局その日は疲れたせいで丸一日寝ていた。
ーー朝になりみんなにバレないようにこっそりと一人、宿を出て行った。
「おい、ノゾム‼︎昨日の今日で置いて行くなよ!俺はお前の剣になるって言ったろ?持ち主がいない剣なんて何の為にいるか分かりやしねーよ」
急いで階段を降りて、追いかけて来たみたいだ。
「はぁ、何だよ起きてたのかよカイ」
頭を抱えため息をついた。
「もっと静かに出て行くんだったなノゾム‼︎」
「まさかユリは起きてねーよなー」
「あいつぐっすり寝てるよ」
「置いて来てよかったのか。お前だけついて来て後で怒られても知らねーぞ」
「あいつにはもう危険な目にあって欲しくないからな。あいつの力なら普通に生きてくのには困らないだろうし。こっちの世界の偉いやつを見つけたら、そん時は俺が迎えに行くよ」
そう言って任せろとばかりに胸を叩いた。
「迎えに行くって。まるでプロポーズをしに行くみたいだな」
「なっ⁉︎そ、そんなわけねーだろぉ!な、仲間だからぁ教えてやるのはとうぜnゴニョゴニョゴニョ…。このやろー覚えとけよノゾム‼︎」
カイは顔を真っ赤にしながらこっちに指をさしてモゴモゴしている。
「はいはい、分かった分かった悪かったよ」
「分かればよろしい‼︎んじゃ、行きますか!」
「おう!」
「こう言うときはなんて言うか分かるよな?」
「もちろん‼︎」
指をグッと立てて返事をする。
「よっし!行くぞーせーの」
「「俺たちの冒険はここからだ‼︎‼︎」」
二人は勢いよくジャンプして町を後にした。
ーー今日もこの世界の空は冒険日和だ。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
これにて一章は終わりです。
これからもよろしくお願いします。