第24話 何も変われず悲痛を叫ぶ
「やっと追いついたぞ!さあ、ノゾムを返してもらうぞ!」
やっとの事でノゾムに追いついたカイとノユラに対して、杖持ちの男は足を止めた。
「本当にしつこいですね〜。本人が一番嫌がっているじゃないですか〜。そういうのストーカーって言うんですよ?」
「ふざけんな!お前みたいな頭のおかしい奴と一緒にいたい訳無いだろ!」
「頭おかしい奴は流石に傷つきますね〜。ノゾム様もなにか一つ言ってやってくださいよ」
悪口を言われ若干へこんでいる。
「カイお願いだもう来ないでくれ。僕は三番目の仲間になってすぐにでも願いを叶えたいんだ。だからもう…」
ーーパシンッ‼︎
「あなた、どれだけ自分勝手ですの!あなたからわたくしに仲間になって欲しいと頼んでおきながら、今度は自分の願いを叶えたいから追って来るなですって⁈ふざけるのもいい加減にしなさいですわ!」
ノユラはノゾムの頬をはたき、ノゾムの態度に一喝した。
「お話はそこまでです!それ以上ノゾム様に近くと、あなたも飛ばしますよ?」
杖持ちがノユラに向けて杖を振りかざした。
それでもノユラは下がらずに、ノゾムの腕を掴んだ。
「さあ、帰りますわよ」
ノゾムの腕を引っ張り連れ帰ろうとする。
「はぁ…忠告はしたはずですよ。それがあなたの願いならどうぞおかえり下さい。送還‼︎」
ノユラの足元が青く光りだす。
「離れろ、ノユラ‼︎」
飛ばされる前にカイがなんとか助け出した。
「離しなさい!わたくしは何としてもノゾムを連れて帰りますわ!」
カイの手を必死に振りほどく。
「馬鹿野郎‼︎お前まで飛ばされてどうすんだ!ノゾム、お前もいい加減にしろよ。どうして、ノユラが危険な目にあってるのに助けようとしなかった!お前になら、あのスキルを食らったらどうなるか分かってるはずだろ‼︎」
「五月蝿い。うるさい、うるさい、うるさいうるさいうるさいうるさい!うるさい!うるさい!うるさい‼︎僕に構うなよ‼︎お前たちには関係ないだろ‼︎」
頭を抱え逆上して、つい絶対に言ってはならない事を言ってしまった。
たとえ、口からこぼれでた言葉だとしても、一度発してしまったらもう無かった事にする事は出来ない。
それに気付き、我に帰る。
「関係ない訳無いだろ!お前はこの世界で出来た最初の友達で仲間だろ‼︎全然関係なくなんか無い!」
「そうですわ!そんな悲しい事言うものじゃ無いですわ!」
「カイ…ノユラ……」
二人の言葉に涙が溢れ落ちて来る。
「さあ、帰りますわよ…」
ノユラが手を差し出しながら、ゆっくりとノゾムに歩み寄っていく。
ーーバシュッ‼︎
突然杖から放たれたその鈍い音と共に、目の前のノユラの体が地面へと崩れ落ちる。
一瞬にして涙が止まった。
「な、なんですの…一体何が起き……グホッ‼︎」
「はぁー、あなた方は本当に学習能力が無いですね〜。近くなって言っているでしょう」
「ノユラーー‼︎」
倒れかけたノユラの身体を受け止める。
ノユラはやられた腹部を苦しそうに抑えている。
彼女の真っ白いドレスが徐々に真紅に染まっていく。
「な、なんで…どうして。どうしてノユラを撃った‼︎」
杖持ちの襟にノゾムが掴み掛かった。
「あ〜、今撃ったこれはですね〜アイテムの一つで杖の先からカマイタチを出すという…」
「そんな事を聞いてるんじゃ無い‼︎なんでノユラを撃った!何もあそこまでする必要無かっただろ!」
杖持ちはため息をつき、さっきまでのふざけていた表情が消え去る。
「あなたが悪いんですよ?あなたがいつまでたってもハッキリしないから。あなたこっちの世界に何をしに来たんですか?あなたがそうやってグズグズしているから現実世界でも何かを失ったんですよ?それなのに仲間だなんだって、何も変われて無いあなたが悪い。本当は最初から戻りたいと思っていたくせに」
何も返す言葉が無い。
一字一句彼の言う通りだ。
「また…また僕のせいで大切な人が…クッソォォォーーー‼︎」
掴んでいた襟を離し、その場に座り込んだ。
ーー悲痛の叫びが真っ暗な空に響き渡る。