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とってもちっぽけな願いを叶える為に異世界に行くのはいけない事ですか?〜豚汁を求めて三千万里〜  作者: 藍白かいと
第一章 過去を振り返るのはいけないことですか?
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第20話 早めの再会

夜が明け、町の入り口に集まり早速ノゾムを取り返す計画を考え始める。


「とりあえず何から始めましょうか」

まだ眠たそうにカケルが話しを始める。


「すぐにあいつらを見つけに行きたいところだが、今のままじゃまた地面にうつ伏せになるのが落ちだ!」


「じゃあ、どうすんのよ」


「うーん。とりあえずそこら辺で敵と戦いながら、連携を取れるくらいに強くなる。それしか浮かばん‼︎」

勢いよく立ち上がったはいいが、何も考えていなかったので、とりあえず座る。

地面に生えている草をプチプチと抜きながらうつむいている。


「はー。さっきまでの威勢は何処に行ったのか」

ユリがため息をつきながら、やれやれと言って立ち上がる。


「まあいいわ。そういう事ならさっさと行きましょう」


「えっ?本当にこんなんでいいの?」

カイが、また立ち上がりユリに尋ねる。


「どうせ、このまま考えても特にいいアイデアが浮かびそうに無いし。連携がとれるのは戦うにあたって重要だからね」


「よし‼︎それなら早速行くぞ〜!」


何も考えずに、町を後にした。


行く場所は、近くでスライムが大量に発生していると噂の洞窟だ。

本来なら。強いモンスターと戦い経験を積みたいところだが、こちらには戦いには使えないスキルを持ったのが何人かいるので、庇いながら戦う事を考えると危険の少ないスライムと戦うのがベストだと考えた。


洞窟に入ると、早速二匹のスライムがお出迎えしてくれた。

スライムにも強さが有るのだろうか、少しばかりサイズが大きい。


「スライムのお出ましだ‼︎行くぞトム!一発お見舞いしてやれ」


トムが拳を構え、渾身の一撃を放つ。

だが、拳がスライムにヒットして吹っ飛んで行くと思いきや、ポニョンと優しい音を立ててトムが後ろに弾き返される。


「は?」


あまりの光景に口を出さずにはいられない。

カイの攻撃でもスライムくらいなら大抵三発くらいで倒す事が出来る。

それがどうした、スライムに連続で殴りかかっても聞こえてくるのはポニョポニョとした音だけ。


「そりゃ、そうですよ。まだ1日が始まったばっかり出し、そんなに歩いていませんからね。いくらスライムとはいえ一般人の拳で与えられダメージなんてそんなもんですよ」


例の通りトムの代わりにカケルの解説が始まる。

確かにまだ朝になったばっかりだ。そう言われると納得出来る。

しかし、毎回カケルが出てくるせいでトムの声を未だかつて聞いた事が無い。

もともと話すのが得意では無いのかもしれないが、このまま行くと一生彼の声を聞かずに終わりそうだ。


当の本人は未だにスライムを叩き続けている。

スライムもしぶといが、トムもトムで相当しぶとい。

結局一匹倒すのに三分かかった。

もう一匹は、ノユラが爆弾でド派手に吹き飛ばした。


「ええっと、それじゃあトムはしばらく戦いには参加せずにランニングに専念して欲しい。俺とユリ、カケル、それからノユラは一緒にスライムを倒していく。クロとマルは……なんかあったら呼んでくれ」


クロとマルは不満そうな顔をして、クロが近くの岩に向かい手に入れたばっかりのアイテムをビビビッと撃ってはマル食べてを繰り返している。

二人には申し訳ないが、相手がスライムでは二人のスキルを全く生かす事が出来ない。

今は、戦える奴で連携の練習を少しでも多くしなくてはならないからだ。


それからひたすらにスライムを倒し続け、それなりに連携がとれるようにはなったところで洞窟の出口が見えてきた。


夕暮れ時で、出口から真っ赤な光が差し込む。

外まであと少しのところで、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


『〜ですから。よろしくお願いします』


『そうだ!そうだー‼︎』


とても聞き覚えのある忌々しい丁寧口調と、どんな時でも欠かさず放たれるイライラとするあの相槌。

忘れもしない屈辱と後悔が頭の中一杯に埋め尽くされる。


「こんなに早く会えるとはな、ノゾムーー‼︎」

勢いよく外に出て、思いっきり叫んだ。


夕日でよく見えないが、仲間のシルエットくらいすぐに分かる。

前回より数人増えているが、確かにあいつらだ。


「おやおや、一日ぶりですか。もう見つかってしまうとは。あなた方、案外運がいいですね〜」


「そうだ!そうだー‼︎」

「お前には聞いてない!今度こそ仲間を取り返す‼︎」


敵の数はノゾムを抜いて四人。

七番目はどうやらいないようだ。今日はとことんついている。


「カイ…何故来たんだ」


「お前が何と言おうと、引きずってでも連れて帰る‼︎あいにく俺は、あっちの世界でも仲間だけは大事にするタチなんでな」


ノゾムの表情がいまいち読み取れないが、楽しそうな顔をしていないのだけは声で分かる。


「こちらとしても、一度招待に応じた者を簡単に返す訳にはいかないんですよ」


「そうだ!そうだー‼︎」


「みなさん!あの分からずやを今度こそ絶望に叩き落としてあげなさい‼︎」

杖持ちがそう言うと、三人がこちらに対して構えた。



ーー夕日が地平線に沈んでいく中、戦いの火蓋が切って落とされた。

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