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とってもちっぽけな願いを叶える為に異世界に行くのはいけない事ですか?〜豚汁を求めて三千万里〜  作者: 藍白かいと
第一章 過去を振り返るのはいけないことですか?
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第2話 それぞれの願い

真っ暗な所から吹っ飛ばされた二人は目が覚め、まず辺りを見渡した。


「ここは…次は何処に飛ばされたんだ?」


遠近感が分からなくなるほど一面緑の世界に目を取られた。

ちらほらと、見慣れないシルエットをした生き物がいるのを伺える。

確実に僕のいた世界ではなかった。


「あのぅ…」


「うぉっ‼︎はいっ‼︎なに⁈何回ビックリさせんだよ‼︎」

おそらくさっき隣りに居たであろう男をやっと拝見する事が出来た。

その男は、見た感じ同い年で、もっと暗いやつかと思っていたが意外に爽やかな少年だった。

服装は、水色のカーディガンに白いTシャツ、下は脛のあたりまでしか無い黒いズボン。

意外にオシャレだ。

ちなみに僕は、鯨が大っきくプリントされたオレンジ色のパーカーを腕まくりして着ていて、下は男と同じ長さの白いズボンだ。


「君が隣りにいた男かい?僕の名前はノゾム!君の名前は?」


「俺はカイよろしくな‼︎」


とりあえず知らない世界で友達ができてよかった。


「いきなりだが、カイはどうしてこっちに招待されたんだ?」


二人はまず町を目指してお互いの話しをしながら歩き始めた。

道中は特に何かイベントがあるわけでも無く、ただだだっ広い草原を歩いていく。


「俺はずっとやっていたオンラインゲームのサービスが終了して、一緒に組んでいたギルドのメンバーがいなくなり落ち込んでたら、あいつら実は大切な仲間だったな〜って」


「そんで、何て願ったんだ?」


僕はカイの話に、のめり込んでいた。


「俺の願いは多分、何か唐突に美少女のおっぱい揉みてーなーって思った事かな〜」


ん?

僕はドヤ顔で言うカイを見て、最初は聞き間違いかと思わずにはいられなかった。

だが残念な事に聞き間違いでは無いらしい。


「今の話しのどういう流れで、そんな願いに至ったんだ?」


「そりゃ〜、電脳世界から切り離された思春期が願う事といったら。まずおっぱい揉みてーでしょ‼︎」


「そ、そうだな」


あ〜、こいつはバカだな。

僕はもう考える事をやめた。考えるだけ無駄だ。

考えは人それぞれだからな。


しばらく歩いて、やっと町が見えてきた。


その町は、沢山の人で溢れかえっていて、とても賑わっていた。

明らかに人では無い者もちらほらいるが、この世界にもともといる住人なのだろう。

異世界って感じは出てきたな。


「すげー」


「俺のやってたゲームの世界みたいだー」


町をしばらく歩いて気付いた事がある。

どうやらこの世界での乗り物は豚らしい。

正確に豚かどうかはわからないが、まぁそんな形をしているからおそらく豚だろう。


小豚が、必死に人と荷物をのせた荷車を引っ張っている。

しかも、大きい豚じゃなくて小豚しかいない。

小さい豚が何匹も集まって荷車を引いているのだ。

どう考えても燃費が悪そう。


町並みは石造りで、道もきちんと整備されている。

いくつもある屋台では飲み物から洋服までなんでも揃っている。

平和そのものだ。


二人はとりあえず二手に分かれて情報収集から始めた。

とは言っても、この町想像以上にデカかった。歩きっぱなしで足が痛い。


一つわかったことがある。

どうやら僕らの言葉は、この世界の住人に対して通じるらしい。

何故だかは知らん。あまり気にもならなかった。




ーーしばらくして二人は町の入り口で合流し、集めた情報を話しあった。


「とりあえずこの世界には、ギルドみたいなやつは無いらしい。そんでもってクエストとかも特に無いらしいですねー。しょーじき、期待外れっすね〜。」

カイはオンラインゲームみたいな事を想像していたらしく、少しばかり落ち込んでいた。

けれども僕は、一般人がスキル持ってる時点で十分凄い事だろ‼︎と、カイにツッコミたかったのを頑張って抑えた。


「ん?そうだ!スキルだよ‼︎ス・キ・ル‼︎すっかり忘れてたよ」

とっても大事な事をやっと思い出した。


カイも、そういえばそうだったー!みたいな顔をしている。


「とりあえず、ノゾムのスキルは自販機出すやつだよね?もう一個は聞こえなかったけど。さっそく、出してみてよ‼︎」


「聞こえなかったのはお前のせいだけどな‼︎けど、そうだな。いっちょ試してみるか‼︎」

僕は、人生で初めて使うスキルに興奮がとまらなかった。


「えっと、やるにしてもどうやって出すんだ?」

スキルの使い方を、例の声から教わってはいない。

『伝えるのが面倒くさかった』か、もしくは、『自分達で自力でやるのに意味が有る!』的な考えのどちらかだろう。

まぁ、おそらく前者の方に違い無いが。


「とりあえず、叫んでみてはどうですか?コォォォール‼︎みたいなやつ。」

適当だな〜とは思ったが案外それかもしれないと思った。


「よし‼︎行くぜっ‼︎召喚サモン‼︎」


すると、上から見た事のある自販機が目の前に降ってきた。

ドシンと大きな音を立てて明かりが光る。


「「うおぉーーー‼︎」」


カイの考えは、案外的を射ていたらしい。

二人は本当に自販機が降ってきてテンションがおかしなことになっている。


「案外、やってみるもんだな〜。さて、さっそく飲み物でも買ってみるか。って、金持ってねぇーー‼︎」

さっき上がったテンションが一気に落ちた。

この世界に招待されてから、テンションがまるでジェットコースターのように上がり下がりしている。

実際にそんなジェットコースターがあったら垂直直下間違いなしだが。


「おっと、ノリツッコミですか〜?そんな事、さっき説明の時に言ってたじゃないですかー。ちなみに、お金は敵を倒すと勝手にポッケに貯まるらしいですよ‼︎」


カイに一瞬だけ殺意が芽生えたが、お金についての情報を教えてくれたので、まぁ良しとしよう。


「って言っても、敵なんて町に来るまでにほとんど見てないし、そう簡単に出て来る訳が…」


そのとき、まるで僕がその言葉を放つのを待っていたかのように、お決まりのタイミングで敵が現れた。

ラノベで良くある例のアレだ。


「おいおい!カイ‼︎敵が現れたはいいが、俺たち攻撃する武器持ってねーぞ⁈」


青くてプニプニとした大きな塊が目の前に立ちはだかる。

可愛らしい顔が一層魔物らしさを醸し出す。


「安心しろ。今こそ俺のスキルの見せ所だ‼︎」


正直不安しかない、会って間も無い人をここまで信用する事が出来ないなんて、カイ意外にあり得るだろうか。

いや、無い。


だが、そんな人の心配も気にせずよくわかんないポーズを構え出した。


「まぁ、任せとけって。行くぜ‼︎召喚カモン


ピカッと光ったあとカイの右手にはでっかい包丁。そしてもう片方の手にはでっかいまな板の盾が装備されていた。

その姿はまるで厨房の主のようだ。これだけは言っておく、そんなにカッコよくは無い‼︎


「そんな使い方があったのか‼︎」

僕は驚きを隠せなかった。

ちなみに、包丁とかに驚いたのではなく、カイの頭でそんな事が考えられたのかという事にだ。


「な‼︎言っただろ‼︎俺に任せろって。ちなみに俺の掛け声はお前のサモンを真似してカモンにしてみたぜ!ふふん‼︎」

カイの発言はいちいち癪に触る。


「さあ、こんな敵さっさと倒しちまおうぜ」

ここぞとばかりに調子に乗っている。

振り回していた包丁が手から離れ、自分の足元に突き刺さる。


「ヒィ!」

すぐさま拾うと懲りずにまた振り回し始めた。


「カイっ!相手がスライム一匹だからって気を抜くな‼︎俺も手を貸す‼︎」

カイ一人に任せるなんて出来ない。

いきなりゲームオーバーなんて、勘弁してほしい。

コンティニューの無いゲームで、相棒がやられるとかたまったもんじゃない。


「っていっても、ノゾム‼︎お前に何が出来るんだ?いいから、ここは任せろって」

腹立たしい顔がこちらを向く。

いきなり活躍の場が設けられた途端この顔である。


「このーー‼︎カイのくせに調子乗りやがってー!負けてらんねー‼︎召喚サモン


すると、運良く自販機はスライムの真上に落ち敵は粉砕。


「「え?」」

スライムは、ベシャリと音を立てて僕たちの視界から消え去った。

無事カイの晴れ舞台となる事なく敵をやっつけた。

これがビギナーズラックというやつか…


「俺の晴れ舞台が〜」

カイは相当落ち込んでいたが、自分的には十分満足出来る結果だ。

まさか、自動販売機にこんな力が有るなんて。

物は使いようだな。


「まぁこれでも飲めって」

僕は敵を倒した事によって得たお金でカイに飲み物を奢ってやった。


プシュ‼︎


「くっそー、調子に乗りやがって〜。けど、ジュースうめ〜〜〜‼︎」


この世界に来て初めて口にした飲み物は、現実世界の物とあまり変わらなかったが、頑張った後に飲むと身体中に染み渡って来るのがよく分かる。



ちなみにスライム一匹の落とすお金は300ポカニョンだった。

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