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とってもちっぽけな願いを叶える為に異世界に行くのはいけない事ですか?〜豚汁を求めて三千万里〜  作者: 藍白かいと
第一章 過去を振り返るのはいけないことですか?
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第18話 終わりは始まり

朝が来た。

目を覚ますと、相も変わらず自分の家だ。


「はぁ…」

昨日は、テーブルの上でそのまま寝てしまったので、手が痺れていて顔も少しばかり痛い。


もう悪夢には慣れた。

流石に何回も続くと、人間どんな事にも慣れてくる。


今日は、学校に行こう。

今まで忘れていたが、今日は火曜日だ。

昨日は葬式があったので行けなかったが、ここが現実世界なら学校には行かなくてはならない。


服を、いつも着ているくじらパーカーの青バージョンに着替え。

焼いてない食パンを口に咥えて、家を出る。

学校までは、電車に乗ればだいたい一時間くらいで着く。

相変わらず電車の中は、人が多くて暑いし臭い。


結局、一度も座る事が出来ずに着いてしまった。


友達に挨拶を交わしながら教室に向かい、席に着く。



僕は、お昼寝研究同好会に所属している。

活動内容は特に無く。

今まで活動したのは、最初の自己紹介でそれぞれの寝るときの好きな姿勢について語ったくらいだ。


普段は、部室に置いてあるそれぞれの枕を机に置いて、だらだらとくっちゃべっている。

むしろ、本領発揮をするのは授業を受けている時にこそ輝く。

ベテランともなれば、誰にも気づかれる事無く居眠りする事が出来る。


僕はまだ、その域に達していないので、出来ることと言ったら、ペンを持ったまま寝る事が出来るくらいしか無い。


そう、授業が始まった今こそが本領発揮のチャンスなのだ。


結局、一度もばれる事無く授業が終わった。

僕の昼寝レベルは、おそらく今ので2から3くらいには上がっただろう。


そんな事を考えながら部室に向かった。

部員は現在六人だ。

僕達が作ったので、先輩や後輩はいない。

僕の使っているおすすめの枕は、低反発でも無く高反発でも無い中間の硬さで、中にはビーズが入っている。


そんなどうでもいい時間が過ぎ、家に帰る為に電車に乗る。

途中までは、何人か同じ電車に乗るが、それぞれ違う駅で降りて行ってしまう。

いつも最後には一人ぼっちだ。


帰り道にコンビニに寄り、アイスを買って店の前で食べた。

当たりが出て、硬かった表情に笑みがこぼれる。

「やった当たった!」


つい言葉が出てしまい、周りに人がいないかを確認する。


良かった、誰も聞いて無い。

ホッとしながら、当たりを交換して貰う為にもう一度店に入る。

何気無い幸せが、とても嬉しく感じられた。


家に着いた頃には既に時計が10時を指しており、そのまま風呂に直行した。


飯は食わず、いつものようにベッドにダイブする。


電気を消して就寝しようとした時、コンコンとドアをノックする音がした。


ガチャリとドアを開け入ってきたのは父さんだった。

父は僕に手紙のような物を渡しこう言った。


「それは、お前の母さんが最後に書いたお前宛の手紙だ。見せるか迷ったが、とりあえず渡しておく。それを見るか見ないかは、ノゾム…お前が決めろ。」

そう言って、父は部屋を出て行った。


母さんからの手紙…

開けるのが、楽しみでもあり不安でもある。


ゆっくりと、手紙を開く。


一行目を見て、手紙を閉じた。


そこには、懐かしい母の字で『ごめんね』と書いてあった。


それは、本来自分が伝えなくてはならない言葉であり、母がそれを書いているとは思いもよらなかった。


涙がポロポロと目から溢れてきているのを、鏡を見て初めて気づく。

その目は、とてもつらそうな表情で僕を見てくる。

僕であって、僕では無いようだった。


そうか、僕はずっとこんな顔をしていたのか…


涙を拭い、閉じたままの手紙を握りしめる。


時計が12時を指し、今日が昨日になり、明日が今日になる。

ちょうど今その境目にいる。

「もう、明日か…」

その言葉が、この世界での最後の言葉になった。


突然眠くなり、意識が遠のいていく。

そして、待ち望んでいた光が視界を覆い始める。


握られていた手紙が床に落ち、霞んでいく視界の中に最後の行に書いてあった文字が映る。


『最後に、これだけはちゃんと伝えておきたい。生まれてきてくれてありがとう』


確かにそう書いてあった、その文字だけを映し視界を光が包む。


待ち望んだその光の輝きが、絶望の輝きに変わっていく。



ーーー意識がゆっくりと落ちていく、落ちていく…落ちていく……おちていく………オチテイク…………墜ちていく。




ここまで、読んで下さりありがとうございます。

僕が一番書きたかった所が書けて本当に良かったです。

この後もお付き合いよろしくお願いします。

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