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とってもちっぽけな願いを叶える為に異世界に行くのはいけない事ですか?〜豚汁を求めて三千万里〜  作者: 藍白かいと
第一章 過去を振り返るのはいけないことですか?
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第14話 幸運とは何か

ノゾム達が下の階に落ちてしまい、残された三人。


薄気味悪いダンジョンの中。

もし、ここにイケメンが居なければカイにとっては最高のシチュエーションだっただろう。

この、何を考えているかよく分からないイケメンが居させしなければ。


だが、現状は違う。

ひたすらに全てのトラップを起動させるアホのせいで、命の危険と常に隣り合わせだ。

いきなり飛んでくる矢に、降ってくる大量の針、追いかけるように崩れていく足場、狭い通路で転がってくる大岩。

豊富なレパートリーが、絶えず続く。


けれど、イケメンに危害が及ぶ事は一切無かった。

こいつに会うまで何一つトラップが無かったのは、おそらく先に全部起動させていってくれたおかげだろう。


「なぁ、いい加減にしてくれよ!もう少し気を付けて進めないのか?お前は平気かもしれないけど、俺らは巻き添えくらって大変なんだよ」

カイとユリが息を切らしながら、床に座り込む。


「幸運とはとても不幸な事だと思いませんか?」


いきなりなんだ、全く返事になっていない。

幸運とは不運?急に哲学の話でもする気なのか。


「何が言いたい」


「僕のスキル厄災ディザスターは、圧倒的な幸運を手に入れる能力。つまり、僕が例えトラップを起動させたとしても、僕には一切危害は及ばない。」


淡々と話しを続ける。


「だが、僕の周りにいる人達は、本来僕が食らうはずだった不幸を代わりに引き受けなければならい。例えそれが、死だとしても‼︎」


それが事実なら恐ろしいスキルだ。

どうりで、俺らばかり危ない目に会うはずだ。

例えば、このイケメンに雷が落ちるはずだったとしても、軌道を大きく逸れて周りの人間が食らうはめになるという事だ。


「それで、俺らと一緒に行動しているのか‼︎ノゾム達が落ちていったのもお前のせいという事か‼︎」

許せない!

こいつの身の安全の為に二人が犠牲になったのだ。


「あぁ、そういう事になるね。だが、それもまた仕方の無い事」


「仕方の無い事だと‼︎お前の為に俺らがいる訳じゃない‼︎俺はお前を絶対に許さない‼︎」


カイとユリは臨戦態勢に入る。

スキルを発動し、武器を構えた。


「カイの言うとおりよ‼︎あなたは私が凍りづけにしてあげるわ‼︎」


だが、イケメンはニヤリと笑いこう言い放った。

「やれるものならやってみろ‼︎俺には神から授かりし絶対の加護が有る‼︎」


そう言うと、いきなり颯爽と走り始めたではないか⁉︎口調も変わりさっきまでとはまるで別人のようだ。


「どこへ行く‼︎逃げるな待てー‼︎」

二人は彼を追いかけ走り出す。

しかし、彼は全てのトラップを起動させながら走っていくので、思うようには進めない。


彼はおそらく武器の類を持ってはいない。

だが、彼の周りに有るものが彼に対する危害そのものが、攻撃手段で有り武器なのだ。


「さぁ、やれるものなら追いついてみろ‼︎」


彼との差は一向に縮まらず、離れていく一方だ。

笑い声が壁に反響して遠のいていく。


「クソッ‼︎卑怯者め‼︎」


先ほどまではゆっくりと進んでいたので、一つ一つのトラップはそこまで大した事は無かったが、今は違う。

トラップが、次々に怒涛のごとく襲いかかって来る。


矢はまな板で、針はボウルで、崩れる足場はユリのスキルで新しく作り上げ、いくつも転がってくる大岩は麺棒で打ち砕く。

一つ一つ迅速に、だが丁寧に対処しなければ追いつく前にズタズタだ。


道の先が開けて、視界が一気に広がる。

奥に大きな扉が有り、その手前に宝箱が置いてある。

おそらく、ここが最深部だろう。


右を見ると、違う通路からノゾム達にカケル達、それぞれが通路から出てくる。


「ノゾムとノユラ、それにカケル達も‼︎」

「無事だったのか!」


感動の再会とまではいかないが、合流してそれなり喜びあう。


なぜだかノユラの顔が少し赤くなっていて、やたらとモジモジしている。

ノゾムのやつ、俺らが必死に敵討ちをしている間に何してんだよ。

あいつもやるときはやる男だったのか…


「それよりカイ‼︎どうしてそんなにボロボロなんだ?」

カイとユリの姿を見て、ノゾムが心配そうに聞く。


「あぁ、聞いてくれ!あいつが二人を陥れた元凶だ」

イケメンを指差し、睨みつける。


すると、奥の扉が突然開き始め、黒いローブで身を包んだ二人組みが出て来た。


二人が出ると、扉がゆっくりとギシギシ音を立てながら閉まっていく。



ーーー広い空間に、ついに全ての役者が出揃った。


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