銀の騎士
「魔獣が今町に近づいてるらしいんだよ!!しかも……ランクAモンスターなんだ」
「なにっ?!」
店主は驚愕した顔で男の子を見た。
「もう、すぐそばまで来てんだよ!!」
慌てる男の子は他の住民たちに知らせに行くためか店を出ていこうとする。
「あのー…。すいません」
私は場の雰囲気には合わないであろう呑気な声をかけた。
「あ?誰?今急いでんだけど」
「あ、すいません。……もしかして今冒険者って集まってる感じですか?」
「当たり前だろ!!ランクAモンスターだぞ?!冒険者いてもあぶねぇかもしんねぇのに!」
焦っているせいか怒鳴り散らす男の子。
まぁ仕方がない状況ではある。
「俺は先にいくぜ!」
そう言うと男の子は慌てて外に出ていった。
他の住民達にも伝えにいかなきゃならないからだろう。
さて、どうする?
[面倒……って言いたいとこだが新しい武器も試したいんだよな]
でも相手はAだよ?
まだ使ったこともない武器でも大丈夫なの?
[そんなもん試してみないとわからないもんだ]
まぁそうだけどさ、
私は陽と会話していたため店主がいることをすっかり忘れていた。
「おい坊主!!お前冒険者なんだろ?先いってろ!」
あれ?行くこと決定みたいだよ。
[みたいだな。まぁいい機会だ見るだけ見て決めよう]
陽の返事を聞いて私は店を出た。
そしてすぐに町の門まで転移する。
するとそこには人だかりがものすごくできていて前が見えなくなっていた。
たぶん、冒険者達だろう。
どうする?
[こりゃ、めんどい]
転移の魔法で見えるとこまで待機しようか?
[それがいいな]
その返事を聞いた私は人目のないとこに行って転移の魔法を発動する。
指定の場所は木の上。
転移した木の上に立って様子をうかがうと確かに魔獣がこっちに向かっているのが見えた。
うーん。傍観だね
[まぁ、ランクAの“銀の騎士”がいるからなんとかなんだろ。]
え、ほんとだ!
木の上から“銀の騎士”を確認していたとき魔獣が通りすぎる。
そしてついに冒険者達と接触した。
一瞬にして辺りは風に呑み込まれる。
風魔法が使われたようだ。
たぶん“銀の騎士”だ。
少し遠いからはっきりとは見えないが魔獣が押されているのがわかる。
“銀の騎士”はここハルバリ町を拠点として活動している冒険者。
美しくて長い銀の髪に騎士の風貌をしている。というか元騎士だそうだ。Aを持つのは伊達ではなく風魔法を主に使う。
今までのクエストは難しいものばかり。腕と容姿が完璧なのでモテてるらしい。
“銀の騎士”にしてみればランクAモンスターといえども簡単だろう。
それにこの魔獣、ギリギリランクAって感じ。
出る幕なさそうねー
[つまんねぇの]
少し不機嫌そうな声が頭に響いた。