私と家族
どうも。リナです。
私がリナという名前を与えられた瞬間、私の中の板垣大地という存在が大半を占めていたこの体はリナの存在がこの世界に誕生したことによって薄くなったようで、前世の記憶はあるが、板垣大地の考え方や性格、好みなどは消え去ったようです。
なのでようやっと私はリナという序列七位の龍神という存在になりました。
龍神やら序列やらよくわかりませんがとにかくめんどくさそうです。
「リナ様…。とりあえずこの場から移動しましょう。あなたの家族に会いに。」
「…家族?」
「ええ。龍神は普通の生まれ方--いわゆる出産という行為で誕生するのではなくこの世界にある魔素というエネルギーが凝縮され、形を持った存在なのです。
しかし誕生の仕方が違うとはいっても生まれたては赤ん坊と同じ。考え方や趣味といったものはいっさいないまっさらな状態です。
そんな状態でこの世界を生き抜くことは奇跡に近いでしょう。
例え神の力の一端を使えるとしても、です。
そのために龍神は皆さんそれぞれ家族の絆ともいうべき紋章を持って誕生します。」
「…なるほど。これが家族の証…。」
家族の絆の証であり、神の力の一端を扱う事ができる紋章、通称「龍紋」--そのまんまですけど--は私の右手の甲にありました。
竜の尻尾の様な形をしています。
ちなみに私の家族はそれぞれ頭、胴、右手、左手、右足、左足の形の龍紋を持っているらしいです。
私のこの世界の家族に会いに行くためにまず私達がいる海底神殿からでて、アイルベーンに向かうことになりました。
海底に神殿があるというのはなかなかロマンがあって私の心が揺さぶられました。
海底ということはもちろん海の底ということになるのでいきなりハードだなぁと思っていましたが、私は竜のカテゴリーでは水竜に属するので地上で歩くよりも楽に感じました。
息はできるし、目もあけられるので、とても澄みきっている美しい海の中を見れて無表情キャラの私が思わず笑ってしまいました。
その姿をみて、アルマリア以下その部下達が鼻を押さえていました。
なぜでしょう?
ちなみにアルマリア以下部下達も水覇竜と呼ばれる水竜の上位個体だそうです。
海の中を歩いたり泳いだりすること数十分、天空国家アイルベーンに行くための転送装置に着きました。
「リナ様。この魔法陣の内側に入ってください。」
魔法陣の内側に全員が入ると、魔法陣が光りだし、私の視界を真っ白に塗りつぶしました。
それから数秒。
「リナ様。着きましたよ。」
「ん。」
「ようこそ。天空国家アイルベーンへ!」
私はこの世界で過ごすことになるであろう国にたどり着きました。
これから私には想像もできないようなことがたくさん起こるのでしょう。
それはとても大変でとても楽しい思い出になる予感がしました。
私はアルマリアに連れられ、アイルベーンの真ん中にある大きな城に向かいました。
城の城門に向かうと門番の人が二人立っていて、私の姿を見るとビシッというような効果音がでるくらい綺麗な敬礼をしてくれました。
もちろん私もビシッと返しました。
「…私の家族ってどんな感じ?」
「皆さんそれぞれ癖が強い方が多いですね。それでいてアイルベーンの住民を家族の様に接しておられます。」
「…ふーん。」
家族ですかぁ。前世の私は孤児で孤児院の院長さんに引き取られるまでの記憶が何故か思い出せないんですよね。
だから血の繋がった父や母がどんな顔をしていたかなんてもちろん覚えてません。
まぁ、孤児院の皆は本当に優しかった。
私が死んだことであの人たちが悲しむのは嫌です。
とは言っても、意味ないですよね。死んだんですもの。
だから、せめてこの世界での家族にはそんな心配はかけたくありません。
それがせめてもの償いです。
連、秋ちゃん。私は今ここからがんばります。だから皆も頑張って。
「リナ様…?」
「…何でもない。」
「そうですか?…さて、着きました。」
もう目的地に着いた様です。
この扉を開ければ私の家族がいます。
優しいのでしょうか?
私の事を愛してくれるのでしょうか?
私は覚悟を決めてドアノブをつかみ、
扉を開けます。
ガチャ
「よ、幼女だ!」
閉めます。
はて?何か聞こえたようですが、気のせいでしょうか?
もう一度開けます。
ガチャ
「幼女キタァァァァァァ!」
「幼女ですが、何か?」
この世界の家族は変態がいるようです。