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「ん?何かいますね」
最初に気付いたのは、騎士様だった。
「何ですか?」
「ほら、道の真ん中に小さな動物が…。狼でしょうか。茶色い毛なので見つけづらいかもしれないです」
私には、どこにいるのか分からなかったが、そこに狼らしい生き物がいるみたいだった。
詳しく聞くと、道端に横たわっているみたいで、寝ているのかもしれない、とのことだった。死んでいるのかも知れないから危険はないだろうけれど、騎士様はそれを確かめて来てくれるらしい。
私はそれを待つことにした。
「どうでした?」
帰ってきた騎士様に問いかけると、その騎士様の腕の中で、4本足の小さな動物が寝ているのを見せてきた。
かっ、可愛い!
私は、知らないうちにスカートの裾を握りしめていた。
「どうします?」
「えっ、どうするかって?どうしたらいいのかしら…」
どうしよう、私ったら物凄く狼狽えているわ。家臣の前でこんな恥ずかしいとこ見せてしまって…、どうしましょう。
「殺してしてしまうこともできるんですが…、捕まえられちゃったので、お嬢様に相談しに来たのです。まだ子供のようですし、殺すのは可哀想だなって思って…」
殺しちゃダメだわ!
そう口からでそうになるのを必死にこらえた。
「いえ、ではお屋敷まで連れて帰りましょう」
「はい。ではそのように」
一旦馬車に戻って、この子を御者台の騎士様に預けるために道を引き返して行った。
☆
夢…。
あぁ。そうか、死んだのか。
寝起きは不思議な程、穏やかだった。
トラックに轢かれたんだった。
…。うん、そうだ。そのはずだ。
目をうっすら開けると、人の顔が見えた気がした。
でも、まだ起きる気になれない。
すごく、疲れている。
それに体の節々が痛い。
もう一度目を閉じて、意識を暗闇へと沈めていった。
今回の眠りは、いつまでも寝れるような気がした。