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まぶしいな。
目蓋の向こう側から、人様をなめているとしか思えない程の光が俺の安眠を妨げている。
それは太陽だろうと簡単に予想がついた。
朝か。今日も学校へ行かないとな。
そう、自分に言い聞かせ、眠くて重たい瞼を開ける。案の定、陽光によって視界が真っ白に染まるが、次第に慣れてきて周りを見渡すことができるようになった。
てか、何で外で寝てるんだ?
そこは、森の中で土むき出しの道の上だった。
俺はその場で体勢を直し、座る姿勢になった。
そして、なぜこのような場所にいるのか考えた。
確か、昨日は…。
と前日の記憶を思い出そうとするが、当然家に帰った記憶はい。
飲み会か?
そもそも、こんな場所で寝るなんて、酔っていなければありえない。記憶が曖昧だし、そして若干頭も痛いような気がする。だが、こんな木々の生い茂った森の中に来てしまうほど、酒を飲んだのだろうか。
いや、ありえないだろう。いくら疲れていても、ストレスが溜まっても、酒に逃げるなんて俺がするのだろうか…。
今日は平日だよな…。学校行かなきゃなのに…。
俺は、こんな無様な自分に嫌気が差し、自分を戒めるつもりで頭を叩いた。
だが、そんな考えは一瞬にして消え去り、手と頭に違和感だけを残していった。
何かがおかしい。
今度は、頭をさすってみる。
フサフサだ…。それに毛が多い。
一応、弁明しておくが、俺は剥げてはいない。25でハゲとか辛すぎるだろ…。
そうじゃなくて、学校で髪が長いと、何かと邪魔なのでいつもショートヘアだったのだ。
それが今では、なんだか、もっさりとしているのだ。
それに手の感覚もいつもと違う。
頭に置いた手を、そのまま眼前まで降ろす。
…。
肉球だ…。
いや、まさかっ--。
そう思い、自分の体を見回してみる。
どこもかしこも、金色の毛で覆われていました…。
どうやら俺は、小動物の体を手に入れたらしい。
なんで!!
そう言ったつもりだった。
だが、耳に届いた声は、
「ワン」
という、獣のような鳴き声だった…。
なんで…。
途方にくれるしかない。
うつむき、なぜ、なぜ。と自分に問いかける。
昨日は何があったんだ…。
全然、思い出せない。
自分の手帳や、携帯を調べれば何かがわかるかもしれない。そう思いつき、辺りを見回すが、見える範囲には何も落ちていなかった。
なんで。どうして。どうしよう。
そればかりが、頭を駆け巡る。
だが、いくら考えても、答えにたどり着けるはずがなかった。
なんで。分からない。
どうして。分からない。
どうしよう。どうすればいい?
分からない分からない分からない!
俺はその場で、自分の未来を憂いて、ただ震えていることしかできなかった。