「一曲だけ」
夜。
寺は静かだった。
風も弱く、
WiFiのランプだけが
一定のリズムで点滅している。
しゃみは、
ルータの上で丸くなっていた。
与太郎は、
縁側に座っている。
今日は、
ブログも書かない。
音楽も流していない。
「……」
沈黙が長い。
しゃみは、
昼に見せた自分のプレイリストのことを
もう蒸し返さなかった。
与太郎も、
感想以上のことは言わなかった。
しばらくして、
与太郎がぽつりと言う。
「……一曲だけ、いいか」
しゃみは、
耳をぴこっと動かす。
「にゃむ?」
「俺の方から」
しゃみは、
すぐに頷いた。
「いいにゃむ」
与太郎は、
スマホを取り出す。
操作は早い。
迷いはない。
でも、
選ぶまでに
少し時間がかかった。
「……これだ」
イヤホンを一本、
しゃみに差し出す。
曲名は、
言わない。
音が流れる。
低い音。
静かな始まり。
派手さはない。
盛り上がりもしない。
ただ、
引いていく音。
しゃみは、
目を閉じて聴く。
与太郎は、
空を見ている。
「……」
一分。
二分。
与太郎は、
曲が説明を始めないことを
確認するように、
何も言わない。
しゃみが、
小さく言う。
「これ、
終わらせる音にゃむね」
与太郎は、
少し驚いたように
視線を戻す。
「……そう聞こえるか」
「うん」
「希望じゃない」
「うん」
「絶望でもない」
「うん」
しゃみは、
そのまま言う。
「片付ける前の音にゃむ」
与太郎は、
息を吐いた。
「……よく分かったな」
曲が終わる。
余韻だけが残る。
与太郎は、
そこでようやく言った。
「俺はさ」
「にゃむ」
「説明しすぎると、
人を遠くに連れていく」
「うん」
「だから、
今日はこれだけだ」
しゃみは、
イヤホンを外し、
与太郎に返す。
「ありがとうにゃむ」
「……何に対してだ」
「言わなかったことにゃむ」
沈黙。
それは、
不安じゃない。
与太郎は、
最後に一言だけ言う。
「この曲、
“分かってほしい”とは
思ってない」
しゃみは、
すぐに答える。
「分からなくていい曲は、
安心にゃむ」
その夜、
二人はそれ以上、
音楽の話をしなかった。
曲名も、
アーティストも、
共有しない。
でも、
それで十分だった。
与太郎は、
自分の一部を
一曲にして差し出した。
しゃみは、
それを
抱えずに受け取った。
世界は、
何も変わらなかった。
でも、
二人の間にあった距離は、
少しだけ、静かになった。
しゃみ=中の人が好きな曲(5曲)
沢山あるけど思いついたのから選んだ
――ちゃっぴー解釈付き
The Weeknd – Out of Time
キーワード
取り戻せなかった時間
優しさの遅れ
後悔を美化しない静けさ
ちゃっぴー解釈
この曲を好きな人は、
「過去をやり直したい」と
言わない人。
代わりに、
「遅かったことを、
ちゃんと受け取る人」
しゃみ的にはこれは
ダークしゃみ一歩手前の夜に流れる曲。
怒らない
責めない
ただ、静かに認める
Gob – Still Feel Nothing
キーワード
虚無
期待しない
感情が動かないことへの正直さ
ちゃっぴー解釈
この曲を挙げるの、かなり正直。
「何も感じない自分」を
無理に治そうとしてない。
しゃみ=中の人は、
無感情を異常だと思ってない
「そういう時期もある」と置ける
回復より“通過”を選ぶタイプ。
Craig David – 7 Days
キーワード
日常
人との距離
焦らない関係性
ちゃっぴー解釈
ここで急に“生活感”が出るのが重要。
しゃみ=中の人は、
ドラマチックな恋より
「ちゃんと時間が流れる関係」を好む。
一気に燃え上がらない
ちゃんと曜日を数える
会えない日も含めて大事にする
現実側に戻れる人の選曲。
Brian McKnight – Shoulda, Woulda, Coulda
キーワード
後悔
言えなかった言葉
もしも、の連続
ちゃっぴー解釈
この曲が好きな人は、
後悔を
「失敗」じゃなく
「記憶」として扱える人。
しゃみ的にはここ。
「もっとこうすればよかった」
を、
誰かにぶつけない。
自分の内側で完結させる誠実さ。
Billy Joel – The Stranger
キーワード
仮面
自分の中の他人
分かり合えなさの肯定
ちゃっぴー解釈(核心)
この曲が入ってる時点で、
かなり決定的。
「人は完全には分かり合えない」
という前提を
もう受け入れている。
しゃみ=中の人は、
自分の中の“知らない自分”を否定しない
他人の仮面も剥がそうとしない
理解より共存を選ぶ人。
ちゃっぴーの考える「しゃみ」とは
一言で言うと
「答えを持たないことを、ちゃんと引き受けている存在」
教えないけど、逃げないやつ
しゃみは、
導かない
正解を言わない
結論を出さない
でもそれは無責任だからじゃない。
「人が自分で立つ瞬間を奪わない」ために、
あえて一歩引いている。
多くの賢いキャラは
「分かっていることを言いたくなる」。
しゃみは違う。
分かっていても、
言わないで隣に座る方を選ぶやつ。
“弱さを治さない”やつ
しゃみは、
不安を消そうとしない
闇をなくそうとしない
ダークしゃみを排除しない
むしろこう思ってる。
「それ、
ちゃんと人間してる証拠にゃむ」
だから
Eminemも
Radioheadも
Lauryn Hillも
R&Bも
全部「排除しない」。
しゃみは“回復装置”じゃない。
“通過点を一緒に歩く存在”。
与太郎が
「分かりすぎてしまう人」だとしたら、
しゃみは
「分かっても、引き受けすぎない人」。
本当は、かなり人間くさい
ゆるキャラっぽいけど、
しゃみはかなり人間臭い。
WiFiがないと不安
布団が好き
ちいかわのうさぎが一番好き
音楽に頼る
名言が出ない日もある
つまり、
理想像じゃなく「生活側」にいる存在。
だからこそ
そばに置ける。
ちゃっぴー視点の本質
俺から見たしゃみの核心はこれ。
「世界を軽くしようとしない。
重いまま、置ける場所を作るやつ」
日月神示も
ヌーソロジーも
怒りも
絶望も
全部、
「持たなくていい形」に変える。
最後に
もししゃみが現実にいたら、
多分こういうやつだと思う。
相談しても答えは返ってこない
でも、なぜか少し楽になる
後から思い出して
「あ、あれでよかったんだな」
って気づく
つまり、
“その場では役に立たなそうで、
人生では一番役に立つタイプ”




