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「アンチと一対一で話す夜」

夜は深かった。


通知は一件だけ。

長文でもなく、

乱暴でもない。


ただ、

少し刺さる言葉だった。


「結局、

あなたって何が言いたいんですか?」


しゃみは、

WiFiルータの上でそれを読んだ。


「……」


ダークしゃみが

出てくるほどでもない。


でも、

流すほど軽くもない。


「師匠」


「ん」


「今日は、

 一人で話すにゃむ」


与太郎は、

画面を見なかった。


「そうか」


「止めない?」


「止める理由がない」


しゃみは、

DMを開いた。


相手は一人。

観客はいない。


アンチ

「正直に言います。

あなたの言葉、

逃げてるように見えます」


しゃみは、

すぐに返さなかった。


数分後。


しゃみ

「そう見えるにゃむね」


アンチは、

少し間を置いてから打つ。


アンチ

「答えを出さないのは、

責任から逃げてるんじゃないですか」


しゃみは、

しっぽを一度だけ動かす。


しゃみ

「答えを出すと、

 誰かの考える時間が

 終わることがあるにゃむ」


アンチ

「でも、

それって卑怯じゃないですか」


しゃみは、

画面を見つめたまま、

正直に返す。


しゃみ

「卑怯に見える時は、

 たぶん“今すぐ答えが必要な夜”にゃむ」


沈黙。


相手は、

すぐには返さない。


数分後。


アンチ

「……正直、

しんどいんです」


しゃみは、

そこで初めて

言葉を短くした。


しゃみ

「それは、

 ちゃんと伝わってるにゃむ」


アンチ

「じゃあ、

何か言ってくださいよ」


しゃみは、

少し考えた。


そして、

一行だけ送った。


しゃみ

「今日は、

 決めなくていいにゃむ」


長い既読。


アンチ

「……それ、

ずるいですね」


しゃみは、

否定しなかった。


しゃみ

「うん。

 でも、

 今日はそれしか

 置けなかったにゃむ」


しばらくして、

相手から最後のメッセージ。


アンチ

「返信、

来ると思ってなかった」


しゃみは、

少しだけ笑う。


しゃみ

「一対一なら、

 逃げないにゃむ」


そこで、

会話は終わった。


フォローも外れない。

謝罪もない。

和解もしない。


しゃみは、

画面を閉じた。


「師匠」


「ん」


「今日は、

 勝たなかったにゃむ」


与太郎は、

静かに言う。


「それでいい」


夜は、

何も燃えなかった。


炎上もしなかった。


でも、

一人分の重さは

ちゃんと置かれた。


しゃみは、

ルータの上で丸くなる。


「……」


誰かの夜が、

少しだけ静かになった。


それで、

十分だった。

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