表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/25

「しゃみが図書館に行く話」

しゃみは、用事がないのに図書館に行く。


読みたい本があるわけでもない。

調べたいことも、今日は特にない。


入口で、返却ポストの音だけがする。

誰かの一日が、そこで区切られた音。


しゃみは、棚の間をゆっくり歩く。

背表紙は、どれも「ちゃんとした言葉」ばかりで、

今の気分には少し重い。


哲学。

心理学。

自己啓発。


どれも違う。


児童書の棚に来て、しゃみは立ち止まる。

文字が大きくて、余白が多い。

説明しすぎない世界。


一冊、手に取る。

結局、最初のページだけ読んで、戻す。


席に座って、何も読まずに目を閉じる。

誰も話さない場所で、

誰も急かさない時間。


紙をめくる音。

椅子が軋む音。

遠くで咳払い。


しゃみは思う。


「ここ、言葉が休憩してる場所だ」


だから安心するんだ、と。


閉館のアナウンスが流れる。

しゃみは、何も借りていない。


出口で、受付の人が軽く会釈する。

何もしていないのに、

ちゃんと“居た”扱いをされる。


外に出ると、空が少し暗い。


しゃみは歩きながら、

今日、何も得ていないことに気づいて、

それがちょうどいいと思う。


「言葉を増やす日じゃなかった」


ただそれだけ。


しゃみは、静かに帰る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ