18/25
「しゃみ、魚を食べる」
しゃみは、魚を食べる前に少しだけ見る。
名前を思い出そうとするけど、
今日は別に知らなくていい。
箸を持つ手が、ちょっとだけ止まる。
焼き目。
皮の匂い。
白い身。
「これ、海だったんだよな」
しゃみは、そんな当たり前のことを考える。
一口。
骨をよける。
思ったより、静かな味。
誰も褒めないし、
誰も怒らない。
テレビはついているけど、
内容は入ってこない。
「魚って、主張しないな」
肉みたいに元気も出ないし、
甘いものみたいに気分も変わらない。
でも、ちゃんと腹に残る。
しゃみは、骨を皿の端に寄せる。
きれいに並べるでもなく、
雑に捨てるでもなく。
「この感じ、好きだ」
食べ終わっても、
何かが劇的に変わるわけじゃない。
ただ、
ちゃんと食べた、という事実だけが残る。
皿を下げながら、しゃみは思う。
「今日、魚でよかった」
それだけで、夜は進む。




