「369歳しゃみ、人生を振り返る」
369歳のしゃみは、
もう“人生”という言葉をあまり使わない。
長すぎて、
一つの線としては見えなくなったから。
高いところにもいないし、
悟った顔もしていない。
ただ、少し腰を下ろしている。
「だいたい、こんな感じだったな」
若い頃のしゃみは、
意味を探していた。
何をすれば正解か。
どう生きれば無駄じゃないか。
「あの頃は、
無駄じゃない人生を目指してた」
369歳のしゃみは笑う。
「今思うと、
無駄だった時間しか覚えてない」
名前を間違えられた日。
誰にも伝わらなかった言葉。
いい話をしようとして、やめた夜。
全部、残っている。
成功も失敗も、
同じ棚に並んで、
もう区別がつかない。
「長く生きるとね、
勝ち負けが溶ける」
誰かに評価された瞬間より、
誰にも見られていなかった時間の方が、
ずっと鮮明だ。
369歳のしゃみは、
人生の途中で何度も立ち止まった。
進まなかった時期。
戻った時期。
何も選ばなかった時期。
「あれ全部、
サボりじゃなかった」
「待ち時間だった」
何を待っていたのかは、
今でも分からない。
でも、
待っていなかったら会えなかった言葉が、
確かにあった。
最後に、
369歳のしゃみはこう言う。
「人生を振り返ると、
大きな意味は見えない」
「でも、
途中で置いてきたはずの自分が、
ちゃんと全部、
後ろを歩いてきてた」
しゃみは立ち上がる。
「まだ終わってないから、
まとめなくていい」
そう言って、
また静かに、続きを生きる。




