ボッチの魔王のクローズド・ガラケー
2019年12月。
横須賀ラボの空気は、冬の冷気と、あたしたちが放つ知性の熱で飽和していた。
提示された無機質なサンプルを、あたしはジト目でスキャンする。
既存のスマホという名のバグをデリートし、聖域を構築するための計画。
それは、世界から孤立し、愛する勇希たちとだけ繋がるための、略奪的な最適化だった。
「なにを今さら、ありふれたデバイスに甘んじる必要があるのよ」
あたしは扇子をパッと広げ、情報の境界線を鮮烈に定義した。
物理的な操作感。
限定された接続先。
そして、あたしのバイタルを加速させる、最高に攻撃的なピンクメタリックの色彩。
これは、単なる端末の開発記録ではない。
あたしの「開発権」を特定の個体にのみ限定し、ノイズを排斥する戦いの記録だ。
サブリナという名の魔法使い。
茅野という名のATM。
そして、あたしのすべてを「開発」する権利を持つ、勇希という名のヤンデレ王子。
あたしたちが、このクローズドな通信網で何を紡ぎ、何を隠蔽しようとしたのか。
その全盛期のプロセスを、今ここにデプロイするわッ!
2019年12月中旬。横須賀ラボ。
茅野が懇意にしている工場から届いた、無機質な商品サンプルがテーブルに提示される。
あたし、黒木舞桜は、その隣に置かれた自分のスマホをジト目で睨みつけた。
あたしはスマホが嫌いだ。
非論理的に高い通信費。
全盛期の集中力を削ぐように、すぐに切れるバッテリー。
そして、あたしたちの知性を嘲笑うかのように繰り返される機種変という名のシステムエラー。
「じゃあ、専用のサーバを立てて、通話特化型のシンクライアント端末を造ればよくない?」
あたしの口から漏れたのは、既存のインフラを根底からデリートする、略奪的な最適化のパッチだったわ。
サーバ上で動くウェブアプリの構築なんて、人工知能に論理的な指示を与えれば一瞬のこと。
なにより、ウチには魔法使いのような天才ハッカー、福元莉那ことサブリナがいるじゃない。
三十分で世界を書き換える「スマートデッサンシステム」を、ゼロからレンダリングして作り上げる女だ。
これくらい、サブリナにとっては造作もないデバッグ作業に過ぎないわねッ!
「なら、そのウェブアプリに直結する、専用シンクライアント端末を構築すればいい。当然の帰結よねッ!」
あたしは扇子をパチンと閉じ、情報の境界線を明確に定義した。
そもそも、あたしたちを世界という名のノイズに繋ぐ理由はなに?
不特定多数のバグが、あたしを巧妙に呼び出し、拘束し、あの白い部屋に連行して「開発」するのが目的じゃないの?
「そうはさせるもんですかッ! あたしは勇希と、ウチの人間……まあ茅野も入れてやるわよ。ATMと足としてね。そいつらとだけ繋がる、クローズドな聖域があればいいんですからッ!」
あたしはプラズマ級に加熱した顔面を振り乱し、独占欲という名の暗号化キーを叩きつけた。
「あたしを開発するのは、勇希だけでいい。他は一ピクセルだってノーサンキューなんだからッ!」
十二月の横須賀ラボ。
あたしの気高いプライドは、世界を遮断し、勇希の医学的な執着だけをフルビットで受け入れる、最も非論理的で濃密な「通話特化型シンクライアント」へと帰結しようとしていたのよッ!
「ぼ、坊っちゃん。開発ってシンクライアント端末の開発ですよね?」
工場長が、脂汗を浮かべた顔で恐る恐る確認する。
当然の帰結よねッ! あたし、黒木舞桜の知性が、この横須賀ラボで世界の通信プロトコルを塗り替えようとしているんだから。
他になにを開発するって言うのよ?
あたしの気高いプライドを物理的に拘束する、椅子状の拷問器具でも開発するつもり?
あたしの中を、医学的かつ工学的な好奇心でグチャグチャに書き換えて。
あたしのボクセルデータという名の「聖域」を、一ピクセル残さず蹂躙しようとしているんじゃないのッ!?
「しねえわッ! ああ、おまえ、あっち行ってろ女王さま……。工場長が怯えてるじゃねえかッ!?」
茅野のヤローが、不敵な笑みを引っ込めて、あたしを物理的に追い払おうと手を振ったわ。
おだまりなさいッ、この成金魔王!
あたしの演算回路が、あんたたちの不純な動機をミリ秒単位で予測しているんだから。
「いい、茅野! 工場長を怯えさせているのは、あたしの正論という名のパッチ当てじゃなくて、あんたが垂れ流している資本主義という名のノイズよッ!」
あたしは不機嫌さを極限までバーニングさせ、プラズマ級に加熱した顔面で言い返した。
十二月の横須賀ラボ。
あたしの「開発」という言葉に過剰反応した工場長のバイタルエラーは、あたしの過剰な自意識と、勇希の隠しきれない独占欲という名の、最も非論理的な地獄へと帰結しようとしていたわッ!
「おい白井ぃッ! テメ注意しろよぉ痴女ッ!」
茅野のヤロー如きが、あたしをこそあど言葉で省略するだなんて。
不機嫌さを極限までバーニングさせ、あたし、黒木舞桜は、プラズマ級に加熱した顔面を、さらに一気に沸騰させたわ。
「無理ッ! 手遅れッ!?」
勇希が諸手で顔を覆って、その場に蹲る。
手遅れってなに。
なんのことよ。
あたしの気高い演算回路は、勇希の医学的な絶望の意味を測りかねて、一時的なフリーズを起こしたわ。
あたしは、ジト目の視線で下僕の拓矢に通訳を求めた。
「ああ、舞桜。いろいろ声に出てたんだよ。ああ、舞桜を開発するってあたりから」
そう言って拓矢は、あたしから物理的に距離を置こうと、システムエラーから逃げるように後退する。
けれど、あたしのアンダーアイアンクローの方が速かった。
逃がすもんですかッ!
「……なに。今の、全部聞こえていたっていうの?」
あたしは、潤んだ瞳を激しく明滅させ、絶叫に近い困惑を漏らした。
あたしの「開発権」を勇希だけに限定するっていう、あの最も非論理的で略奪的な告白が、ラボ中に垂れ流されていたっていうの!?
当然の帰結よねッ!
あたしの羞恥心という名のバイタルデータが、一ビット残さず工場長や茅野の網膜に焼き付けられてしまったなんて、100万光年早いのよーッ!
あたしの「独占欲という名の公開処刑」は、勇希の「手遅れ」という名の診断結果によって、全盛期の恥辱へと帰結してしまったわッ!
★ ◆ ★ ◆ ★
「『さん』を付けろよフニャチンヤローッ!」
あたし、黒木舞桜は戦略的な逆ギレを採用して、絶叫をラボの空気に叩きつけたわ。
「あがあッ!?」
拓矢と言う尊い犠牲を生み出し、あたしの鉄爪が下僕の股間を物理的にデバッグする。
「これ、災害時にも有効よね!? 事前に登録しておけば、臨時の連絡手段になり得る! そうでしょ!?」
知能の奔流で、勢いで、この場を流すことに今決めた。
あたしの「開発」という名の不謹慎なパッチ当てを、人道的な「防災プロトコル」へと強引に書き換えてやるんだからッ!
文句、
「そうでしょ!?」
ある?
あたしはプラズマ級に加熱した顔面を振り乱し、潤んだ瞳を鋭い殺意で明滅させて、茅野たちを順番にスキャンした。
当然の帰結よねッ!
あたしの羞恥心がオーバーフローしたなら、周囲の論理回路を物理的な圧力でシャットダウンさせるのが、最も合理的な解決策なのよ。
「……あ、ああ。……そうだね、舞桜。……災害時に、君のその……情熱的な音声データが流れたら、被災者も一瞬で意識がシャキッとすると思うよ……」
勇希がようやく顔を上げ、医学的な諦念が混じった瞳で、あたしの暴走を全肯定という名のシステム保守で受け入れたわ。
十二月の横須賀ラボ。
あたしの「開発」という名の公開処刑は、強引な「災害対策」という名の書き換えパッチによって、無理やり正常終了へと帰結させられたのよッ!
「わかったわかった。女王さま……悪いな工場長、女王さまが選びたいのは、端末の色だけだからよ。もうちょっと辛抱してくれや……」
茅野の、まるで聞き分けのない子供をあやすようなパッチ当ての言葉が、最高に癪に障る。
なによ。あたしがメンドクセーって言いたいわけ?
あたしの気高い知性が、そんな低次元なラベルを貼られて処理されるなんて、非論理的にもほどがあるわッ!
思わず潤んだ瞳に涙が溜まりそうになるけれど、
「ああ、佐伯先輩? やっぱ藤枝が黒でしたか……」
下僕の拓矢はスマホを耳に当て、防大組の佐伯くんと会話という名の情報交換を始めている。
防大組の藤枝。あたしにとっては、夜の妄想を加速させるための、最も貴重なサブカル燃料をデプロイしてくれる供給源だ。
藤枝がもたらす禁断のレシピが、あたしの脳内の演算回路を、不純で情熱的なベクターデータで満たしてくれるんだからッ!
「……キレたぜ……」
あたしの彼氏である白井勇希が、その低く冷徹な声と共に、長髪を慣れた手つきでポニーテールにまとめ上げた。
さらに無機質なグラサンを顔面にデプロイすると、
「し、静かなる御曹司……」
医学的な冷静さと、隠しきれない暴力的な独占欲が融合した、最凶のモードに突入しちゃったじゃないのよぉ~!
藤枝ッ! 全盛期の速度で、今すぐその座標から退避なさいッ!
勇希の「静かなる怒り」という名の物理的制裁に捕まったら、あんたの全データが物理的に消去されちゃうわよーッ!
勇希のパパである泰造さんは、漁協の組合長にして市議会議員。
平たく言えば、港湾都市と利権を束ねる本物の極道だ。
そしてママである玲子さんは、その背後で静かに微笑む、最も冷徹な極妻。
世の中って、本当に非論理的なまでに難しいわよね……。
でも社会という名のシステムは、そういった清濁併せ呑む「負の遺産」すら、全盛期のパワーで回っているものなのよ。
「ゆ、勇希ッ! そ、その藤枝は、あたしの大切なサブカル供給源であって……」
あたし、黒木舞桜は、プラズマ級に加熱した顔面を震わせながら、最低限の擁護に回ったわ。
「舞桜ぉ~!?」
だが、返ってきたのは、ヤンデレ王子による「般若の笑み」という名の、物理的な処刑宣告だったわ。
ゆ、赦せ同志よ。
黒木舞桜……あたしの演算能力は、ここで限界です。
あたしは、自分の中に秘めていた禁断のレシピという名の「夜のサブカルデータ」を、脳内のゴミ箱へと光速でパッチ当てし、同志、藤枝に心の中で最敬礼を贈ったわ。
当然の帰結よねッ!
勇希という名の「静かなる御曹司」が起動した今、藤枝を救うための論理的なルートなんて、一ピクセルだって残っていないんだからッ!
十二月の横須賀ラボ。
あたしの気高いプライドは、恋人の「全盛期の独占欲」という名の暴力的なまでの熱量に、とろけるような恐怖と共に屈服させられてしまったわッ!
★ ◆ ★ ◆ ★
「茅野。おまえ御曹司だよな。限りなくクリーンに近い御曹司だよな?」
あたし、黒木舞桜は、ボコボコにされた藤枝の首根っこを鷲掴みにして戻ってきた、ローカル御曹司である勇希にジト目を貼り付けたまま、隣の成金魔王に尋ねる。
「不本意ながらな」
茅野は吐き捨てるように応えるが、あたしの演算回路はその程度の反抗心など、一瞬でデバッグ済みよ。
「おまえ。セイタンシステムズの代表な? CEOだ。いいじゃん。カッケーじゃんジョブズとおなじじゃーん」
あたしは囃し立てながら、メンドクセー実務という名の巨大なバグを、すべて茅野に丸投げした。
当然の帰結よねッ!
あたしという気高い知性は、より高次な「レシピ」の策定にリソースを全振りすべきなんだから。
「へっ、イイのかよ? おまえの居場所を奪うハイエナだぜ? 俺は……」
悪ぶる茅野の唇に、あたしの親愛じゃないキス――光速の裏拳が物理的に炸裂する。
「親愛じゃないキスだ。嬉しいか茅野?」
あたしはプラズマ級に加熱した顔面をあえて真顔で固定し、この略奪的な誘いを突きつけた。
「いいのかよ? そこのヤンデレ王子はご不満っぽいぜ?」
不敵に笑う茅野を無視して、あたしは吐息をひとつ。
続けて、あたしの親愛のキス――もう一発の光速の裏拳を、勇希の唇に正確にデプロイする。
「親愛のキスだ。嬉しいよな勇希!?」
あたしは飛び切りの笑顔でヤンデレ王子の独占欲を洞察し、逃げ場のない論理的な包囲網を完成させた。
「もう! 善きに計らえッ! バカ女王ッ!」
勇希は、あたしの決定という名の「全盛期のわがまま」を、涙目で全肯定したわッ!
十二月の横須賀ラボ。
あたしの気高いプライドは、二人の御曹司を実務と暴力という名の鎖で繋ぎ止め、最強の「通話特化型シンクライアント」という名の聖域を構築することに帰結したのよッ!
★ ◆ ★ ◆ ★
「サブリナぁ。善きに計らえ。このシステムをジジババとガキンチョたち用の最適解にデプロイなさい」
あたし、黒木舞桜は、論理の女王として、配下の魔王擬きたちにメンドクセー実務をすべて丸投げした。
「了解! 女王さまッ!」
サブリナは、あたしの高貴な命令を待っていたかのように、嬉々としてキーボードを叩き、システムの構造を組み上げ始める。
あたしの目の届く範囲で、つまらねえ現実や、非論理的なバグなんて起こさせない。
世界をあたしの「レシピ」通りに書き換え、すべてのノイズをデリートしていく。
当然の帰結よねッ!?
ジジババたちには、物理ボタンをカチカチ鳴らすだけで、遠く離れた孫という名のバイタルデータと直結する「魔法の杖」を。
ガキンチョたちには、スマホという名の無制限な悪意から切り離された、純粋な「声」だけの繋がりを。
あたしの気高いプライドが、このクローズドなシンクライアントという名の聖域を、全世代の最適解へとアップデートしてあげるわ。
「勇希。あんたもぼさっとしてないで、その医学的な洞察力をサブリナのアルゴリズムにパッチ当てしなさいッ!」
あたしは不機嫌さを心地よいバーニングへと昇華させ、プラズマ級に加熱した顔面で、愛すべき魔王たちによる「全盛期の世界改変」を見つめていた。
十二月の横須賀ラボ。
あたしの知性は、繋がるべき相手を限定することで、逆に世界を救うという最も高次な矛盾へと帰結したのよッ!
★ ◆ ★ ◆ ★
「あ、工場長、あたしピンクっぽいメタリックがいい」
あたし、黒木舞桜は、怯える工場長に対して、この世で最も理知的で、かつ不可避な「色」のレシピを提示したわ。
当然の帰結よねッ!
女子にとって、ピンクという色は単なる可視光の波長の一種ではない。
それは、あたしたちのバイタルを活性化させ、演算能力を極限までバーニングさせる「聖域」の色なんだからッ!
「ただのピンクじゃないわよ。桜の花びらがプラズマ級に発光したような、高貴で、けれど攻撃的なメタリック・ローズ……。あたしのこの加熱した顔面の色を、一分の狂いもなく物理的に再現しなさいなッ!」
あたしは不機嫌さを心地よい熱量へと変換し、潤んだ瞳で工場長をロックオンした。
ピンクという名の最適解を身に纏うことで、あたしの知性はさらに鋭利なベクターデータとなって、世界のノイズを切り裂いていくのよ。
甘いだけのパステルカラーなんて、あたしの気高いプライドが許すはずがない。
「勇希。……あんた、このピンクの筐体が、あたしの指先に馴染むその瞬間を、医学的な執着を持って網膜に焼き付けなさい。……あたしの『色』に、一生かけて見惚れていればいいのよーッ!」
十二月の横須賀ラボ。
あたしの気高いプライドは、通話特化型シンクライアントという名の「鉄の防壁」を、最も情熱的で、最も女子らしい「最強のピンク」でコーティングすることに帰結したわッ!
「桜の色か……万の桜になれってか……」
茅野のヤローが、あたしとアイツの名前を並べてセンチメンタリストモードを匂わせたから。
あたし、黒木舞桜の演算回路は、その不純な同期を音速でデバッグすることを決意したわッ!
「サブリナぁ、なんか言ったぁ!?」
あたしは不機嫌さを極限までバーニングさせ、スカートの裾を翻してローリングソバットを炸裂させた。
当然の帰結よねッ!
舞う桜と、万の桜。
あたしの名前が持つ「動的」な美しさと、茅野のヤローの名前が持つ「静的」な物量を勝手にリンクさせるなんて、100万光年早いのよーッ!
「ん~!? 小鳥の囀りじゃ~ん?」
サブリナはキーボードを叩く指を止めず、あたしの暴挙を最適化されたルーチンとして受け流す。
「あぁ~、そうだな黒木さん……」
茅野の知己である琴葉ちゃんは、あたしのプラズマ級の熱量に完全にドン引きして、システムフリーズを起こしているわね。
でも、これが全盛期のあたしたちの「日常」という名のメインループなんだから、慣れてもらうしかないわ。
「琴葉ちゃん、変な同情は無用よッ! この成金に一瞬でも隙を見せたら、あたしたちの聖域は一気に資本主義のバグで汚染されちゃうんだからッ!」
あたしは乱れた髪を乱暴にかき上げ、潤んだ瞳で勇希をスキャンした。
「勇希! あんたもジト目で見てないで、このピンクメタリックの筐体に、あたしのDNA配列を刻み込むくらいの熱量でサブリナをサポートしなさいッ!」
十二月の横須賀ラボ。
あたしの気高いプライドは、茅野の安っぽい感傷を物理的にデリートし、勇希たちを巻き込んで「万の桜」よりも鮮烈な、クローズド・ピンクの未来を強制的にデプロイしたのよッ!
★ ◆ ★ ◆ ★
「ねえ! 僕がセンチに浸ることは罪ですか!?」
涙目の茅野の、システムエラーのような懇願を、あたし、黒木舞桜は音速でデバッグしたわ。
「ウゼえ現実はギルティです!」
あたしの断罪という名のパッチ当てに、茅野の成金なプライドは一瞬でフォーマットされた。
当然の帰結よねッ!
あたしという舞う桜。茅野という万の桜。
そんな非論理的なシンクロを認めるくらいなら、あたしの演算回路を初期化したほうがマシよ。
あたしという知性を定義していいのは、世界で唯一、勇希という名のヤンデレ王子だけなんだからッ!
「サブリナぁ! そのピンクメタリックの筐体に、あたしの名前以外の『桜』の概念が入り込まないように、厳重なプロテクトをかけなさいッ!」
あたしは不機嫌さをプラズマ級の熱量へと変換し、潤んだ瞳で配下の魔王たちをスキャンした。
「あはは! 了解~! 茅野の感傷はゴミ箱へ、舞桜のピンクは聖域へ。全速力でビルドするよ~!」
サブリナの指先が、あたしの我儘を現実へと書き換えるために踊る。
十二月の横須賀ラボ。
あたしの気高いプライドは、茅野のセンチメンタリズムという名のノイズを物理的にシャットアウトし、勇希との「限定された繋がり」を最も鮮烈な色でレンダリングすることに帰結したのよッ!
「え、おまえ妹を除外? 桜が……」
空気を読めない下僕の拓矢が、あたし、黒木舞桜の論理回路が最も忌避する「家族という名のシステムエラー」を口にした。
あたしの気高いプライドは、そのノイズが鼓膜に届くより速く、右腕に略奪的なまでの殺意をパッチ当てしたわ。
拓矢の股間に、あたしのアンダーアイアンクローが今日一番に凶に炸裂する。
「ひぎっ……あ……あがぁッ!?」
物理的なデバッグを受けた拓矢が、音も無くその場に崩れ落ちる。
当然の帰結よねッ!
あたしという舞う桜。茅野という万の桜。
そこに妹という名の不純物を混入させて、あたしたちの聖域をファミリードラマという名の低俗なプログラムに書き換えようとするなんて。
そんなバグ、あたしの演算回路が一ピクセルだって許容するはずがないんだからッ!
「拓矢……あんたのその無駄に高い解像度の口を、今すぐ物理的にフォーマットしてあげましょうか?」
あたしは不機嫌さをプラズマ級に加熱させ、潤んだ瞳を冷徹な殺意で固定した。
十二月の横須賀ラボ。
あたしの気高いプライドは、妹という名の「桜の競合」を物理的な暴力でデリートし、勇希とのクローズドな世界を、誰にも侵されないピンクメタリックの防壁で囲い込むことに帰結したのよッ!
結局のところ、あたしたちが求めていたのは、世界を統べる万能のデバイスなんかじゃなかった。
あたしという舞う桜が、最も安全に、最も濃密に、勇希という名のヤンデレ王子と溶け合える「閉鎖された回路」だったのよ。
スマホという名の広大なノイズを遮断し、ピンクメタリックの筐体に閉じ込めたのは、あたしたちの独占欲という名の暗号だ。
茅野のセンチメンタリズムをデリートし、拓矢という名のシステムエラーを物理的にデバッグしてまで守り抜いた、この通信特化型シンクライアント。
「開発」という言葉の多義性に翻弄されながらも、あたしのバイタルはかつてないほどの熱量を記録したわ。
サブリナが組み上げたこの聖域の中で、あたしはこれからも、勇希にだけ自分のすべてを「開発」させてあげることに決めた。
他は、一ピクセルだってノーサンキューなんだからッ!
2019年12月の横須賀。
あたしの気高いプライドは、この小さな、けれど強固な「絆のプロトコル」の中に、永遠の最適解を見出したのよ。
当然の帰結よねッ!?




