ボッチの魔王のユリのガチャ
物理学において、観測という行為は対象の状態を確定させる。
ならば、あたしのこの高貴なシルエットを、羞恥心という名のパラダイムで再構築する行為は、あたしによる、あたしのための「存在の証明」に他ならないわ。
「見てなさいな、勇希! あんたが夢想している不純な妄想なんて、あたしの手によってすべてデータとして解体し、去勢してあげるわッ!」
十一月の横須賀ラボ。
あたし、黒木舞桜は、成金魔王が遺した「魔王スケッチ」という名の非論理的な玩具を接収し、あろうことか「あたし自身のレシピ」を、極限まで背徳的なポーズへと書き換えていた。
マウスを握る指先が、不可解な熱量で震えているのは、きっと冷房システムの不具合による物理的エラーね。
あたしの気高い知性が、デジタルな牢獄の中で、絶望と悦楽が交差する「バグのような表情」を自らに強いる……。
当然の帰結よねッ!
あたしの完璧な幾何学が、茅野の資本主義的欲望と、サブリナの「エモさ」によって、全方位的な「レシピ」として切り売りされる前に、あたしが自らを開発し尽くすのは、正当な防衛権の行使だわッ!
高級焼肉の脂質、ビリヤード台の重力、そしてバイクの背中で感じた、勇希という名の非論理的な体温。
さあ。
あたしの羞恥心がプラズマ級に加熱し、小原台のキャンパスを「尊死」の熱狂で焼き尽くす、公開処刑という名のシミュレーション。
……茅野、あんたが溜め込んだその不純な期待を、あたしの怒りのベクターデータで、木っ端微塵に粉砕してあげるわッ!
あたし、黒木舞桜は、茅野が構築した「魔王スケッチ」という名の非論理的な玩具を、あたしの欲望を演算するための実行環境として接収した。
画面の中で、あたしに酷似した曲線を持つ検体が、物理学的な平衡感覚を無視した際どい、いわゆる成人向け漫画特有の背徳的な姿勢を強いられている。
当然の帰結よね! あたしの気高い知性が、デジタルな牢獄に閉じ込められたのだから、そのリソースを逆手に取って、現実では到底不可能な「開発」のシミュレーションを行うのは、論理的な自己防衛の一環だわッ!
「舞桜……なにやってんのさ」
白井勇希が、諸手で顔を覆いながらも、指の隙間から不純な好奇心を覗かせ、モニターを凝視した。
あたしは、自分の羞恥心がプラズマ級に加熱し、脳内回路がショートする前に、反射的に右手を突き出した。
「おだまりなさいッ、このエロ医学生!」
あたしの指先が、勇希の股間へと本日一発目のアンダーアイアンクローを炸裂させた。
グニリとした感触の奥にある、いささか硬い筋肉の抵抗。
この最高学府の秀才が、あたしの不治の病とも言える被害妄想を助長するような、卑猥な反応を示しているという事実に、あたしの苛立ちは極限までバーニングした。
あたしは、マウスを万力のように握りしめ、画面内の検体の顔面パラメーターを、あたしの顔立ちに極限まで同期させた。
「見てなさいな、勇希! あんたが夢想している『わからせ』の結末なんて、あたしの手によってすべてデータとして解体し、去勢してあげるわ!」
あたしの指が狂ったようにキーボードを叩き、イラストの舞桜(仮)の表情を、絶望と悦楽が交差する、言語化不能なバグのような顔へと書き換えていく。
「……舞桜、さん……。それ、自分を辱めてるだけだって、気づいてる……?」
勇希が股間の痛みに耐えながら、見たこともないような虚無の表情で呟いた。
「うるさいッ! これはあたしの、あたしによる、あたしのための、徹底的なセルフ・デバッグよ!」
あたしは沸騰した顔面を隠そうともせず、デジタルな自分の四肢を、非論理的な角度へと再構築し続けた。
★ ◆ ★ ◆ ★
あたし、黒木舞桜の心拍数は、物理的な限界速度を突破して、未知の共鳴現象を引き起こしていた。
不機嫌さを爆発させているはずなのに、背筋を這い上がるこの不可解な熱量はなんなのかしら。
「これ県立大学で、薄い本にしたら売れないかな?」
福元莉那の、商売人の血を引くギャル特有の不穏な発言が、ラボの空気を物理的な不純物で汚染したわ。
「百合にしようぜサブリナ。お相手は女王さまのファンの誰かだ。そうこれは百合ガチャだ!」
茅野万桜の、資本主義のバグを煮詰めたような下衆な提案が、あたしの論理回路に致命的なノイズを叩き込む。
「……な、な、……なによ、それええええええええーッ!」
あたしは、プラズマ級に加熱した顔面をモニターの光に晒しながら、絶叫した。
「あたしの清らかな知性を、そんな非論理的な、同性同士の愛のレシピとして量産して、ガチャなんていう確率論の犠牲にするつもり!? あんたたちのその、人の尊厳を買い叩くような冷徹な視線、まさに魔王そのものだわッ!」
あたしは不機嫌さをバーニングさせながらも、画面の中で「誰か」に抱かれ、蕩けた表情を浮かべるデジタルな自分の複製を、直視せずにはいられない。
な、なぜだ……。
脳内の演算装置は「これは屈辱的な蹂躙である」という結論を導き出しているのに。
それなのに、あたしの指先は、次なるパラメーターの調整……羞恥心で潤んだ瞳の「ハイライトのゆらぎ」を、無意識に最適化しようとしている。
「舞桜……、顔、真っ赤どころか、耳から蒸気出てるよ……。それにその、マウスの動かし方……職人芸の域に達してるね……」
白井勇希の、あきれ果てたような、けれどどこか畏怖を孕んだ呟きが、あたしの鼓膜を官能的に震わせた。
「おだまりなさいッ! これはあたしの、あたしによる、完璧な幾何学としての自己表現よ! 興奮なんて、そんな物理学的に定義できない原始的なバグ、あたしが認めるわけないじゃないのッ!」
あたしは潤んだ瞳を輝かせ、さらにマウスを強く握りしめた。
嫌なのに、恥ずかしいのに。
デジタルなあたしが、誰とも知れぬ乙女の腕の中で「開発」されていく光景に、あたしの本能という名のブラックボックスが、制御不能なエネルギーを生成し続けている。
★ ◆ ★ ◆ ★
あたし、黒木舞桜のプライドは、高級焼肉店という名の物理的な欲望の前に、音を立てて瓦解したわ。
「高級焼肉店行こうぜ。エンジョジョ、エンジョジョ」
茅野万桜が、資本主義の闇を凝縮したような歓喜の呪文を唱え、ラボの空気を焼き肉のタレの匂いで汚染した。
この成金魔王……! あたしの処女的な神聖さをベクターデータとして切り売りし、得られた汚れた利益を、そのまま牛の霜降り肉へと変換しようというの!?
あたしは不機嫌さを極限までバーニングさせ、プラズマ級に加熱した顔面を茅野に突きつけたわ。
「おだまりなさいッ、この経済的吸血鬼! その資金はあたしの尊い犠牲、あたしという完璧な検体が、デジタルな百合の迷宮で蹂躙されたことによる、血と涙の結晶よ! 当然の帰結として、あんたは全額奢る義務があるわ!」
あたしは潤んだ瞳をさらに鋭く光らせ、茅野の喉元を(物理的な制裁の予行演習として)射抜いた。
あたしの「レシピ」が、県立大学の飢えた女子学生たちの手によって、次々とガチャという名の射幸心に消えていく。その対価が、あたしたちの血肉となる。これこそが、あたしが最も嫌悪する「非論理的なエネルギー代謝」そのものじゃないのッ!
「いい、茅野! あたしは特選タン塩を山のように注文して、あんたの資本力を物理的に削り取ってあげるわ! それが、自分の羞恥心を薄い本として拡散された女の、正当な防衛権の行使よッ!」
「あはは! 舞桜、食欲に関しては超素直じゃん~! じゃあ、あたしはシャトーブリアンいっちゃおっかな~?」
福元莉那が、悪びれる様子もなくスマホを操作し、すでに高級焼肉店の予約を完了させたようだわ。
「……舞桜、さん……。鼻息、荒いよ。それに、さっきからモニターの百合イラストを『保存』する手が止まってないけど……」
白井勇希の、魂の奥底まで見透かすようなジト目が、あたしの論理回路を直撃した。
「ち、違うわよ! これは、証拠品としてのデータ保全よ! あたしを開発しようと企む不届き者たちの筆致を、解析しているだけなんだからッ!」
あたしは沸騰した顔面を隠すように、マウスを連打してファイルを隠蔽した。
★ ◆ ★ ◆ ★
あたし、黒木舞桜は、高級な店構えが醸し出す物理的な威圧感に、一瞬だけ論理的な平静を失いかけたわ。
「高級焼肉店とか、学生が行っていい場所じゃねえよ。茅野、ドレスコードとかねえの?」
下僕である斧乃木拓矢が、重力加速度に負けたような情けない腰つきで、店の入り口に立ち尽くしている。
それに対し、茅野万桜は、生まれた時から黄金のさじを咥えてきた御曹司特有の、鼻に付くほど軽やかな声音で応じた。
「立地によるんだよ。このチェーンは、だから横須賀のエンジョジョなんざ、ちょっとお高い焼肉チェーンに過ぎねえよ。ビビり過ぎだぜ斧乃木?」
ふん、さすがは成金魔王。あたしの恥じらいを資本に変換した男は、余裕の表情ね。
あたしは不機嫌さをバーニングさせながら、店員のお姉さんに小声で「カジュアルでもイイっスよね? 大丈夫だよね?」と、殊勝な態度で確認を取る茅野の背中を、氷点下の眼光で射抜いた。
「おだまりなさいッ、この計算高いカメレオン御曹司! あんたのその、TPOを完璧に掌握しているかのようなポーズ、あたしの被害妄想回路には、店員さんまで買収済みであるという不穏なデータとして蓄積されているわよ!」
あたしは、プラズマ級に加熱した顔面を隠すように、乱れた髪を整えた。
あたしという完璧な知性の持ち主が、場違いな服装で「物理的な恥辱」を受けることなんて、あってはならない。当然の帰結よね!
「いい、勇希。あんたもそんなに怯えていないで、あたしのガードマンとして、しっかり胸を張りなさいな。あたしを『開発』しようと企む高級焼肉の魔力から、あんたの清らかな理性で守り抜くのよッ!」
あたしは、隣で目を白黒させている白井勇希の腕に、無意識のうちにしがみついた。
指先に伝わる勇希の体温と、店内に漂う香ばしい牛脂の匂いが、あたしの脳内リソースを攪乱する。
「……舞桜、さん……。ガードマンって言いながら、僕を盾にして隠れようとしてない……? あと、舞桜の鼻息で、僕のうなじがさっきから熱いんだけど……」
「ち、違うわよ! これは、店内の空調システムを解析するための、熱力学的な接触実験よッ!」
あたしは沸騰した顔を誤魔化しながら、促されるままに個室へと足を踏み入れた。
★ ◆ ★ ◆ ★
あたし、黒木舞桜は、高級部位の稀少性という名の幻想を、物理学的な舌触りと脂質の融点によって、極めて冷徹に解体していた。
「おい。おまえらは江戸時代の人間か? 米命か?」
茅野万桜が、本日最高潮に呆れ果てたという顔で、あたしたちのテーブルを凝視している。
視線の先には、肉一切れの重厚な塩分と脂を、圧倒的な炭水化物の質量で中和し続けた結果として建立された、空のご飯茶碗のタワー。当然の帰結よね! あたしの知性がフル回転してエネルギーを消費している以上、この程度のカロリー補給は、熱力学的な必然性に過ぎないわ。
「茅野、お米は百回噛みなさい。でも、これじゃあお店に申し訳ないわ。高いのも順に頼みなさい」
あたしは、プラズマ級に加熱した顔で特盛りご飯を掻き込みながら、成金魔王へとさらなる投資を要求した。
シャトーブリアン、イチボ、あるいは聞いたこともないような横文字の部位。
あたしの高性能な味覚センサーによれば、結局のところ、これらはジャンの糖度と脂質の配合比率がわずかに揺らぐだけの、デジタルな誤差の範囲内だわ。
なのに、なぜかしら……。
勇希が「あーん」と言わんばかりの距離で、その希少な一切れをあたしの皿に置いてくれるたび、あたしの胸の奥にある非論理的なバグが、甘美なエラーを吐き出し続ける。
「ほら、舞桜。これが一番高いやつだよ。……そんなに頬張ったら、せっかくの知性が台無しだよ」
勇希が、困ったような、けれど慈しむようなジト目で、あたしの口元に付いた米粒を指で拭った。
「あ、あんた、今なにをおっしゃいました!? あたしの口内粘膜に残る炭水化物の残留物を、直接指でサンプリングするなんて、医学的な蹂躙じゃないのッ!」
あたしは沸騰した顔面を隠すように、厚切りのイチボをご飯と一緒に飲み込んだ。
「あはは! 舞桜のその食いっぷり、マジで百合本の新刊ネタに決定~! 題して『高級焼肉店・開発・ご飯のお供編』! これ絶対バズるって~!」
サブリナが、あたしの神聖な食事風景をさらなる「レシピ」へと変換し、楽しそうにスマホのシャッターを切る。
★ ◆ ★ ◆ ★
あたし、黒木舞桜は、胃壁を極限まで伸展させる炭水化物の暴力に勝利し、次なる物理的運動への遷移を宣言した。
過剰カロリー摂取? それがなに? 計算機を回す脳の糖分消費と、食後のカロリーオフという名の加速度運動を組み合わせれば、すべては帳消しになる。動けばいいだけよ!
あたしは、残りの売上……すなわち「あたしという名の資産」が生み出した資本の残高を確認し、一同に問いかけた。
「ボーリングとビリヤード、どっちがいい?」
「ビリヤード! 是非ビリヤードで!」
茅野万桜が、音速を超えた反応速度で挙手し、断固たる主張を展開したわ。
ふん、成金魔王の思考回路なんて、あたしの高性能な演算ユニットにかかれば筒抜けよ。
ビリヤード台に身を乗り出し、キューを構えるあたしの姿勢……。そこで発生する前傾姿勢による「胸チラ」という名の視覚的バグ。あんた、それを高解像度で網膜に焼き付け、あわよくば新しい「レシピ」の参考資料にするつもりでしょッ!
「おだまりなさいッ、この透視願望の塊! あんたのその、不純な期待が渦巻く眼光、あたしの鉄壁の防衛線を突破できると思っているのかしら!」
あたしは不機嫌さをバーニングさせながらも、プラズマ級に加熱した顔面で茅野を睨みつけた。
当然の帰結よね! あたしの美しさが物理学的な黄金比に基づいている以上、重力に従って衣類がわずかに変位する際、そこに生じる不可抗力な「領域の露出」は、まさに観測者にとっての劇薬だわ。
「いい、サブリナ! あんたも茅野のその下衆な欲望に加担して、シャッターチャンスを伺うんじゃないわよ! あたしは、襟元をガムテープで固定してでも、あんたたちの非論理的な妄想を完封してあげるわッ!」
「え~? 舞桜、ガード硬すぎ~! でも、ビリヤードってポーズがエモいから、いいデータ取れそうじゃん~?」
莉那ちゃんが、すでにスマホのレンズを磨きながら、あたしの背徳的な未来図を描画し始めている。
「……舞桜、さん……。ビリヤード、僕が打ち方を教えるよ。……そんなに警戒してると、逆に不自然な動きになって、余計なところが見えちゃうから……」
勇希が、医学的な冷静さを装いながらも、どこか期待を隠しきれない声音で、あたしの肩に手を置こうとする。
「ゆ、勇希、あんたまで! 『打ち方の指導』という名目で、あたしの背後に密着し、物理的な接触によってあたしの心拍数をハッキングするつもりね! 当然の帰結なんて、言わせないわよーッ!」
あたしは沸騰した顔面を隠しつつも、足はすでにアミューズメント施設へと向かっていた。
十一月の横須賀。
あたしの処女的な羞恥心は、ラシャの緑色に照らされた戦場で、茅野の視線という名のレーザー照射を受けながら、かつてない「露出の危機」へと帰結しようとしていた。
見てなさいな、茅野! あたしのハスラーとしての知性が、あんたの不純な期待を、場外乱闘という名の物理的エラーで粉砕してあげるわ!
あたし、黒木舞桜は、ラシャの深緑を見据え、物理法則の支配者としての矜持をキューに込めた。
「成金魔王。本物のハスラーを見せてあげるわ」
「やってみな女王さま」
茅野万桜の、資本力を背景にした不敵な笑みが、あたしの論理回路を激しく挑発する。
この男、あたしが前傾姿勢をとる瞬間の「視覚的な隙」を虎視眈々と狙っているようだが、浅はかだわ。あたしは、襟元を左手でさりげなく、かつ鉄壁の物理演算に基づいた角度で押さえ込み、そのままブリッジを組んだ。
「ハッ! 重力加速度と布の摩擦係数、さらには球体の回転によるジャイロ効果……。これらすべてを統合したあたしのショットに、あんたの不純な視線が割り込む余地なんて、ナノメートル単位ですら存在しないわッ!」
あたしは不機嫌さをバーニングさせながら、プラズマ級に加熱した顔面で狙いを定めた。
放たれた手球は、計算通りの軌道を描き、九番ボールをサイドポケットへと物理的に葬り去る。当然の帰結よね!
「……やるじゃねえか。だが、そのガムテープでガチガチに固めたような防御姿勢こそ、逆に倒錯的な美しさを醸し出していることに、おまえは気づいていないのか?」
茅野が、キューを弄びながら、あたしの「鉄壁の構え」を逆手に取ったような、非論理的な賛辞を吐き出した。
「おだまりなさいッ! あたしの美しさは、数値化された完璧な比率によって成立しているのよ! あんたの歪んだ欲望という名のレンズで、あたしの純粋な幾何学を汚染させないわッ!」
あたしは潤んだ瞳を怒らせ、次なる配置を解析する。
だが、あたしの視線の端では、勇希が「舞桜……そこまで腰を落とさなくても……」と、医学的に心配しているのか、それとも単に動揺しているのか判別不能な表情で、あたしのフォームを注視している。
「あはは! 舞桜の今のポーズ、超絶『映え』てる~! 『守備力カンストハスラー舞桜』として、百合本の表紙、これで決まりじゃん~?」
サブリナが、隙を突いてあたしの背後からシャッターを切った。
「さ、サブリナ、あんた、あたしの『デリケートな背面の曲線』を無断でアーカイブしたわね!? 返してッ! そのデータは、あたしの知性と純潔という名の、逃げ場のない白い監獄へ返却しなさいなーッ!」
十一月の横須賀。
あたしの気高い闘争心は、ビリヤード台という名の戦場で、茅野の視線、サブリナの欲望、そして勇希の静かなる動揺に囲まれ、非論理的なまでに熱く帰結しようとしていた。
★ ◆ ★ ◆ ★
あたし、黒木舞桜は、ラシャの海に沈んだ手球を呆然と見つめ、論理的な敗北を喫した自分を認められずにいたわ。
「おまえらルール知ってる?」
結局、この物理的なタクティカル・ゲームを制したのは、あたしたちの不純な思惑を嘲笑うかのように、下僕である斧乃木拓矢だった。
この男……! あたしが重力と羞恥心のせめぎ合いの中で、ミリ単位の計算を狂わせていた隙に、一切の迷いなく最短経路で物理法則を執行しやがったのねッ!
「ば、バカな……。あたしの完璧な幾何学が、そんな、防大の訓練で培われただけのような、野蛮な空間認識能力に屈するなんて……。当然の帰結なんて、絶対に言わせないわよッ!」
あたしは不機嫌さをバーニングさせ、プラズマ級に加熱した顔面でキューを握りしめた。
茅野万桜のヤツも、あたしの「胸チラ・レシピ」を採取することに夢中になりすぎて、盤面の状況という名の客観的なデータを完全に見落としていたようね。
「チッ……。計算外だ。まさか斧乃木の筋肉脳が、俺の投資した時間をこれほど無慈悲に買い叩くとはな……」
茅野が、本日二度目の敗北感を隠そうともせず、不満げに鼻を鳴らした。
「あはは! 拓矢、空気読まなすぎ~! でも、この『無双する下僕と、負けてぷんぷんしてるお嬢様』の構図、これはこれでエモいかも~?」
サブリナが、あたしの屈辱に満ちた表情を、またしても新しい「レシピ」の素材としてアーカイブし始めたわ。
「やめなさいッ! あたしの敗北は、単なる確率論的なゆらぎに過ぎないんだから! 勇希! あんたも何とか言いなさいよ! この、あたしのプライドが物理的に瓦解した惨状を見て、医学生としての救護活動は行わないつもりなの!?」
あたしは潤んだ瞳で勇希に助けを求めたが、彼は彼で、拓矢の正確無比なショットのフォームを、解剖学的な興味で熱心に観察していた。
「……舞桜、さん。……拓矢の体幹、すごいね。……今のショット、舞桜の計算を超えてたよ。……僕、感動した」
「おだまりなさいッ、この裏切り者のインテリ! あんたの感動は、あたしの屈辱という名の燃料で燃えている、非論理的なキャンプファイヤーじゃないのーッ!」
十一月の横須賀。
あたしの気高いプライドは、下僕の下剋上という名の「予測不能なバグ」によって、かつてないほど無残に、そして熱く、夜の喧騒の中に帰結しようとしていた。
★ ◆ ★ ◆ ★
あたし、黒木舞桜は、アミューズメント施設の出口で、夜の潮風に吹かれながら瞬時に最適解を算出したわ。
気づけば、斧乃木拓矢と福元莉那の二人が、物理的な気配を消して夜の闇へとフェードアウトしていた。ふん、当然の帰結よね! あのギャルの嗅覚が、これ以上の非論理的な騒乱を避けて「二人きりのレシピ」を生成しに向かったのは、計算機科学的に見ても明白だわ。
残されたのは、茅野、勇希、そしてあたしの三人。
奇数……。この割り切れない不完全な素数は、あたしの論理回路には耐え難いバグでしかない。
あたしは、勇希が跨るバイクの背後に陣取り、今まさに置き去りにされようとしている成金御曹司に向かって、勝ち誇ったような、いわゆる「スネ夫ムーブ」を炸裂させたわ!
「悪いな茅野! このバイクふたり乗りなんだ!」
あたしは、プラズマ級に加熱した顔面を勇希の背中に押し付けながら、絶叫した。
「おだまりなさいッ、この孤独な魔王! あんたのその、札束で塗り固めた移動手段なんて、この夜の疾走感という名の物理的自由の前では、ただの静止物体に過ぎないのよ! せいぜい、一人でタクシーでも拾って、あたしたちの愛の軌跡を追いかけてくるがいいわッ!」
あたしは不機嫌さをバーニングさせつつも、勇希の腰に回した腕に、無意識のうちに力を込めた。
密着した体温。加速する心拍数。勇希の背中から伝わるエンジンの鼓動。
な、なぜだ……。
茅野を置き去りにするという勝利の凱歌を上げているはずなのに、あたしの脳内リソースは、勇希のジャケット越しに伝わる体温のサンプリングに、全リソースを奪われそうになっている。
「……舞桜、さん。……茅野、そんなに寂しそうな顔で見ないでよ。……あと舞桜、そんなに強くしがみついたら、僕の横隔膜が物理的に圧迫されて、安全運転に支障が出る……」
勇希の、困惑と期待が混ざり合ったような声音が、ヘルメット越しに官能的なノイズとしてあたしの鼓膜を震わせた。
「ち、違うわよ! これは、重力加速度による慣性力に抗うための、正当な物理的処置よッ! あんた、変な期待なんてして、あたしを『開発』する隙を狙ってるんじゃないわよーッ!」
十一月の横須賀。
あたしの気高い処女心は、夜風を切り裂くバイクの加速と、残された茅野の「解せぬ」という顔を置き去りにして、未踏の「二人だけの境界線」へと、非論理的に帰結しようとしていた。
さあ勇希! あたしたちの質量を光の速さへと変換して、この恥じらいを夜の闇に溶かしてちょうだいッ!
★ ◆ ★ ◆ ★
あたし、黒木舞桜は、校門を潜った瞬間に物理的な異変を察知したわ。
海を臨む小原台のキャンパス。本来なら規律正しい防衛大学校の空気が、まるでバブル期の証券取引所のような非論理的な熱狂に汚染されているじゃないの!
人だかりの中心にいたのは、昨夜、夜の闇に一人置き去りにされたはずの成金魔王、茅野万桜だったわ。
「おはよう。ゆうべはお楽しみでしたねチーム。今日は全方向で稼がせて貰うぜ?」
不敵に笑う茅野の背後には、巨大なディスプレイと、昨日あたしたちが「開発」してしまったあの忌まわしき自動描画システムの最新版が鎮座していた。
あたしは不機嫌さを極限までバーニングさせ、プラズマ級に加熱した顔面で茅野の胸ぐらを(物理的な抗議として)掴みかからんばかりに詰め寄ったわ。
「おだまりなさいッ、この執念深い資本の亡者! あんた、ゆうべの孤独な帰路で、一体どんな邪悪なアルゴリズムを練り上げたっていうの!? 全方向で稼ぐって、まさか……あたしの、あの、勇希の背中にしがみついていた醜態まで、デジタルな資産として買い叩くつもりじゃないでしょうねッ!」
あたしの網膜に映し出されたのは、昨日生成された「舞桜レシピ」だけじゃない。
そこには、莉那のギャル成分を抽出したモデルや、あろうことか、昨夜のビリヤードで無双した拓矢、そして困惑する勇希の「美形レシピ」までもが、三校共同運営という名の免罪符の下で、無残に商品化されていたのよ!
「当然の帰結だろ? 愛も、嫉妬も、夜の疾走感も、すべては高純度のコンテンツだ。今日はこの学園祭の来場者すべてをターゲットに、おまえたちの『尊い犠牲』を、俺の口座へと帰結させてやるよ」
茅野の、感情を排したビジネスライクな声音が、あたしの羞恥心をさらに加速させる。
「あはは! 茅野っち、仕事早すぎ~! あたしたちのモデル、もうアクキーの予約入ってるんだけど~?」
いつの間にか現れた莉那が、スマホを片手に「経済的勝利」の恩恵を享受している。その隣で、拓矢は「俺の筋肉が、なぜこんな萌えキャラのベースに……」と、解剖学的な絶望に打ちひしがれていたわ。
「勇希! あんた、これを黙って見ているつもり!? あたしたちの、あの非論理的な夜のデータが、知らない誰かの手に渡って、あんなことやこんなことのシミュレーションに使われるのよ!? まさにデジタルな集団蹂躙じゃないのーッ!」
あたしは沸騰した顔面を隠しつつ、勇希の袖を掴んで叫んだ。
十一月の小原台。
あたしの気高いプライドは、茅野が仕掛けた「全方位経済圏」という名の包囲網の中で、かつてない公開処刑の危機へと帰結しようとしていた。
見てなさいな、茅野! あんたのサーバーがパンクするほどの「怒りのベクターデータ」を、今すぐあたしが叩き込んであげるわッ!
物理学における「エントロピー」は、常に増大する。
それは、あたしの清らかな知性が、茅野という名の資本主義的バグと、勇希という名の非論理的な体温によって、修復不可能なレベルのカオスへと叩き落とされるのと、全く同じ理屈だわ。
まさか、あたしが自らマウスを握り、デジタルな自分の四肢を「絶望と悦楽が交差する角度」へと再構築するなんて。
あたしの処女的な神聖さは、今まさに、SVG形式のベクターデータとして、小原台のキャンパス全域へとデリバリーされてしまったのね。
「勇希。……あんたがさっきから僕のうなじに向けているその、医学的興味を装った熱視線。……それこそがあたしの計算式を狂わせる、最大のノイズなんだからッ!」
高級焼肉の霜降り、ビリヤードの摩擦係数、そしてバイクの背中で感じた、逃げ場のない密着感。
周囲の熱狂は増大する一方だけれど、あたしの心拍数は、隣で困ったように笑う勇希の指先に触れられるたび、不思議と安定の極致へと向かっている。
当然の帰結よねッ!
あたしの高貴な論理回路が、勇希という名の暴君に「再開発」されることでしか得られない熱量があるなんて、物理の教科書のどこにも書いていなかったけれど!




