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十六

 マクドに体半分残した儘、佑香は白い世界で都子の胸を借りて、好いだけ泣いた。龍とのことは特に抵抗をした訳ではなく、流されたとは()え合意の下の行為なので、誰を責めることも出来ない。然し気持ちは合意とは懸け離れたものだった。その時はそれで好いと思った。でもずっと後悔がついて回る。何より都子に対して申し訳ない。友への裏切りでしかない。その罪悪感が非道かった。自分が蹂躙されたことより、自分が犯した罪の重さに耐え兼ねていた。

 「都子、みやこぉ……ごめんね、都子ぉ」

 云いたいことを凡て云い切った後は、ずっとその繰り返しである。都子は好い加減飽きているのだが、流石にこの状態の佑香を突き放す訳にもいかず、唯優しく背中を撫でている。佑香が泣き出してから、そろそろ三十分が経とうとしていた。(しゃく)り上げだけに変わって来た頃合いを見計らって、都子は佑香の体を起こして、

 「うちは何も傷付いとらんし、怒ってもおらんよ。怒るとしたら龍に対してだけや。佑香は大事な友やん。その友に何してくれとんって話やん」

 「都子……」

 「ほんでな、今時間止めとってんやんか。三十分ばかり止めとぉから、うちら三十分ばかり余計に齢取っとるからな」

 「えっ! あかん!」

 都子は笑った。

 「ほんで? (せん)迄龍がおったって? ここに?」

 「うん。塾帰りで一人で居ったら、行き成り現れてん。ほんでなんか、うだうだ云うとった。愚痴なんか口説いとんか、よぉ判らんかったわ。無視しとったら消えよったけど」

 「そか。纏わり付くようなら云いや。蹴散らしてくれよう」

 「都子、男前やなぁ」

 「知らんかったんか」

 「知っとったわ!」

 そこで漸く、佑香は笑った。

 「都子、ありがとうな」

 都子は照れ隠しに鼻を擦った。佑香が涙を拭いて、鼻をかんで、多少見られる姿に戻るのを待ってから、都子達はマクドに帰って来た。

 「トイレ行ってくるわ」

 佑香は仕上げをしに、俯き勝ちでトイレへ向かった。

 戻って来た時には、確り顔を上げて歩いていた。都子はほっと息を吐いて、微笑み掛けた。


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