ゆめみがち【WEB】
ゆめみがち
ぼくと彼女の出逢いは、とある大型量販店のゆめみがちコーナーだった。
友人たちの勧めもあり訪れたのでした。
荒々しく書かれた、いい夢見ろよ! の、張り紙の横項垂れる彼女がいた。
壱目惚れだった。
彼女はいつもうつむき加減で、優しい眼差しと笑顔を浮かべていた。
そして夢の様な同棲生活がスタートした。
146cmの僕と180cmの彼女の最初のデートは、レトロな雰囲気のあるダッコちゃんカフェで、友人たちのグループへの紹介も兼ねてだった。
ダッコちゃんカフェに併設された、会員制ダッコちゃんシネマのカップルシートで優しく微笑む彼女が僕をじっと見詰めている。
彼女を腕枕しながら天井に映し出される映像を見上げ、ドキドキがとまらなかった。
もう僕は彼女に夢中だった。
「ゆめ……結婚しよう」
無口な彼女はぺこりと頷いた。
「有り難うゆめ」
むぎゅっとゆめを抱きしめ、柔らかな彼女に癒され夢の世界へランデブーするのに0.1ミリ秒とかからなかった……。
わたし何してんかな? 破格のギャラの仕事とはいえ……ドレスアップして抱き枕抱えてさ。
壱番でかいホールでやること?
新郎って長男とか言ってたな、親族多いな。
親族の人たちって、どんな気持ちのモチベで来てんだろ?
友人の席、あれってガン見しちゃうけど、見ちゃ駄目な奴だよね。
早く終わってよ、この悪夢からあ。
新婦側って抱き枕メーカーの人たちと、でっかいうまい棒みたいな抱き枕、椅子に立て掛けられてるし。
中々シュールな光景なんですけど。
数会わせ何だろうけど、新婦の友人多過ぎでしょ。
でも、キャラが被ってないのは流石だわ。
メーカーの意地なのかな。
カメラ親父たちがパシャパシャしてるとこ見ると、新作だったりするのかな?
はあ……よくわかんない趣向の世界だわ。
「それではみなさま、新婦さまがお色直しの為、御退場なせれます。暖かい拍手をお願い致します」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ……。
わたしまでお色直しする必要あんのかな?
はあ……何回お色直しあんだよ! 8回目だよまったくさ。
「ゆめちゃん! 綺麗だよ」
「ゆめちゃん! おめでとう」
きもいオッサンたち、みんな抱き枕持参だし。
何なの? わけわかんないし。
抱き枕の分のお料理いるのかな?
取り敢えず笑顔振り撒いとこっと。
でも、この抱き枕新郎が毎晩抱いて寝てる奴だよね……クリーニングしてあるけど……きも。